わずか「1分間の運動」でも健康効果が 忙しい人も仕事や家事の合間に簡単な運動を
2023年01月26日

「毎日忙しくて余裕がない」「運動はもともと苦手」などの理由で、運動が続かないという人は多い。そうした人にとって朗報となる研究が発表された。
わずか1分間の、少し息が上がるくらいの活発な運動や身体活動を、毎日3~4回行うことだけでも、⼼筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクが大幅に減少し、寿命を延ばせる可能性があるという。
これなら仕事を中断してとる休憩時間や、昼食後の空いた時間、自宅でくつろいでいる時間などでも、手軽・簡単に取り組める。
「短い時間の運動であっても、体を動かす頻度を増やすことで、1日でかなりの運動量を期待できます。もっとも危険なのは、座ったまま過ごす時間が長く、何もしないでいることです」と、研究者は述べている。
仕事や家事の合間に行うちょっとした運動でも効果がある
わずか1分間程度の、少し息が上がるくらいの活発な運動や身体活動を、毎日3~4回行うことだけでも、⼼筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクが大幅に減少し、寿命を延ばせる可能性があるという研究が発表された。 研究者はそうした運動スタイルを、「日常生活の空いている時間に行える活発な運動・身体活動」(VILPA)と呼んでいる。 ▼歩くときは速度を少し上げてみる、▼時間に余裕があるときはひとつ余計に離れたバス停まで歩く、▼帰宅時にひとつ手前の駅で降りて歩く、▼エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、▼手近にあるペットボトルをダンベル代わりにして使い軽い筋トレをしてみる、▼休日は子供たちと活発に体を動かすゲームをするなど、日常生活で探すと、ちょっとした運動をする機会は多く転がっている。 研究は、オーストラリアのシドニー大学チャールズ パーキンス研究センターなどによるもの。研究成果は、「Nature Medicine」に発表された。最大1~2分のごく短い時間の運動に効き目が
「VILPAは、最大1~2分程度のごく短い時間の運動であっても、それを毎日積み重ねることで、考えているよりも大きな健康効果を得られることを示すものです」と、研究センター生活スタイル・ポピュレーションヘルス部のエマニュエル スタマタキス教授は言う。 そうした1分間以上の運動や身体活動を、毎日3~4回行うだけでも、全死因およびがん関連の死亡リスクを最大で40%減少でき、心血管疾患に関連する死亡は最大49%減少できることが明らかになった。 「1日に合計3~4分の非常に短い運動を数回行うだけでも、大きな効果が得られる可能性があります。どんな人でも、生活でちょっと工夫するだけで、1分間の心拍数を上げられる身体活動を行うチャンスはたくさんみつけられるはずです」としている。 運動をする習慣が、健康に好ましい影響をもたらし、死亡リスクの低下や、糖尿病・肥満・心血管疾患・がんなどのリスクの低下につながることはよく知られている。 運動を行うことで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進される。運動を続けていれば、血糖値を下げるインスリンの働きも改善できる。さらには、減量効果があり、高血圧・脂質異常・肥満も予防・改善できる。加齢にともない筋肉や骨が低下するのを防ぐことにもつながる。日常的な身体活動のペースを上げるとエネルギー消費量を増やせる

アクティブトラッカーを7日間装着してもらい調査
「英国バイオバンク」は、疾患の発症や進展に、遺伝的要因と環境的要因がどのように影響しているかを調査している英国の大規模研究。 研究グループは今回、英国バイオバンクに参加した、運動やスポーツを行う習慣をもっていない約2万5,000人の男女を対象に、手首にアクティブトラッカーを7日間装着してもらい、さらに約7年間の健康データを追跡して調査した。 その結果、「日常生活で空いている時間に行える活発な運動・身体活動」(VILPA)について、次のことが明らかになった――。- 全参加者の89%は何らかのVILPAを行っている。うち93%は、最大1分間のVILPAを行っている。
- VILPAを行っている人は平均して、1日に最大1分間のVILPAを計8回・6分間行っている。
- 1日に高い頻度でVILPAを行っている人では、行っていない人に比べ、健康改善の大きな効果がみられた。VILPAを行う回数・量が多くなるほど、健康改善の効果は大きくなった。
- 1~2分のVILPAを1日に3回行っている人では、行っていない人に比べ、全原因およびがんによる死亡リスクが38~40%低く、心血管疾患による死亡リスクが48~49%低かった。
- VILPAを1日に最大11回行っている人は、がん関連の死亡リスクは49%低く、心血管疾患による死亡リスクが65%低かった。
日常生活の一部として行える運動は簡単に取り組める
