肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

3. 肥満と高血圧

肥満により高血圧が起こるメカニズム

 肥満者は正常体重者と比べ、約2~3倍多く高血圧症にかかります。

 肥満の人は過食のために、塩分も摂りすぎることから、体内にナトリウムが過剰になっていると考えられます。また肥満になると過剰に分泌されたインスリンの働きによって、腎尿細管でのナトリウムの再吸収が亢進するため、さらに血液中のナトリウムが増加します。すると、それを薄めようと血管内に水分が流動し、全体の血液量が増えることで血圧が上昇します。

 また肥満者は、過食や過剰に分泌されたインスリンのために交感神経系が刺激され、血中にカテコールアミンが放出されます。カテコールアミンは末梢血管を収縮させる働きがあるため、血圧が上昇します。

 加えて、肥大した脂肪細胞から分泌されるアンギオテンシノーゲンという生理活性物質が血管を収縮する働きがあるため、血圧上昇へとつながります。

診断基準

 収縮期血圧が140mmHg以上および拡張期血圧が90mmHg以上であれば、高血圧症と診断します。

 ただし、糖尿病もしくは蛋白尿がある慢性腎疾患(CKD)を合併する高血圧の場合は、収縮期血圧130mmHg以上および拡張期血圧80mmHg以上を臨床的に高血圧と判断します。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 肥満が原因の、収縮期血圧160mmHg程度の軽い高血圧症であれば、4~5kgの体重の減少で正常化します。高血圧の予防と改善のためには、減量が欠かせません。

 また一般的には運動習慣の無い人の方が、運動習慣のある人に比べて血圧が高めです。継続的な有酸素運動は血圧を下げる作用があります、高血圧の原因となるストレスを解消することにもつながりますので、ウォーキングや水泳など適度な運動を続けて行うことが有効です。

治療と改善

 高血圧と診断されると、すでに心臓病や腎臓病、糖尿病などの病気があるかなど高血圧以外の危険因子も考慮に入れ、リスクの度合いに応じて治療計画を立てます。

 軽症・中症の場合は、まず降圧剤を使わず、食事療法や運動療法を行いながら経過を見ます。具体的には減塩(1日6g未満)、魚油などオメガ3脂肪酸の積極摂取、心血管病の無い高血圧患者ならば中等度の強度の有酸素運動を中心に定期的に行う、節酒、禁煙などです。こうした生活習慣の修正を続けても血圧が下がらないときは、降圧剤による血圧のコントロールを加えます。