9. 肥満と睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
肥満により睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群が起こるメカニズム
肥満低換気症候群とは、肥満(BMI30以上)と慢性の高二酸化炭素血症を伴う病的状態を言い、そのほとんどが、睡眠中に何らかの原因で呼吸が停止する睡眠時無呼吸症候群を伴います。
肥満低換気症候群は、喉の辺りの空気の通り道が閉塞することによって起こります。肥満があると、舌を含めて上気道の軟部組織も増えるため、軌道が狭くなることに加え、腹部肥満などによる呼気予備量、機能的残気量の低下に代表される肺機能の低下がなどあるからです。また脂肪細胞から分泌されるレプチンには呼吸刺激作用がありますが、肥満の場合にはレプチン抵抗性の状態になるため、高二酸化炭素血症を招きやすいという報告もあります。
診断基準
問診で睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、簡易睡眠検査、ポリソムノグラフィーという入院して行われる精密検査に進みます。ポリソムノグラフィーから得られた無呼吸低呼吸指数が1時間当たり5回以上ある場合には睡眠時無呼吸症候群と診断されます。無呼吸低呼吸が5~15回は軽症、15~30回は中等症、30回以上は重症とされます。
肥満低換気症候群の診断には以下の4点を全て満たすことが必要となります。
- 高度の肥満(BMI30以上)
- 日中の高度の傾眠
- 慢性の高二酸化炭素血症すなわち、高炭酸ガス血症(PaCO2:45mmHg以上)が検査で確認されていること
- 睡眠呼吸障害が重症以上(無呼吸低呼吸指数が30回以上であるなど)
どうやって発見するのか(予備群への対処)
肥満に加えて、日中の傾眠傾向、起床時の頭痛、チアノーゼなどが認められることがあるほか、右心不全のある場合には頚動脈怒張、下肢の浮腫が見られます。
夜間睡眠中には大きないびきが急に静かになり、その後突然大きないびきが始まるような状態がみられることがありますが、いびきが静かになった時が無呼吸発作と考えられます。本人は眠っているのでほとんど気付くことはありませんが、家族や同室者に睡眠中の呼吸異常を指摘されるのがほとんどです。
また、睡眠中の頻回なる覚醒、頻尿などが見られます。精神的な症状としては記憶力の低下、性格の変化、疲れやすい、うつ傾向などの症状がみられることもあります。
治療と改善
根本的な治療法は減量です。体重減少によって、呼吸困難を解消し、血圧の低下、眠りの質の向上を図ります。主として食事療法と薬物療法を行うことになりますが、外科的な減量手術も検討する場合があります。
呼吸補助療法としては、睡眠時無呼吸合併例に対する持続陽圧療法(CPAP)があります。鼻または顔マスクを介して上気道内腔の圧を持続的に陽圧にして気道虚脱を防ぐもので、中等、重症の睡眠時無呼吸例には保険適用で使用できます。呼吸不全を伴う重症例にはマスク人工呼吸(在宅人工呼吸)のほか、外科的療法として緊急時には気管挿管、人工呼吸を行うこともあります。
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