ストレスが多いと口の中の健康も悪くなりやすい ストレスは口腔健康にも悪影響
2023年04月24日

ストレスは、口腔の健康や健康格差にも大きな影響をもたらしていることが、日本の27万人超の労働者を対象とした調査で明らかになった。
ストレスの高い人が、歯が痛い・歯ぐきの腫れ・噛みにくいなど、口腔の健康の問題をもつ割合は14.4%で、ストレスのない人の2.2%に比べ大幅に高いことが示された。
「日常生活のストレスが多いほど、口腔の健康の問題をもつ人は多くなる。ストレス軽減を通じて、口腔の健康を向上するための介入プログラムを開発する必要がある」と、研究者は述べている。
ストレスがあるほど口腔の健康の問題をもっている割合は増える
日本の27万人超の労働者を調査
ストレスは、さまざまな健康問題を引き起こし、健康格差を拡大する要因にもなっている。とくに労働者の心理的なストレスは、さまざまな精神的および身体的な健康上の問題を引き起こすことが報告されている。
一方、ストレスと口腔の健康の関連についてはよく分かっていない。これまでの研究は、ストレスの測定項目の範囲が狭く、一貫した結果が出ていなかった。
そこで東京医科歯科大学の研究グループは、国が実施した国民生活基礎調査の2次解析から、広範な日常生活のストレスと口腔の健康との関係について、27万4,881人の労働者を対象に調査した。
その結果、「歯が痛い、歯ぐきの腫れ・出血、噛みにくい」といった口腔の健康の問題をもっている割合は、最大のストレススコアの人で14.4%に上り、ストレスがない人の2.2%に比べ大幅に高かった。
調査では、仕事以外の広範な日常生活のストレスについても調査した。ストレスが増えるほど、個別の口腔についても、症状のある人が増えることが分かった。
仕事以外の広範な日常生活のストレスについても調査
ストレススコアと口腔の健康問題の関連
ストレスが増えるほど口腔症状[歯が痛い、歯ぐきの腫れ・出血、かみにくい]
のある人が増えることが明らかに

ストレスが増えるほど口腔症状[歯が痛い、歯ぐきの腫れ・出血、かみにくい]
のある人が増えることが明らかに

出典:東京医科歯科大学、2022年
研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の相田潤教授、青木仁氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」にオンライン掲載された。
「労働者の日常生活のストレスと口腔の健康の問題とのあいだに、明確な用量反応的な関係が認められました。本研究の長所は、労働者の仕事以外の広範な日常生活のストレスを考慮したことです。さらに、分析の対象者が多数であり、ストレスと口腔の健康のあいだの用量反応的な関係を示すことを可能にしました」と、研究者は述べている。
「現在、ストレスに起因する口腔の健康の問題は、産業衛生の分野のみならず、歯科分野でも十分に考慮されていません。根底にある機序を明らかにし、ストレス軽減を通じて、口腔の健康を向上するための介入プログラムを開発していくことが必要と考えられます」としている。
仕事以外の広範な日常生活のストレスも調査
ストレス軽減を通じて口腔の健康も向上
研究グループは今回、国が実施した2013年の国民生活基礎調査の匿人化された個票データを分析。日常生活のストレス、口腔の健康の問題[歯が痛い、歯ぐきの腫れ・出血、かみにくい]のいずれかの項目が1つ以上ある場合を「問題あり」と判定した。
各共変量について、自記式質問票の情報から得た。共変量には性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題での日常生活の影響、歯科以外の治療中の主な疾患(15疾患)を用いた。
多項ロジスティック回帰分析を用いて、日常生活のストレスと口腔の健康の問題との関連を推定した。そして、拡張逆確率重み付け法(AIPW法)を用いて、口腔の健康の問題の有病率を推定した。
対象となったのは27万4,881人で、平均年齢は47.0(SD=14.4)歳、男性15万2,850人(55.6%)、女性12万2,031人(44.4%))。うち、4.0%に口腔の健康の問題が認められた。
解析した結果、口腔の健康の問題の有病率は、ストレスのない人で2.1%だったが、ストレススコアとともに増加し、最大のストレススコア7点以上の人では15.4%に達した。
ストレスのない人と比較した、最大のストレススコアの人の調整オッズ比は9.2(95%信頼区間(CI) 8.2~10.3)倍だった。
AIPW法により各共変量で調整した口腔の健康の問題の推定有病率は、ストレスがない人が2.2%(95%CI=2.1-2.3)であり、最大のストレススコアの人で14.4%(95%CI=12.1-16.7)だった。
個別の口腔の問題についても、ストレスが増えるほど、症状を有する人が増えるという関係がみられた。
東京医科歯科大学 歯学部 健康推進歯学分野東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野
Association of Stressful Life Events with Oral Health Among Japanese Workers (Journal of Epidemiology 2023年1月14日)
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。 ©2006-2025 soshinsha. 日本医療・健康情報研究所
- 04月23日
- NEW日本人の平均寿命と健康寿命の差は拡大 健康格差が拡大 肥満や認知症のリスクも深刻
- 04月23日
- NEW学校給食に子供の肥満を減らす効果 給食を使う日本の食育を高評価 世界では子供の肥満が2倍に
- 04月23日
- NEW「塩のとりすぎ」で肥満リスクも上昇 塩分をコントロールする2つの効果的な方法
- 04月23日
- NEW自転車通勤は健康増進に役立つ 体を動かすアクティブ通勤 高齢者の自転車利用にもメリット
- 04月23日
- NEWゆっくり食べると肥満・メタボのリスクが減る ゆっくり食べるのを習慣化する方法
- 04月23日
- NEWすべての年代の人は運動により脳の健康を高められる あらゆる運動がメンタルヘルスを高める
- 04月23日
- NEW朝に自然光を浴びると肥満やメタボのリスクが減少 目覚めの質も良くなる 体内時計を調節
- 04月23日
- NEW土曜・日曜のみの「週末だけ運動」で肥満リスクを減らせる 忙しい人も運動は続けられる
- 03月31日
- 体組成計にのるだけで要介護化リスクの高い高齢者がわかる リスクの高い高齢者を早期発見し支援
- 野菜摂取量の平均値は、256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。野菜摂取量は有意に減少 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」結果より
- 糖尿病が強く疑われる人は、男性16.8%、女性8.9% 令和5年(2023) 「国民健康・栄養調査」の結果より
- 肥満の人は、男性31.5%、女性21.1%。やせの人は、男性4.4%、女性12.0%(20歳代女性20.2%) 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
- 特定健診(40~74歳)受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%(男性13.3%、女性3.2%)、予備群該当者は、12.3%(男性 9.7%、女性2.6%) 令和4年(2022)「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」の結果より
- メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、男性 4.3%、女性11.3%。予備群の人は、男性 4.3%、女性11.3% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」の結果より