肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

1. 肥満と糖尿病・耐糖能異常

肥満により耐糖能異常が起こるメカニズム

 膵臓から出る体内ホルモンの一つで、血糖値を下げる働きをするインスリンは細胞の表面にあるレセプターと結合してはじめてその機能を発揮しますが、肥満になるとインスリンが働くために必要なレセプターの数が減少します。すると膵臓のインスリン分泌細胞がインスリンの働きを高めようと分泌を増加させます。

 また肥満によって肥大した脂肪細胞から、血中に分泌される遊離脂肪酸やTNF-αなどのアディポサイトカインが、インスリンの働きを弱めるような作用に関係をしています。

 こうしてインスリン分泌が増加し、量は充分あるにもかかわらず、インスリンの働きが悪くなった状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリン抵抗性に陥ると、血糖を下げる力がさらに落ちて糖尿病の発病へと向かっていきます。

診断基準

  • 空腹時血糖値≧ 126mg/dL
  • 75g経口糖負荷試験において2時間値 ≧ 200mg/dL
  • 随時血糖値≧ 200mg/dL

 上記のいずれかに当てはまるか、HbA1c≧ 6.5%の場合に「糖尿病型」と判定されます。(HbA1cとは赤血球のヘモグロビンと血糖が結合したもので、高血糖状態が持続することで形成されやすくなります)

  • 空腹時血糖値≦110mg/dL
  • 75g経口糖負荷試験において2 時間値≦140mg/dL

 上記の2つの条件を満たす場合は「正常型」と判定されます。

 糖尿病型と正常型のいずれにも属さない場合は「境界型」と判定されます。

 血糖値とHbA1cがともに糖尿病型であれば、糖尿病と診断します。

 血糖値のみが糖尿病型の場合、口渇、多飲、多尿、体重減少などの典型的な糖尿病の症状、確実な糖尿病網膜症のいずれかが認められる場合は糖尿病と診断します。認められない場合、もしくはHbA1cのみが糖尿病型であれば、再度検査を行い、血糖値が糖尿病型であれば、糖尿病と診断します。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 境界型は糖尿病に準ずる状態です。肥満の改善(減量前体重の約5%前後の減量を目安)、食事量の制限、脂肪や単純糖質の摂取の制限、食物繊維摂取の促進、運動の奨励、飲酒習慣の是正、禁煙などを図り、生活習慣の改善に努める必要があります。

治療と改善

 発病初期の肥満が原因による糖尿病ならば、肥満の改善(減量前体重の約5%前後の減量を目安)のみで糖尿病状態を改善することができます。

 まずは食事療法と運動療法を行い、2~3ヶ月経っても目標の血糖コントロールを達成できない場合は、薬物療法を開始します。病状に合わせて経口血糖降下薬、インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬のいずれかを選択し治療を行っていきます。