子供や若者の肥満が増加 超加工食品をよく食べる子供は食事の質が低い 早い段階から肥満対策

 東京大学は、日本の3~17歳の子供や若年者は、超加工食品からのエネルギー摂取量が多いほど、食事の質が低いことを調査で明らかにした。

 子供を対象とした食事調査をもとにしたもので、超加工食品からのエネルギー摂取量は、平均して1日の総エネルギー摂取量の27~44%を占めていた。

 新型コロナのパンデミックの影響もあり、日本でも子供の肥満が増えていることが報告されている。

 「過体重や肥満に対して、人生の早い時期から適切な対策をすることが必要です」と研究者は指摘している。

超加工食品を食べすぎると食事全体の質が低下

 食品加工は、世界の食料システムで、食品の安全・安心・入手可能性の確保や食品廃棄物の削減など、重要な役割をになっているも。

 しかし、ソーセージや菓子パン、清涼飲料などの超加工食品は、高度な加工を特徴としており、脂質や塩分を多く含む一方で、タンパク質や食物繊維、ビタミン・ミネラルなどの含有量が少ないため、食べすぎると食事全体の質が低下する可能性がある。

 欧米の研究では、超加工食品からのエネルギー摂取量は、小児や若年者など高い傾向にあることが分かっている一方で、日本人の子供の超加工食品の摂取量や、食事の質との関連は明らかになっていない。

 そこで研究グループは、日本の子供を対象とした全国規模の食事調査のデータを用いて、超加工食品の摂取量と食事の質について調査した。

 2016~2020年に日本の32都道府県に住む、3~17歳の1,318人の子供や若年者から得た8日間にわたる詳細な食事記録データをもとに、超加工食品の摂取量を調査し、食事の質との関連を評価した。

日本の子供や若年者でも超加工食品は食事の質を低下

 その結果、1日の総エネルギー摂取量に対して超加工食品が占める割合の平均値は、超加工食品を少なく見積もるシナリオでは27%で、多く見積もるシナリオでは44%だった。

 また、超加工食品からの総エネルギー摂取量に占める割合がもっとも大きい食品群は、超加工食品を少なく見積もるシナリオでは菓子類で、超加工食品を多く見積もるシナリオでは穀類・デンプン質食品だった。

 食品分類のシナリオにかかわらず、超加工食品からエネルギーを多くとっている集団ほど、食事の質のインデックスの総スコアが低い、つまり食事の質が低いことが示された。

食品の加工レベル別の分類

超加工食品からエネルギーを多くとっている子供ほど食事の質のインデックスの総スコアが低下

超加工食品のエネルギー寄与割合によって研究参加者を 3 群に分けたときの、各群の食事の質のスコア
各群の括弧内の数値は超加工食品からのエネルギー寄与割合の中央値を示す
HEI-2015:Healthy Eating Index-2015(アメリカ人のための食事ガイドラインの順守の程度を測る指標)
NRF9.3:Nutrient-Rich Food Index 9.3(食事全体を栄養素密度の観点から評価する指標)。
出典:東京大学、2024年

超加工食品の利用と健康状態や疾病との関連を調査

 研究は、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野の篠崎奈々助教、村上健太郎教授、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。

 「今回の研究は、日本の子供で、超加工食品の摂取量を明らかにし、その食事の質との関連性を評価したはじめての研究です。日本の保健政策を決定するうえで重要な資料になります。超加工食品と関連する健康状態や疾病に関する研究の発展に寄与することが期待されます」と、研究者は述べている。

 研究グループは今回、参加者やその保護者に、参加者が8日間(各季節に2日ずつ)にわたって食べたり飲んだりしたものをすべて計量して記録してもらった。そして、食事に記録されたすべての食品を、ノースカロライナ大学が開発した食品分類の枠組みを用いて、加工レベルが低い順に「未加工/最小限の加工」「基本的な加工」「中程度の加工」「高度な加工(超加工食品)」の4段階に分類した。

 食事の質については、「Healthy Eating Index-2015」と「Nutrient-Rich Food Index 9.3」を使って評価した。また、外食や惣菜などの家庭外で調理された料理を、(1) 料理に含まれる個々の食材を個別に加工レベル別に分類する場合(超加工食品を少なく見積もるシナリオ)と、(2) すべて超加工食品に分類する場合(超加工食品を多く見積もるシナリオ)の2通りで食品分類を行った。

日本でも子供の肥満は増加
大人になったときの肥満リスクは小児や若年の頃に決まる?

 国立成育医療研究センターの研究によると、日本の「子供の肥満」は、新型コロナのパンデミック期間(2020~2022年)に増加した。

 小児の肥満は、2022年には0.42%増加(男子は0.49%増加、女子は0.36%増加)した。

 なお、「子供のやせ」も2022年には、男女ともに0.28%増加(男子は0.21%増加、女子は0.34%増加)しており、やはりパンデミックの影響とみられる。

 研究グループは、健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)が提供する約40万人分の学校健診情報(SHRデータベース)を用いて、新型コロナのパンデミックによる環境の変化が、子供たちの身体的健康にどのような変化をもたらしたかを調べた。

 子供の肥満は世界的に増加しており、世界保健機関(WHO)は、世界の5~19歳の子供と若年者のうち、2022年には3億9,000万人以上が過体重で、1億6,000万人が肥満だったと推測している。

 子供と若年者の過体重と肥満の割合は、1990年にわわずか8%だったが、2022年には20%に大きく上昇した。この傾向は男女ともにみられ、男子の21%、女子の19%が太りすぎだという。

 小児期や若年期に肥満傾向があると、成人になってからも肥満になる可能性が高く、2型糖尿病や心血管疾患などのリスクが高まる。小児期や若年期の肥満は、心理社会的にも悪影響をおよぼし、学校の成績や生活の質、さらには偏見や差別、いじめなどにも関わるという。

 「過体重や肥満に対して、人生の早い時期から適切な対策をすることが必要です」としている。

東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野
Highly processed food consumption and its association with overall diet quality in a nationwide sample of 1,318 Japanese children and adolescents: A cross-sectional analysis based on 8-day weighed dietary records (Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2024年6月7日)

新型コロナウイルスのパンデミックが小児の身体的健康に影響~学校健診データの分析から、肥満・やせ・視力低下は増加傾向~ (国立成育医療研究センター 2024年5月28日)

Obesity and overweight (世界保健機関 2024年3月1日)