肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

4. 肥満と心筋梗塞、狭心症(冠動脈疾患)

肥満により冠動脈疾患が起こるメカニズム

 冠動脈疾患とは、心筋へ血液供給を行う冠動脈が動脈硬化により、部分的にまたは完全に遮断されることでなる疾患で、心筋梗塞、狭心症を引き起こします。

 内臓脂肪型肥満が動脈硬化を発症させる理由は実に多様ですが、そのひとつとして脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインがあります。内臓脂肪が蓄積すると脂肪細胞から血栓を起こすPAI-1という物質を多く分泌され、心筋梗塞などの要因になることがわかっています。加えて脂肪細胞からは、アディポネクチンという糖尿病や動脈硬化を防ぐアディポサイトカインが分泌されていていますが、内臓脂肪が蓄積するとその分泌が低下して、動脈硬化の原因となります。

 また、肥満によっても引き起こされる耐糖能異常、脂質異常症、高血圧症はそれぞれが動脈硬化の主たる危険因子です。

耐糖能異常
特に食後高血糖の状態は、白血球などの血管内壁への付着物を増加させ、動脈硬化を発症させる原因となります。
脂質異常症
コレステロールの中でも、小型LDLコレステロールは血管内壁に入って酸化され、動脈硬化の大きな要因となります。また中性脂肪の増加は、小型LDLコレステロールを増やす原因ともなります。
高血圧症
血圧が高い状態が続くと、血管内壁を傷つき、コレステロールが血管内に入りやすい環境になるほか、血管に負担をかけ続けるため、動脈硬化を促進します。また、心筋梗塞や脳卒中を起こす引き金ともなります。

診断基準

 心筋梗塞は胸痛発作の既往、安静時の心電図、運動負荷による心筋シンチグラフィー、冠動脈の血管造影などの異常所見で、狭心症は胸痛発作、安静時の心電図変化、運動負荷心電図の異常所見で診断します。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 動脈硬化には、自覚症状がほとんどありませんが、心臓へ影響が出てくると階段を上ると息がきれる、胸のあたりに軽い痛みが出るといった症状が出てきます。

 そして動脈硬化そのものには、数値で示されるような基準はないため、病院では、動脈硬化の程度を知る手がかりとして、血圧、コレステロール値、中性脂肪値、脈波、血糖値、尿酸値などをチェックし、肥満度や喫煙歴など危険因子を加味し、医師が動脈硬化の可能性について判断します。

 冠動脈疾患は危険因子を避け、食事、運動などに気をつければ、予防できますし、進行を食い止めることも可能です。危険因子の中には相互に関連するものがあり、1つを改善すると関連のある別の危険因子も改善できる場合があります。

 喫煙は最大の危険因子で、冠動脈疾患と心臓発作のリスクを2倍以上に増やします。また受動喫煙もリスクを上昇させます。

 他には肥満、耐糖能異常、脂質異常症、高血圧症が主な危険因子です。これらを改善するには、食事の動物性脂肪を減らし、有酸素運動を継続的に行うなどして減量をする必要があります。

治療と改善

 冠動脈疾患に対しては、以下の3点を目指し治療を行います。

  • アテローム動脈硬化の進行を遅らせる、または回復させる
  • 心臓の仕事量を減らす
  • 冠動脈の血流を改善する

 アテローム動脈硬化は食事療法と運動療法、薬物療法により回復の可能性があります。

 心臓の仕事量を減らすには、患者の血圧のコントロールを行い、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬など心臓を激しく拍動させない薬を使用します。

 冠動脈の血流は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)で改善することができます。