高齢者の高血圧はウォーキングの歩数を3000歩増やすと改善できる　毎日の運動に薬と同等の効果

2023年10月30日

　高血圧のある高齢者は、1日の歩数を3,000歩増やすと、血圧を大幅に低下できることが明らかになった。

　米国の高齢者の80%は高血圧と推定されている。血圧値を正常に管理することで、心不全・心臓病・脳卒中･腎臓病などの深刻な病気のリスクを減らすことができる。

　「歩数を3,000歩増やすと、多くの高齢者は1日の歩数は7,000歩となり、運動ガイドラインで推奨された運動量をみたすことができます。1日に3,000歩増やすことは、難しいことではありません」と、研究者は述べている。

1日の歩数を3000歩増やすと高血圧を大幅に軽減できる

　高血圧のある高齢者は、1日の歩数を3,000歩増やすと、血圧を大幅に低下できることが明らかになった。ウォーキングは、誰でも、いつでも、どこでも取り組める運動として人気が高い。

　「米国の高齢者の80%は高血圧と推定されています。血圧値を正常に管理することで、心不全・心臓病・脳卒中･腎臓病などの深刻な病気のリスクを減らすことができます」と、米国のコネチカット大学で運動学を研究しているリンダペスカテロ教授は言う。

　「高齢の方は、1日の歩数を3,000歩増やすと、高血圧を大幅に軽減できることが分かりました。これは、個人差はありますが、1日30分のウォーキングに相当します。最小限の運動介入で効果をえられます」としている。

　研究は、高血圧があり、1日に座ったまま過ごす時間が長い、年齢が73歳(中央値)の高齢者21人(男性8人、女性13人)を対象に実施したもの。

　参加した高齢者の年齢は68歳～78歳で、1日の歩数は平均して約4,000歩だった。

　その結果、歩数を3,000歩程度増やし、1日に7,000歩にすると、参加者の収縮期(最高)血圧は平均7ポイント、拡張期(最低)血圧は平均4ポイント、それぞれ低下した。

　これは、全死因による死亡の相対リスクが11%減少し、心血管死亡のリスクは16%減少、心臓病のリスクは18%減少、脳卒中のリスクは36%減少するのに相当するとしている。

　参加者には、歩数計、血圧計、毎日どれだけ歩いたかを記録する日記などのキットが与えられた。なお、新型コロナのパンデミックが起きた時期に行った研究であり、対象となった高齢者は全員がリモートで参加した。

　ペスカテロ教授らによるこれまでの研究でも、運動が高血圧のある成人の血圧値を即時的かつ長期的に下げるのに効果的であることが示されている。

　「年齢を重ねて、長生きすると、ほとんどの人は血圧値が高くなります。ウォーキングは誰でも簡単に取り組め、特別な道具は必要なく、いつでもどこでも行うことができます」と、ペスカテロ教授は言う。

　「歩数を3,000歩増やすと、多くの高齢者は1日の歩数は7,000歩となり、運動ガイドラインで推奨された運動量をみたすことができます。1日に3,000歩増やすことは、難しいことではありません」と、同大学で心血管運動生理学を研究しているエリザベスレファーツ氏は言う。

　米国の運動ガイドラインでは、活発な運動や身体活動を、週に150分行うことが推奨されている。高齢者が、毎日の歩数を1日あたり3,000歩増やすと、その運動量を満たすことができるとしている。

　降圧薬などを服用している人でも、運動療法と薬物療法を組み合わせることで、治療効果をさらに増強できる可能性があるという。

　「高齢者が運動に取り組むと、降圧薬と同等の血圧管理をえられることも分かりました。参加者のうち8人は降圧薬を服用していましたが、毎日の歩数を増やすことで、やはり収縮期血圧の改善がみられました」と、レファーツ氏は言う。

　「生活スタイルのシンプルな介入により、体系的な運動指導や、薬物療法と同じくらいの効果をえることが可能であることが示されたのは興味深いです」としている。

　なお、歩行速度や歩行を継続して行うことは、単純に歩数を増やすことに比べて、それほど重要ではないことも分かった。

　「この場合で重要なのは、運動や身体活動の強度ではなく、その量であることが示されました。歩数を増やすことを目標にすると、健康上のベネフィットをえられます」と、ペスカテロ教授は指摘している。

　今回の研究はパイロット研究であり、研究グループはえられたデータを使用し、より大規模な臨床試験を実施することを計画しているという。

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]