肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

8. 肥満と脂肪肝

肥満により脂肪肝が起こるメカニズム

 肝臓では脂肪酸から中性脂肪をつくり、肝細胞の中に貯め、エネルギーとして必要な分を放出します。しかし使うエネルギーよりも生成される中性脂肪が多い場合、余剰分が肝細胞に蓄積されます。こうして全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を「脂肪肝」といいます。

 1960年以前は脂肪肝といえば過度飲酒に伴うアルコール性肝障害が中心でしたが、近年では肥満が原因の非アルコール性脂肪肝(NASH)が急速に増加しています。肥満によりインスリン抵抗性の状態になり、肝臓に脂肪が蓄積されやすくなるのが理由です。

診断基準

 脂肪肝の診断では、腹部超音波検査や腹部CTなどの画像検査と、血液検査をあわせて行います。

 腹部超音波検査では肝腎コントラストや肝臓における深部エコーの減弱、肝血管の不明瞭化などを指標とします。腹部CT検査では脂肪の沈着において肝臓のCT値が低下するので、肝臓のCT値を秘蔵のCT値で除した値が0.9以下であれば、脂肪肝として診断します。

 血液検査では細胞内で作られる酵素であるALT(GPT)とAST(GOT)の値が50~100前後に上昇する場合が多く、γ-GTPやコリンエステラーゼなども高くなります。ただし血液検査で異常がみられなくても、画像検査によって脂肪肝が認められる場合もあります。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 肝臓は沈黙の臓器と称されるように、脂肪肝の場合もほとんど自覚症状が出ません。非アルコール性脂肪肝は進行して脂肪肝炎の状態になると、人によってはだるさを訴えることもありますが、風邪などの症状と区別がつきにくく、見過ごされがちです。そしてその後は肝臓の末期的状態といえる肝硬変や肝がんへと進行していきます。肝硬変になると皮膚や白目に黄疸がみられたり、胸や肩などにクモの巣状に血管が浮き出たり、血小板が減少して出血しやすくなったりと様々な症状が現れますが、この段階から肝臓を元の健康な状態に戻すのは困難です。そのため、できるだけ初期の段階で改善や予防に努めることが大切となります。

治療と改善

 肥満が原因である場合は、まず減量をします。軽度であればカロリー制限や有酸素運動などの適度な運動によって、比較的簡単に軽快します。症状が無いからといって放置することなく、食事など生活習慣の改善に努めましょう。