肥満症予防コラム「肥満と11の関連疾患」

2. 肥満と肥満関連腎臓病

肥満により肥満関連腎臓病が起こるメカニズム

 肥満による腎障害は、肥満に合併する耐糖能異常や高血圧による腎臓病と、肥満そのものが原因となる肥満関連腎臓病に大別されます。

 肥満に伴うエネルギー過剰と代謝亢進状態、また内臓脂肪の増加により脂肪細胞からの産生・分泌されるアンジオテンシノーゲンが亢進し、レニン・アンジオテンシン系の活性化から糸球体過剰濾過と糸球体高血圧を引き起こし、肥満関連腎臓病へとつながります。

診断基準

 肥満関連腎臓病の臨床的特徴は蛋白尿で、血尿の頻度は稀です。そして組織学的に糸球体肥大、もしくは糸球体肥大と巣状分節性糸球体硬化症が認められる場合に肥満関連腎臓病と診断します。

 糸球体は、新生児で65~70μm。その後成長につれ徐々に大きくなり、成人では130~170μmといわれています。糸球体肥大の定義は定まってはいませんが、小児で200~230μm以上を肥大と判定する例が報告されています。

 球体の状態を最も正確に知る方法は、腎臓の組織を針で採取し、糸球体を顕微鏡で確認する腎生検です。

どうやって発見するのか(予備群への対処)

 肥満関連腎臓病の初期には、ほとんど自覚症状がありません。貧血、疲労感、むくみなどの症状が現れたときには、病気がかなり進行している可能性もあります。末期腎不全に至る例も多く、著しくQOLを損なうことにもなるので、早期発見のためにも定期的に尿検査や血液検査を受けましょう。

治療と改善

 治療の基本は肥満を改善することです。食事療法及び運動療法による減量は肥満による糸球体過剰濾過を是正し、尿蛋白量を減少させるという報告があります。また腎臓でのレニン・アンジオテンシン系が亢進していますので、これを抑制するために一般的にはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されますが、抵抗性を示す場合にはアルドステロン拮抗薬やレニン阻害薬の併用も考慮します。