「興味深いことに、運動を習慣として行っている約6万2,000人に比べても、VILPAを行っている人では高い健康改善の効果を得られることが分かりました」と、英オックスフォード大学疫学部のナオミ アレン教授は言う。 「体を激しく動かすスポーツでなく、日常生活の一部として行える偶発的な身体活動であっても、たとえば家事の一部として行えるようなものであっても、健康上のベネフィットを損なうものではないことが示されました」としている。 ただし、今回の研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないことに注意を促している。研究グループは、参加者間の健康状態の違いによって結果に違いが出るのを最小限に抑えるために、厳密な統計的手段を講じたとしている。既存の身体活動ガイドラインの改定を求める
シドニー大学やオックスフォード大学によるビッグデータ研究所や、ユニバーシティ カレッジ ロンドン 、グラスゴー大学、南デンマーク大学、マクマスター大学などの研究者は、今回の研究を含めた成果をもとに、国際的な運動・身体活動のガイドラインを改定することを求めている。 世界の運動ガイドラインのなかには、余暇のまとまった時間に行う、サッカーなどのスポーツやランニング、水泳などの、強度の高い運動・身体活動にのみ健康上の利点があると解釈されるものがあるとしている。 しかし、これまで実施された運動・身体活動でえられる健康上の利点についての研究は、アンケート調査にもとづくものが多かった。 短い時間に行う低強度の運動については、正確に計測・記録するのが難しかったため、適正に評価されていなかったとしている。 「とくにコロナ禍で、座ったまま過ごす時間の長い生活スタイルが増えており、有害な影響をもたらしています。それに対抗するために、職場でも地域、学校でもどこでも、身体活動をより多く行う必要があります」と、スタマタキス教授は言う。 スタマタキス教授が共同議長を務め、2020年に策定された、世界保健機関(WHO)の「運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン」では、運動や身体活動を行い、体を活発に動かすことは、あらゆる年代の人にとって有益で、すべて種類の身体活動が勧められるとしている。 たとえば、▼ エレベーターよりも階段を使う、
▼ 外出には車よりも徒歩で行く、
▼ デスクワークでは1時間ごとに休憩をとり立ち上がり、体を動かすようにする、
▼ テレビのコマーシャルの時間には立ち上がる、
▼ 余暇時間にウォーキング、サイクリング、ダンスなどに取り組む、
▼ 休日にはガーデニングやドゥ イット ユアセルフ(DIY)の大工仕事などを行う、
――といった身体活動を頻繁に行うことで恩恵を得られるとしている。 One-minute bursts of activity during daily tasks could prolong your life, finds study (シドニー大学 2022年12月9日)
Association of wearable device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity with mortality (Nature Medicine 2022年12月8日)
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]
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- 野菜摂取量の平均値は、256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。野菜摂取量は有意に減少 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」結果より
- 糖尿病が強く疑われる人は、男性16.8%、女性8.9% 令和5年(2023) 「国民健康・栄養調査」の結果より
- 肥満の人は、男性31.5%、女性21.1%。やせの人は、男性4.4%、女性12.0%(20歳代女性20.2%) 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
- 特定健診(40~74歳)受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%(男性13.3%、女性3.2%)、予備群該当者は、12.3%(男性 9.7%、女性2.6%) 令和4年(2022)「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」の結果より
- メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、男性 4.3%、女性11.3%。予備群の人は、男性 4.3%、女性11.3% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」の結果より