10. 肥満と整形外科的疾患
肥満により整形外科的疾患が起こるメカニズム
肥満による整形外科的疾患として、過重な多重を長期間に渡り、支えることで腰椎が変形したり圧迫骨折を起こしたりする「変形性腰椎症」、膝関節の軟骨がすり減る「変形性膝関節症」があります。
膝の軟骨がすり減ると膝関節が動かしにくくなるほか、骨同士が直接ぶつかり、小さな骨折や骨が硬くなるなどの骨の異常を引き起こします。その結果、骨の異常を修復しようとする働きが過剰に起こり、「骨棘(こつきょく)」といわれるトゲができることもあります。
診断基準
まず関節の状態を確認するためには、問診や触診、X線検査が行われます。X線検査では軟骨の状態を詳細に見ることはできませんが、骨と骨のすき間が狭くなっているか、変形しているか、骨棘ができているかなどを見ることで、変形性腰椎症、変形性膝関節症の診断を行います。他の病気と区別する、より詳しく状態を知るためにMRI検査やCT検査が行われることもあります。
そのほか、関節リウマチや化膿性関節炎(細菌などによる関節炎)などの他の病気がないかを確認するための血液検査や、関節液がたまって腫れや痛みが出ているような場合には、関節液を抜いて検査を行うこともあります。
どうやって発見するのか(予備群への対処)
初期のうちはあまり症状を感じないこともありますが、進行するにつれ、様々な症状が起こるようになります。
- 痛み
- 軟骨がすり減ったり、骨が変形したりすると関節の周りの筋肉や腱などに炎症が起こって痛みを感じます。痛みが起こりやすいのは、関節に負荷がかかった時や、関節を動かした時です。変形性脊椎症では、骨の変形が進むと背骨の中を通っている神経が圧迫され、おしりから足にかけて痛みやしびれが出ることがあります。
- 腫れ・水分滞留
- 膝関節に炎症が起こると、関節液が異常に多く溜まり腫れが起こります。
- 関節の変形
- 軟骨がすり減り、骨への衝撃が大きくなると、骨の変形が進み、目に見えてわかるようになります。例えば変形性膝関節症では膝関節が変形し、O脚になったりします。
また関節の可動域が狭まるのも主な症状のひとつです。
治療と改善
すり減った軟骨や変形してしまった関節を、治療によって完全に元通りにすることはできませんが、痛みや腫れといった症状を軽くし、進行を抑える事も可能です。
治療の基本は、肥満が原因の場合はまず減量、そして薬物療法と運動療法です。薬物療法で症状を軽減させつつ、運動療法によって関節の周りの筋肉を鍛え、関節にかかる負担を軽くする、関節の可動域を広げるなど、関節の機能を保っていきます。
炎症による痛みや腫れを治療するためには、主に非ステロイド系抗炎症薬が使われます。またヒアルロン酸などの薬を関節内に注射することで、関節の機能を改善したり、炎症や痛みをやわらげたりすることも可能です。
薬物療法と運動療法で症状が良くならない場合、すでに関節の変形がひどく、日常生活に支障がある場合には、手術を行うこともあります。関節に内視鏡を入れて軟骨のかけらを取りだしたり、骨棘を切ったりする関節鏡視下手術、骨を切ってつなぎ直し、骨の変形を矯正する手術、人工関節に置き換える手術が代表的です。