「骨の健康」を守るために毎日の食事と運動が大切 健康な骨は骨粗鬆症や認知症の予防につながる

 骨を健康にし、骨粗鬆症を予防するために、毎日の食事が大切という研究が発表されている。

 カルシウムや良質なタンパク質、さらには野菜などからビタミンKを摂るなど、バランスの良い食事により、骨折による入院のリスクが半分に低下することが明らかになっている。

 ウォーキングやランニングのような、骨に負担をかける運動は、骨の健康を改善するのに効果的という報告もある。

 さらに、骨密度の低い人は、認知症を発症するリスクが42%高いという調査結果も発表された。骨の健康は、メンタルヘルスにも影響している。

骨を健康にするためにバランスの良い食事が必要

 骨粗鬆症は、骨強度が低下し、骨折リスクが高まる疾患。

 骨を健康にするために、食事で注意したのは、カルシウムとビタミンD、良質なタンパク質、さらにはビタミンKをバランス良く摂ることだという研究を、オーストラリアのエディス コーワン大学などが発表している。

 カルシウムは、乳製品・大豆製品・緑黄色野菜・海藻・魚などに多く含まれる。カルシウムは乳製品から効率良く摂ることができる。コップ1杯の牛乳(200mL)に200mgのカルシウムが含まれている。

 また、丈夫な骨をつくるために、ビタミンDも不可欠だ。ビタミンDが著しく足りていないと、骨折リスクが大幅に上昇するという報告がある。

 ビタミンDの不足を防ぐには、ビタミンDを多く含む食品を積極的に食べるとともに、日光を適度に浴びることも大切だ。

 さらに、ビタミンKは骨をつくる働きを促す。ビタミンKは、納豆などの大豆食品、キャベツ・ホウレンソウ・小松菜などの葉物野菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、豆類、海藻類、卵などに多く含まれる。

野菜などからビタミンKを摂っていると骨折リスクが低下

 骨を健康に保ち、骨折などを防ぐために、ビタミンKをしっかりと摂ることも大切だ。

 「ビタミンKを十分に摂ることで、年齢を重ねてから、股関節骨折などのリスクを下げることを期待できます」と、同大学栄養・健康・イノベーション研究所のマーク シム氏は言う。

 同研究所の調査で、ビタミンKを摂取している女性は、そうでない女性に比べ、骨折するリスクが31%低いことが示された。研究グループは、70歳以上の高齢者1,373人を対象に、14.5年以上追跡して調査した。

 その結果、ビタミンKをもっとも多く摂取していた人は、骨折による入院のリスクがほぼ半分に減少した。1食で125g以上の葉物野菜や緑黄色野菜を食べることが勧められるという。

 「ビタミンKが骨吸収を阻害し、骨の健康を促進している可能性があります。ビタミンKは、骨の形成に必要なオステオカルシンなどを活性化するのにも必要です」と、シム氏は指摘する。

 「ホウレンソウ、ブロッコリー、キャベツ、ケールなどの野菜を毎日食べることをお勧めします」としている。

骨を丈夫にするために毎日の運動も大切

 骨の健康を守るために、運動を習慣として行うことも大切だ。

 ウォーキングやランニングのような、骨に負担をかける運動は、骨の健康を改善するのに効果的という別の研究を、欧州内分泌学会(ESE)が発表している。

 一方、サイクリングや水泳のような、骨で体重を支えることが少ない運動は、効果が薄い可能性があるという。

 「骨の健康を維持するために、男女ともに適度な運動を毎日行うことが大切です」と、イタリアのオルトペディコ ガレアッツィ研究所のジョヴァンニ・ロンバルディ氏は言う。

 「骨を丈夫にするためには、ウォーキングやランニングなどの骨に負荷をかける運動は、より有用かもしれません」としている。

骨に負荷をかける運動が骨を丈夫にして糖代謝も改善

 研究グループは、トレーニングを受けた17人のランナーを対象に、マラソンを走る前後に体の状態を調べた。

 骨から血流へのカルシウムの放出や、骨を弱める骨吸収に加えて、骨形成やエネルギー調節に関連するホルモンの変化を測定した。

 このうち、「オステオカルシン」と「P1NP」は、骨形成に関わる重要なタンパク質だ。さらに、糖代謝に関わる重要なホルモンである「インスリン」や、「グルカゴン」や「レプチン」などの値も調べた。

 その結果、マラソンランナーは、レース終了時にはグルカゴンの値が高く、レプチンとインスリンの値が低くなっていることが分かった。インスリンの低下は、オステオカルシンとP1NPの低下と関連していた。

 「骨形成に関わるタンパク質であるオステオカルシンは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞とも通信し、体の糖代謝を調整しているとみられます」と、ロンバルディ氏は言う。

 「ウォーキングやランニングなどの、骨に物理的な負荷をかける運動は、骨組織を刺激して膵臓にシグナルを送り、糖代謝を良くしたり、エネルギー需要を満たすのに役立っていると考えられます」としている。

 骨と体の代謝は相互に作用しあっている。骨の代謝について理解を深めることで、糖尿病と骨粗鬆症の関連が分かり、糖尿病のより良い治療にもつながると考えられる。

骨密度の低い人は認知症リスクも42%高い

 骨密度が低い人は、そうでない人に比べて、認知症を発症するリスクが高いという調査結果を、米国神経学会(AAN)が発表した。

 「高齢者の多くは、骨密度の低下と認知症の発症という、2つのリスクを同時にもっています。不健康な食事や運動不足により、2つの疾患のリスクは上昇します」と、オランダのエラスムス ロッテルダム大学疫学部のモハマド アルファン イクラム教授はいう。

 「認知症にいたるまでの期間に起こる骨減少について、よく分かっていませんでしたが、今回の研究で、骨減少は認知症のリスクが高いことと関連していることが示されました」としている。

 研究グループは、認知症を発症していない平均年齢72歳の高齢者3,651人を対象に、平均11年追跡して調査した。

 骨密度を調べるために、参加者に骨のスキャンやX線検査を行い、4~5年ごとに認知症の検査なども行った。期間中に19%が認知症を発症した。

骨の健康はメンタルヘルスにも影響 若いうちから対策を

 その結果、骨密度の低い人は、骨密度の高い人に比べ、10年以内に認知症を発症するリスクが42%高いことが明らかになった。

 「これまでも、食事や運動などの生活スタイルが、認知症のリスクに影響をもたらし、骨の健康にも影響することが示されています」と、イクラム教授はいう。

 「骨の健康と認知症の関連について、さらに研究を重ねる必要がありますが、骨減少が認知症のリスクを知るための指標になる可能性があります」。

 「とくに高齢の人は、骨の健康を高めるための生活改善を、早い段階ではじめる必要があります」としている。

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]