「超加工食品」の食べ過ぎでがんリスクが上昇 不健康な食事は肥満・メタボの原因にも

 「超加工食品」を食べ過ぎている男性は、ほとんど食べない男性に比べ、大腸がんを発症するリスクが29%高いという研究結果を、米国のタフツ大学健康科学部などが発表した。

 「とくに動物性食品を含む超加工食品を食べ過ぎると、腸内細菌叢が変化し腸内環境が悪くなり、体内の炎症が促進されることが、がんの発症リスクを上昇させる一因となっている可能性があります」としている。

「超加工食品」を食べ過ぎている男性は大腸がんリスクが高い

 「超加工食品」を大量に食べている男性は、ほとんど食べない男性に比べ、大腸(結腸・直腸)がんを発症するリスクが29%高いことが、米国のタフツ大学とハーバード大学の研究で明らかになった。

 「大腸がんは、他の部位のがんに比べても、食事の影響を受けやすい可能性があります」と、タフツ大学栄養科学政策部のルー ワン氏は言う。

 「超加工食品は、しばしば食事の栄養の質の悪さと関連していますが、がんの発症リスクには、栄養の質の悪さ以外の要因が影響している可能性があります」としている。

 調査では、ソーセージ・ベーコン・ハムなどの加工肉を使った超加工食品をよく食べている人で、大腸がんのリスクがとくに高いことが示された。

 こうした動物性食品を食べ過ぎることで、腸内細菌叢が変化し腸内環境が悪くなり、体内の炎症が促進されるおそれがある。また、超加工食品に含まれる食品添加物や、熱処理によりできる物質なども潜在的に、がん発症を促進している可能性も考えられる。

超加工食品の多くは高カロリーで脂肪と塩分が多い

 米国糖尿病学会(ADA)によると、超加工食品とは「糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。硬化油・添加糖・香味料・乳化剤・保存料など添加物を加え、工業的な過程を経て作られる、常温で保存できたり、日持ちを良くしてある食品」のことだ。

 ▼清涼飲料や炭酸飲料、▼ポテトチップスなどのスナック菓子、▼菓子パン・総菜パン、▼カップ麺などのインスタント食品、▼ピザ・ホットドッグ、▼ケーキ・クッキー・ビスケット・パイ、▼ミルクシェイク・カスタード、▼ドーナツ・マフィン、▼アイスクリーム、▼ミートボール・チキンナゲットなどが超加工食品だ。

 超加工食品の多くは高カロリーで、脂肪と塩分が多く含まれ、良質なタンパク質や食物繊維は少ない。超加工食品の過剰摂取により、高血圧・糖尿病・肥満などのリスクが上昇するという研究も発表されている。

加工肉を多く食べ過ぎると大腸がんリスクはさらに上昇

 研究グループは、25年以上にわたり実施されている3件の大規模な前向き研究に参加した、合計20万人超(男性 4万6,341人、女性 15万9,907人)を対象に、食事摂取量や約130種類の食物の摂取頻度について評価する調査を4年ごとに行った。

 24~28年間の追跡期間中に、男性 1,294人、女性 1,922人が大腸がんを発症した。解析した結果、男性では超加工食品をもっとも多く食べているグループは、ほとんど食べないグループに比べ、大腸がんを発症するリスクが29%高かった。

 とくに、ソーセージ・ベーコン・ハムなどの加工肉を使った超加工食品をよく食べているグループで、大腸がんのリスクは44%高かった。

 高カロリーの清涼飲料や炭酸飲料、ミルクベースの甘い飲料などを多く飲んでいるグループでも、大腸がんのリスクは21%上昇した。

 一方、女性では超加工食品の摂取量と大腸がんのリスクとのあいだに関連はみられなかった。

ヨーグルトなどの発酵食品は大腸がんリスクを減らす

 「ただし、すべての加工食品が有害というわけではないことに注意をする必要があります」と、タフツ大学栄養疫学部のファン ファン チャン氏は言う。

 「ヨーグルトやチーズなどの乳製品については、とくに女性で大腸がんのリスクとの間に逆相関がみられることも分かりました」としている。

 ヨーグルトなどの乳製品をよく食べている女性は、大腸がんの発症リスクが17%減少した。さらに、女性では男性よりも食事スタイルが健康的である傾向もみられた。

 「ヨーグルトなどの発酵食品には、腸内細菌を増やし腸内環境を改善する効果がみられます。こうしたことが、超加工食品を食べたときに及ぼされる有害な影響を潜在的に打ち消している可能性があります」と付け加えている。

納豆など「発酵性大豆食品」も死亡リスクを低下

 日本でも、大豆を発酵させて作った納豆・味噌などの「発酵性大豆食品」は食べていると、心筋梗塞などの循環器疾患による死亡リスクが低下するという研究が発表されている。

 日本人を対象とした調査で、発酵性大豆食品のなかでも納豆の摂取量が多いと、男女ともに循環器疾患による死亡リスクはとくに低下することが示された。

 納豆などの発酵性⼤⾖⾷品を1⽇におよそ50g食べている人では、ほとんど食べない人に比べ、死亡リスクは約10%減少した。50gは納⾖1パック程度だ。

 「西洋型食事スタイルは、動物性の脂肪を多く摂り、食物繊維が少ないという特徴があります。食物繊維が不足した食事は、腸内細菌叢の健康が悪くなる原因となります」と、チャン氏は指摘している。

 「とくに動物性食品を含む超加工食品を食べ過ぎると、腸内細菌叢が変化し腸内環境が悪くなり、体内の炎症が促進されることが、がんの発症リスクを上昇させる一因となっている可能性があります」としている。

New Study Links Ultra-Processed Foods and Colorectal Cancer in Men (タフツ大学健康科学部 2022年8月31日)
Association of ultra-processed food consumption with colorectal cancer risk among men and women: results from three prospective US cohort studies (BMJ 2022年8月31日)
Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study (BMJ 2020年1月29日)