7つの健康的な生活スタイルで女性の認知症を予防 肥満も認知症に影響
2023年03月27日
健康的な生活スタイルである「ライフズ シンプル 7 (Life's Simple 7)」を実行している女性は、認知症を発症するリスクが低いことが、女性を20年間追跡して調査した研究で明らかになった。
7項目の健康的な生活スタイルの実行スコアが1ポイント増えるごとに、認知症リスクは6%低下することが明らかになった。
7項目の健康的な生活スタイルで認知症を予防
「ライフズ シンプル 7」は、米国心臓学会(AHA)が提唱しているもので、(1) 血圧を管理する、(2) 脂質を管理する、(3) 血糖値を管理する、(4) 健康的な食事を続ける、(5) 運動を習慣として行う、(6) 健康的な体重を維持する、(7) タバコを吸わない、という7項目で構成される。 研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の支援を得て行われたもので、詳細は4月にボストンで開催される「第75回米国神経学会(AAN)年次総会」で発表される予定だ。 「中年期に健康的な生活スタイルを選択することが、認知機能が低下するのを防ぎ、年齢を重ねてから認知症を発症するリスクを減少するのに役立つことが示されたのは良い知らせです」と、ブリガム アンド ウイメンズ病院で予防医学を研究しているパメラ リスト氏は述べている。1.3万人超の女性を20年間追跡して調査
ライフズ シンプル 7
(1) 血圧を管理する
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高血圧があると、血液の流れが悪化しやすくなり、十分な酸素と栄養を心臓や脳に供給するのが難しくなる。脳の血流の不足は認知機能の低下も引き起こす。 高血圧は自覚症状が乏しく自分では分からないので、定期的に血圧を測ることが重要となる。健康な体重を維持すること、塩分の摂取量を減らすこと、医師に処方してもらった薬をきちんと飲むことも大切だ。 |
(2) 脂質を管理する
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コレステロールや中性脂肪などの脂質の異常は、動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞などの心臓病や、脳出血や脳梗塞などの脳卒中の原因になる。 動脈硬化を起こした血管では、血管壁の内側にプラークと呼ばれるふくらみができる。コレステロールがたまっていき、プラークが大きくなると、血液の通り道が狭くなってしまう。 プラークが破れると、そこに血液のかたまりができ、血管が詰まってしまう。これが冠動脈で起きれば心筋梗塞になり、脳の動脈なら脳梗塞になる。 悪玉のLDLコレステロールを減らすために、動物性食品の摂り過ぎを抑えて、野菜、果物、魚、大豆などをバランスよく食べることが必要だ。 |
(3) 血糖値を管理する
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糖尿病のある人が、血糖値が高い状態を放置していると、心臓病や脳卒中の危険性が2~4倍に高まる。血糖値を管理すれば、これらの合併症を防ぐことができる。 インスリンは血糖値を下げる働きのあるホルモン。過食や運動不足により肥満になると、インスリンの作用が悪くなり、糖が筋肉などに取り込まれにくくなるインスリン抵抗性になりやすい。食後に上がった血糖値も下がりにくくなる。 糖尿病のある人は血糖管理をしっかり行うことが大切。血糖値は、1日のなかで食事や運動などの影響を受けて変動する。生活スタイルを少しずつでも改善していき、医師から処方された薬をしっかり服用することが重要。 |
(4) 健康的な食事を続ける
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健康的な食事を続ければ、体重、血圧値、血糖値、コレステロール値を改善できる。カロリーの摂り過ぎを防ぎながら、必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切。そのために、1日3食をしっかりと食べ、野菜や果物、海藻、大豆食品、魚類などを適度に摂ることが勧められる。 塩分の摂り過ぎも脳の血管の老化を促す。塩分は1日6g以下を目指そう。清涼飲料や缶コーヒーを飲むときは、糖質の摂り過ぎにも注意する。コップ1杯(200g)のコーラのカロリーは90kcalくらいで、糖質が24g含まれる。 |
(5) 運動を習慣として行う
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運動を習慣として続ければ、血糖値・血圧値が下がりやすくなり、悪玉のLDLコレステロールが減り、善玉のHDLコレステロールが増える。骨が丈夫になり骨粗鬆症の予防につながり、がんの発症リスクも下げられる。運動はストレス解消に役立ち、夜はよく眠れるようになる。 運動を行うと、酸素を体内に取り入れられ、脳の血液量が増える。認知症を予防するためにも、運動は効果的だ。 長時間座ったまま過ごすことが健康に悪影響をもたらす。職場や家などで座ったままの時間が長引いたときは、立ち上がって周囲を歩いてみよう。運動は、どんな薬よりも費用対効果の優れる治療法になる。 1日30分のウォーキングなどの運動を週に5日以上続けて、週に合計150分行うのが目標。1回10分の運動を3回に分けて行っても効果がある。 |
(6) 健康的な体重を維持する
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肥満を抑制し、標準体重を維持することが大切だ。肥満は体にとって異常な状態で、とくに内臓脂肪が一定以上にたまった内臓脂肪型肥満は、2型糖尿病や高血圧のリスクも高める。 肥満に脂質異常や、高血圧、高血糖などが重なると、血管にさらに障害が起きやすくなり、血流が悪くなり、血液が固まりやすい状態になり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる。 肥満の人は体重を減しただけでも、これらの検査値が改善することが多い。3~6ヵ月かけて現在の体重を3%減らすだけでも、さまざまな検査値が改善する。 1日の食事で必要なカロリーを確かめて、それを超えて食べ過ぎないようにし、ウォーキングなどの運動を続ければ、体重を減らすことができる。食べ過ぎを防ぐには、体重を朝晩はかることが効果的だ。 体重が大きく変化した場合は、食生活に何か問題点がないか、点検をして改善しよう。 |
(7) タバコを吸わない
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タバコに含まれるニコチン・タール、一酸化炭素には血管を収縮させる作用がある。タバコを吸う人は禁煙をするだけで、心臓病や脳卒中、がんや、慢性肺疾患、呼吸器疾患、認知症などの発症リスクを減少できる。 タバコを吸う人はいますぐ禁煙しよう。そうすれば、数年で心臓病や脳卒中の発症リスクを、非喫煙者と同程度に下げることができる。 火を使わない電子タバコなども、健康への悪影響が少ないことが医学的に証明されているわけではないので、注意が必要だ。 |
Life's Simple 7 (米国心臓学会)
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]
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- 野菜摂取量の平均値は、256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。野菜摂取量は有意に減少 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」結果より
- 糖尿病が強く疑われる人は、男性16.8%、女性8.9% 令和5年(2023) 「国民健康・栄養調査」の結果より
- 肥満の人は、男性31.5%、女性21.1%。やせの人は、男性4.4%、女性12.0%(20歳代女性20.2%) 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
- 特定健診(40~74歳)受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%(男性13.3%、女性3.2%)、予備群該当者は、12.3%(男性 9.7%、女性2.6%) 令和4年(2022)「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」の結果より
- メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、男性 4.3%、女性11.3%。予備群の人は、男性 4.3%、女性11.3% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」の結果より