肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

7. 肥満と脂質異常症

肥満により脂質異常症が起こるメカニズム

 脂質異常症には「高LDLコレステロール血症」、「低HDLコレステロール血症」、「高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)」の3種類がありますが、肥満よる脂質異常症に多いのは、善玉コレステロールとして動脈硬化を防ぐ働きを持つHDLコレステロールが低下する「低HDLコレステロール血症」と「高トリグリセライド血症」です。

 肥満者が中性脂肪やコレステロールを多く含む食品を摂りすぎることに加え、肥満によりインスリン抵抗性に陥ると、肝臓が中性脂肪の合成を促進することが原因です。肝臓から中性脂肪を多く含むVLDL(超低比重リポ蛋白)が血中に過剰に放出されることで高中性脂肪血症となるだけではなく、インスリン抵抗性によりLPL(リポ蛋白リパーゼ)が充分に活性化されないため、VLDLがHDLへと代謝されにくくなり、血中のHDLコレステロールが低下します。

診断基準

 脂質異常症の診断は、空腹時の血液検査によって行われ、基準は以下の通りです。

  1. 高LDLコレステロール血症(140mg/dL以上)
  2. 低HDLコレステロール血症(40mg/dL未満)
  3. 高トリグリセライド血症(中性脂肪値150mg/dL以上)

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 脂質異常症には、自覚症状はほとんど無いために、気づくのが遅れ、突然心筋梗塞などの発作におそわれる人が少なくありません。健康診断などで「脂質異常症の疑いがある」といわれたときは、放置せずに早めに受診して医師の指導を受けることが大切です。

 脂質異常症の8割以上は生活習慣に関連した原因によるもので、中でも食事に関わる要因が一番多いことから、予防には食生活を適正に保つことが重要となります。普段から動物性脂肪を控えたバランスのいい食事を心がけることが大切です。

 また喫煙はHDLコレステロールを減らすだけではなく、LDLコレステロールの酸化も促進します。

治療と改善

 脂質異常症は治療しないでおくと、脳動脈、冠状動脈、下肢動脈などの動脈硬化性へと進展します。また血中の中性脂肪が非常に高くなると、稀に膵炎を起こすこともあります。

 まずは食事療法と運動療法からはじめます。 カロリー制限は必須で、理想体重×25kcalを目安とし、LDLコレステロールが高い場合はコレステロールを多く含む食物のとり過ぎに注意をし、中性脂肪値が高い場合は、アルコール、甘いものや高脂肪の食品を控えることが必要です。また食物繊維には、コレステロールや中性脂肪が腸内で吸収されるのをさまたげるほか、HDLコレステロールを増やす働きがあることから、食物繊維の摂取も促します。

 また適度の運動は肥満の改善に役立つだけではなく、HDLコレステロールを増やすことがわかっています。目安としては1日30分程度のウォーキングを週3~5回。元の体重の5%減を目標に減量を行います。

 食事療法と運動療法を行っても効果がない場合は薬物療法を開始。病状に合わせて、使用する薬剤を選択します。なお薬物療法を行う場合も生活習慣の指導は継続して行う必要があります。