肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

6. 肥満と痛風・高尿酸血症

肥満により高尿酸血症・痛風が起こるメカニズム

 尿酸はプリン代謝の最終産物で、毎日一定量の尿酸が体内で作られ、そして一定量の尿酸が腎臓から尿として排出されることで、体内の尿酸の量は正常に保たれています。ところが尿酸の産生過剰や腎臓からの排泄低下、あるいは両方が混合した場合、高尿酸血症となります。

 尿酸は水に非常に溶けにくいため、高尿酸血症が持続した結果、足の第一関節やその他の関節、腎臓などに結晶を形成して、沈着します。これにより引き起こされる急性関節炎が痛風です。

 国内外の多くの疫学研究において、肥満と血清尿酸値には強い関連性があることがわかっています。肥満者が高尿酸血症になる要因として、まず挙げられるのは過食。尿酸の前駆体であるプリン体は、ほとんどすべての食品中に含まれるため、過食は尿酸の体内への過剰な流入につながります。とりわけ肥満者は動物の肉や内臓、魚の白子などプリン体を多く含む食品を好んで摂ることもあり、高尿酸血症をきたしやすくなります。

 また内臓脂肪蓄積の蓄積が尿酸産生を亢進するという報告や、インスリン抵抗性により尿酸の再吸収が促進され、尿酸排泄が低下するという説もあります。

診断基準

 血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合に高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は、尿酸値が高いために身体に影響を及ぼすリスクがある状態です。

 血清尿酸値の測定は主に「ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法」が用いられます。また採血時期は空腹時である必要はありませんが、常に高尿酸血症状態が持続するかどうかは、複数回測定した結果で判断することが推奨されています。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 肥満による高尿酸血症を予防するには、以下の5つのポイントを心がけましょう。

1.まずは減量

 太り気味で尿酸値が高い人が減量すると、血中尿酸が正常化することが多いので、まずは減量をすることが高尿酸血症の予防となります。

2. 水分を多く摂り、尿をしっかり出す

 水分を多く摂ることで尿の量が増え、尿酸が排泄されやすくなります。目安としては1日2リットル以上です。

3.アルコールを飲み過ぎない

 特にビールはプリン体を多く含みますが、酒の種類を問わず、大量の飲酒は尿酸値を上げることがわかっています。肝臓でアルコールが解毒される際には尿酸の代謝が活発になることに加え、大量に飲酒した場合は尿酸の排泄を抑制する乳酸が作られることから、血清尿酸値は上昇。またアルコールには利尿作用があるために体内の水分量が減り、相対的に血中の尿酸濃度は上昇します。

4.適度な有酸素運動

 ウォーキングなどの適度な有酸素運動は肥満の解消やストレス発散にも役立ちます。ただし、酸素の供給が不足するような筋力トレーニングを行うと逆に尿酸値に悪影響を与えるので控えましょう。

5.ストレスと上手に付き合う

 過度のストレスは血清尿酸値を上げてしまうため、良いリラックス法を見つけて、心身の緊張をやわらげることが大切です。

治療と改善

 尿酸値が7.0mg/dLを超えたら、食事や運動など生活習慣の見直しから始めます。

1. 食事療法

 プリン体の1日の摂取量は400mg未満という基準がありますが、現在はプリン体の制限よりも総エネルギーの制限へと移行をしています。インスリン抵抗性を高めるような糖質の摂取にも注意が必要です。

2.飲酒制限

 血清尿酸値への影響を最低限に保つ目安は1日、日本酒1合、ビール500mL、またはウィスキー60mL程度です。

 しかし、すでに痛風発作や合併症がある場合や、尿酸値が9.0mg/dL以上の場合には薬物による治療が必要になる場合があります。