野菜を食べている人は認知症や脳卒中が少ない 野菜の栄養の抗酸化作用 日本人を調査

 野菜と果物をよく食べている人は、あまり食べない人に比べ、認知症の発症リスクが男女ともに低いことが、日本人4万人超を対象とした調査で明らかになった。

 男性では全野菜・アブラナ科の野菜、女性では全野菜・全果物・緑色野菜・ネギ類野菜をよく食べている人で、認知症リスクは低かった。

 野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミンでのうち、ビタミンCの摂取量が多い人で、認知症リスクはとくに低下した。

 食事でビタミンCを多く摂取している人は、脳卒中と脳梗塞の発症リスクが低いことも示されている。ただし、こうした効果はタバコを吸う習慣のある人では失われてしまうという。

野菜は抗酸化作用のある栄養が豊富

 野菜や果物には、抗酸化作用のあるα-カロテンやβ-カロテン、ビタミンCなどのビタミン、食物繊維などが豊富に含まれている。こうした栄養が、認知機能の低下やアルツハイマー型認知症に予防的に働いている可能性がある。

 「JPHC研究」は、全国の11保健所管内の約14万人の地域住民を対象に、生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関連について長期追跡している多目的コホート研究で、国立がん研究センターを中心に行われている。

 研究グループは、野菜・果物の摂取量、および野菜・果物に関連する抗酸化ビタミンとして、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンCの摂取量と、その後の認知症リスクとの関連を明らかにするために調査を行った。

女性は緑色野菜の摂取量が多いと認知症リスクが低下

 その結果、全野菜・果物の摂取量がもっとも多いグループは、もっとも少ないグループに比べて、認知症の発症リスクは男性で13%、女性で15%低いことが明らかになった。

 野菜の種類別でみると、男性では全野菜、アブラナ科の野菜の摂取量がもっとも多いグループで、認知症リスクは12%、16%それぞれ低下した。

 アブラナ科の野菜は、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、コマツナ、カブ、ブロッコリー、カリフラワーなどがある。

 女性では、全野菜、緑色野菜、ネギ類野菜、全果物の摂取量がもっとも多いグループで、認知症リスクは13%、21%、14%、12%それぞれ低下した。

 緑黄色野菜は、ホウレンソウ、ニンジン、ピーマン、トマト、カボチャ、インゲン、オクラ、クレソン、サラダ菜、春菊などがある。

野菜を食べている人は認知症リスクが低い
野菜の種類別摂取量と認知症リスクとの関連

男 性

女 性
出典:国立がん研究センター、2024年

 研究グループは今回、1995年と1998年に秋田、長野、沖縄、茨城、高知の5保健所管内に在住していた50~79歳の4万2,643人の男女を2016年まで追跡して調査し、野菜・果物の摂取と、介護保険の要介護認定情報から把握した要介護認知症との関連を調べた。

 2006~2016年の追跡期間中(中央値 11年)に、要介護認定情報から4,994人が認知症と判定された。

野菜はビタミンCの主要な供給源

 野菜・果物を食べることが、認知症の発症リスクの低下と関連している理由として、野菜・果物に含まれるビタミンCなどによる抗酸化作用が考えられる。

 抗酸化物質は、酸化ストレスレベルを低下させることで、脳のDNA損傷や、認知症のリスクとなるタンパク質(アミロイドβ)の形成を抑制することが報告されており、認知症のリスクを低下させる働きをしている可能性がある。

 調査では、野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミンのうち、ビタミンCの摂取量がもっとも多いグループは、もっとも少ないグループに比べて、認知症の発症リスクは男性で29%、女性で24%低いことが明らかになった。

 野菜・果物はビタミンCの主要な供給源となる。動脈硬化のリスクを低下させることで、脳血管性認知症のリスクを低下させる可能もあるとしている。

タバコを吸っているとビタミンCの効果は打ち消される

 JPHC研究の過去の研究では、食事でビタミンCを多く摂取している人は、脳卒中と脳梗塞の発症リスクが低いことが示されている。ただし、こうした効果は喫煙習慣のある人では失われるとしている。

 海外の研究でも、野菜などからビタミンCを多く摂取することと認知症のリスクが低いことは関連していることが報告されている。

 「今回の研究では、全野菜・果物の摂取量が認知症の発症リスクの低下と関連があることが示されました」と、研究者は述べている。

 「ただし、喫煙する習慣は認知症のリスクを2~3倍も高め、日本人に多いアルツハイマー病、血管性認知症のいずれとも関係があります」としている。

野菜をよく食べている人は糖尿病リスクが減少

 JPHC研究の過去の研究では、野菜をよく食べている男性は、あまり食べない男性に比べ、2型糖尿病の発症リスクが20%低いことが示されている。

 とくに、緑の葉野菜を多く食べている男女や、アブラナ科の野菜を多く食べている男性で、糖尿病リスクは低い傾向が示された。

 ホウレンソウやコマツナなどの緑の葉野菜には、インスリン感受性を高める、ビタミンCやカロテノイドなどの抗酸化作用のある栄養が多く含まれる。

 また、野菜には食物繊維も含まれる。これまでの調査でも、野菜や穀類などから食物繊維を多くとっている人は、2型糖尿病のリスクが低いことが示されている。

 「野菜には、抗酸化ビタミンが多く含まれており、過去の疫学研究でも、そうした抗酸化ビタミンを多く摂取している人は、糖尿病リスクが低いという報告があります」と、研究者は述べている。

 「キャベツやダイコンなどのアブラナ科の野菜に豊富に含まれる辛み成分であるイソチオシアネートにも、抗酸化作用があることが確認されています」としている。

野菜を食べている人は糖尿病リスクが低い
野菜の種類別摂取量と糖尿病リスクとの関連

出典:国立がん研究センター、2024年

Fruit and Vegetable Intake and Risk of Disabling Dementia: Japan Public Health Center Disabling Dementia Study (The Journal of Nutrition 2024年6月)
Dietary intake of antioxidant vitamins and risk of stroke: the Japan Public Health Center-based Prospective Study (European Journal of Clinical Nutrition 2017年7月12日)
Vegetable and fruit intake and risk of type 2 diabetes: Japan Public Health Center-based Prospective Study (British Journal of Nutrition 2012年5月9日)

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト