肥満は新型コロナの感染リスクを高める 運動に取り組む人の体脂肪は健康 適正体重の維持が大切

 肥満は新型コロナの感染の重要な危険因子であることが明らかになった。

 肥満は、新型コロナの重症化リスクを高めるだけでなく、ウイルスに感染するリスクも高めることが示された。

 ウォーキングや筋トレなどの運動を長期にわたり続けている人は、腹部にたまった脂肪が健康であることも分かった。

 「脂肪の不健康な蓄積は、肥満や糖尿病などのリスクを高めます。さらには、肝臓に余分な脂肪が蓄積される非アルコール性脂肪性肝疾患への関心も高まっています」と、研究者は述べている。

肥満は新型コロナの感染リスクを高める 重症化リスクも上昇

 肥満は新型コロナの感染の重要な危険因子であることが、米マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究で明らかになった。

 肥満のある人は、ない人に比べて、新型コロナが陽性になる可能性が34%高いという。肥満は、ウイルス感染症の重症化を引き起こす危険因子であるだけでなく、感染リスクを高める可能性もあるとしている。

 研究グループは今回、米国人の電子医療記録(EHR)データを分析した。そのなかには、2020~2022年に新型コロナの検査を受けた68万7,813人のデータや、感染者と接触したり感染の疑いがあると報告された7万2,000人以上のデータが含まれていた。

健康的な体重を維持することが重要

 「肥満が新型コロナの重症化リスクを高めることは分かっていましたが、それだけでなくウイルスに感染するリスクも高めることが示されました」と、ハーバード大学ブリガム アンド ウィメンズ病院の心臓血管学研究所の相川眞範所長はMass General Brighamが公表したリリースで述べている。

 「健康的な体重を維持することが、健康全般にとって非常に重要であることを示した報告は増えています」としている。

 体重などのリスクの軽減に関係なく、ワクチン接種を受けることが、新型コロナの発症と重篤な転帰を防ぐもっとも効果的で安全な方法だとしている。

肥満のある人もウォーキングなどの運動を続けると腹部脂肪が健康に

運動を長期にわたり続けている人は体脂肪が改善

 肥満のある人も、ウォーキングや筋トレなどの運動を長期にわたり続けている人は、運動をしていない人に比べ、腹部にたまった脂肪が健康であることが、新しい別の研究で分かった。

 「運動は、カロリーを消費する効果的な手段であるのに加え、数ヵ月から数年にわたり習慣として行うことで、加齢にともなう体重増加があっても、体脂肪をより健康的に蓄えられるように脂肪組織が変化することが示されました」と、米ミシガン大学運動科学部のジェフリー ホロウィッツ教授は言う。

 研究グループは、運動を週に4回以上行うことを2年以上続けている16人の成人と、運動を行う習慣がなく、体脂肪量、体重、性別などの条件が一致した16人の成人を、平均11年追跡して調査し比較した。

 その結果、運動している人の脂肪組織は、体が脂肪を蓄える能力に好ましい変化が起きていたが、運動をしていない人では、こうした特徴はみられなかった。

脂肪の不健康な蓄積は生活習慣病のリスクを高める

 肥満のタイプは、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられる。内臓脂肪型の人は、食べすぎや運動不足が原因で体重が増えると、余分な脂肪は腹腔内にたまるほか(内臓脂肪)、肝臓や心臓などの臓器にも蓄積される。

 一方、皮下脂肪型の人は、腰まわりや太ももなど下半身を中心に皮下脂肪がたまっているが、内臓脂肪は少ない。そうした人は高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などを発症するリスクは比較的低いとみられている。

 研究では運動している人は、皮下脂肪が多く、血管は健康で、エネルギーを作りだすミトコンドリアや有益なタンパク質が多く、代謝を妨げるコラーゲンの種類が少なく、炎症を引き起こす細胞も少ない傾向がみられた。

 「脂肪の不健康な蓄積は、肥満や糖尿病などのリスクを高めます。さらには、肝臓に余分な脂肪が蓄積される非アルコール性脂肪性肝疾患への関心も高まっています」と、ホロウィッツ教授は言う。

 「この疾患は太りすぎや肥満の人に多くみられ、肝硬変やがんなどの病気のリスクを高めます」。

 「運動に取り組むことで、脂肪組織の量は変わらない場合でも、その質に好ましい変化があらわれると考えられます。今後の研究で、運動をする人としない人の脂肪組織の機能に違いがあるかや、脂肪組織の変化にもっと良い反応を示す運動の種類や強度などについて調査する予定です」としている。

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