アルコールを少し飲み過ぎただけで肥満・メタボのリスクは上昇 標準的な量はどれくらい?

 標準的なアルコール量の半分(缶ビール1/2本)を毎日飲んだだけで、肥満とメタボリックシンドロームのリスクが上昇することが、約2,700万人のアジア人を対象とした調査で明らかになった。
 標準的な量の2倍(缶ビール2本)を飲んでいる男性は、肥満のリスクが22%、メタボのリスクが25%、それぞれ上昇するという。
 「男性であっても女性であっても、1日あたりのアルコールの摂取量が標準の半分程度であっても、肥満とメタボのリスクは上昇します。飲み過ぎにはくれぐれもご注意ください」と、研究者は述べている。
「適度なアルコールは健康に良い」とは言うものの
 「酒は百薬の長」ということわざがある通り、適度なアルコールは健康に良いことを示した研究もあるが、アルコールの重大な健康リスクを示した研究も多い。

 アルコールにはストレス解消や、人間関係を円滑にするなどメリットがある一方で、過剰な飲酒は確実に体にダメージを与える。

 日本の厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日平均純アルコールで約20g程度とされている。女性ではその半分が適度な量とされている。

 純アルコール20gに相当する酒量は、ビールはロング缶1本(500mL)、チューハイ(7%)は缶1本(350mL)、日本酒1合(180mL)、ウィスキーはダブル1杯(60mL)、焼酎(25度)はグラス1/2杯(100mL)、ワインはグラス2杯(200mL)。

 なお、アルコールの吸収と分解には個人差がある。お酒に弱い人はこれよりも少ない量に抑えた方が良い。
アルコールはほどほどに 肥満や糖尿病のリスクが上昇
 適度な飲酒は、血糖をコントロールするインスリンへの反応(感受性)を改善するとみられているが、飲酒が長期間に及んだり多量飲酒になると、やがてインスリンの分泌量が低下していき、2型糖尿病のリスクが上昇する。

 アルコールを飲める人でも、肥満や2型糖尿病を予防・改善するために、飲み過ぎは控えるべきだ。また、お酒を飲むときは、食事の量(カロリー)や内容にも注意することも重要となる。

 飲酒は血液中の中性脂肪を増加させ、脂質異常症の原因になる。飲酒により、食欲が増し、食事の量が増え、脂肪の多い食事も増えがちになる。過度の飲酒により中性脂肪が上昇すると、皮下や内臓に脂肪が蓄積しやすくなる。

 痛風(高尿酸血症)の原因である尿酸値も、アルコールの摂取にともない上昇する。アルコールにより、肝臓病や膵臓のリスクも高くなる。
標準的な量の半分でも肥満とメタボのリスクは上昇
 標準的なアルコール量の半分(缶ビール1/2本)を毎日飲んでいると、肥満とメタボリックシンドロームのリスクが上昇することが、約2,700万人のアジア人を対象とした調査で明らかになった。

 これは、韓国の国立ソウル医療センターが、約2,700万人の成人を対象に行った大規模な調査で明らかになったもので、詳細は2020年9月にオンライン開催された「欧州国際肥満会議(ECOICO)」で発表された。

 日本と韓国とでは体質や遺伝子に共通するものが多いので、今回の結果は日本人にもあてはまる可能性が高い。

 欧米では、アルコールの摂取量は「ドリンク(drink)」という単位であらわされることが多い。この研究では、1ドリンクを純アルコールに換算して14gと定義した。

 これは、世界的に標準的なアルコール摂取量は、1日に1ドリンク(純アルコールで14g)とされることが多いことにもとづく。純アルコールで14gは、缶ビールであると1本(355mL)、ワインであると小ぶりなグラスに1杯(118mL)に相当する。

 今回の研究では、標準的なアルコールの摂取量の半分(純アルコールで1日7gに相当)を摂取していると、男性と女性の両方で肥満とメタボリックシンドロームのリスクが高まることが明らかになった。メタボのリスクは、アルコール摂取量に比例して上昇した。

 研究グループは、韓国の健康保険制度の2015~2016年のデータをもとに、1,400万人以上の男性と1,200万人以上の女性の医療データとアルコール摂取量について分析した。
飲む量が増えるごとに肥満とメタボのリスクはさらに上昇
 その結果、1日に0.5~1ドリンクの標準的なアルコール量(純アルコール換算で7.1~14g)を飲んでいた男性は、まったく飲まない男性に比べ、肥満とメタボを発症するリスクがともに10%高く、1日最大2ドリンク(同14.1~24g)飲んでいた男性は、それぞれリスクが22%と25%高かった。

 もっともリスクが高かったのは、1日に2ドリンク以上(同24g)を飲んでいた男性で、肥満のリスクは34%、メタボのリスクは42%、それぞれ上昇した。

 女性では、1日に0.5~1ドリンクを飲んでいた女性は、肥満のリスクが9%高かったが、メタボのリスクは逆に3%低かった。

 しかし、アルコールの摂取量が増えると、肥満とメタボのリスクは上昇した。1日に2ドリンク以上を飲んでいた女性は、肥満のリスクは22%、メタボのリスクは18%、それぞれ上昇した。

 「男性であっても女性であっても、1日あたりのアルコールの摂取量が、標準の半分程度であっても、肥満とメタボリックシンドロームのリスクは上昇することが明らかになりました。アルコール摂取量が増えると、それに比例して肥満とメタボのリスクは上昇します」と、国立ソウル医療センターのヘ ジョンシン氏は述べている。
アルコール飲料にカロリーを表示すると飲み過ぎが減る?
 アルコールにもカロリーがある。純アルコールのカロリーは、1gあたり約7kcal。飲み過ぎると確実にカロリーの摂り過ぎになり、肥満や2型糖尿病に悪影響をもたらす。

 アルコール飲料にカロリーを表示することで、アルコール摂取と肥満の両方に対策できる可能性があることが、英リバプール大学の研究で明らかになった。

 18件の研究を解析したところ、アルコール飲料はそれほどカロリーが高くないといった誤った認識をしている人が多く、アルコール飲料のカロリーについて気にしていない人も多いことが分かった。

 「アルコール飲料にカロリー栄養を分かりやすく表示することは正しい方向への一歩であり、アルコール業界のカロリー削減を奨励することにつながります」と、同大学心理学部のエリック ロビンソン氏は述べている。

 「酒類を購入するときには栄養表示、とくにカロリーをよく見ることをお勧めします。英国政府は、アルコール飲料のカロリー表示を肥満対策に役立てられるかどうかを検討しています」としている。

Even light alcohol consumption linked to higher risk of obesity and metabolic syndrome in study of 27 million adults(欧州・国際肥満会議 2020年9月2日)
欧州・国際肥満会議(ECOICO 2020)
Alcohol, calories, and obesity: Could labelling make a difference?(Obesity Reviews 2021年2月3日)
Alcohol, calories, and obesity: A rapid systematic review and meta-analysis of consumer knowledge, support, and behavioral effects of energy labeling on alcoholic drinks(Obesity Reviews 2021年2月2日)