夏野菜「トマト」が肥満とメタボのリスクを低下 リコピンやβカロテンで血管を健康に
2021年07月16日
夏野菜の代表といえるトマトは、生で食べても加熱調理してもおいしく食べられる。トマトは低カロリーであるのに加え、ビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化作用のあるリコピンやβカロテンが多く含まれ、中性脂肪やコレステロールを下げる効果を期待できる。
トマトは医師が食べている食品のトップ
欧州には「トマトが赤くなると医者が青くなる」という諺がある通り、トマトには抗酸化作用のあるβカロテンやリコピン、ビタミンCなどの栄養素が多く含まれ、健康的な食品として知られている。
ある医療サイトが医師を対象に行ったアンケート調査によると、医師が「健康のため積極的に食べている食品」の1位はトマト、2位はヨーグルト、3位は納豆だった。
日本では生で食べることが多いが、世界にはうま味成分であるグルタミン酸を含むトマトをダシとしても使う料理も多い。イタリアやギリシャでは火を通してソースにして食べることが多く、長寿食として知られる「地中海式ダイエット」でもトマトが多く使われている。
トマトソースは野菜や魚、パスタや肉とも相性が良く、メニューの幅が広がる便利なソース。イタリア・シチリア地方の家庭料理では、野菜を炒めてトマトでじっくり煮込んだ前菜「カポナータ」が定番になっている。
できたてをすぐに食べてもおいしいが、冷めた状態でも野菜に味がしっかりしみこんでいるので、格別のおいしさを楽しめる。
トマトには抗酸化作用のある栄養が豊富に含まれる
トマトは野菜の中では糖度が高く、ビタミンA、C、Kを含んでいる。また、トマトの赤い色素であるリコピン(カロテノイド)に抗酸化作用があり、生活習慣病の改善を促すとして注目をあびている。このリコピンは老化や生活習慣病の原因となる活性酸素を取り除く働きをする。
リコピンの抗酸化作用は、ニンジンやカボチャ、ブロッコリーなどに含まれるβカロテンよりも作用が強いという報告がある。リコピンは比較的熱に強いので、ソースにすると体内への吸収がアップする。
また、トマトをはじめとする野菜にはカリウムが多く含まれる。カリウムは体内の余分なナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる効果があり、高血圧の予防に役立つ。
■ 2型糖尿病、心臓病、脳卒中の予防・改善
トマトを毎日食べると、コレステロールや中性脂肪の値が改善するという研究が発表されている。リコピン、ビタミンC、フラボノイドなどの抗酸化作用が、2型糖尿病、心臓病、脳卒中の予防・改善に役立つことも報告されている。
悪玉のLDLコレステロールが活性酸素などによって酸化すると、酸化LDLになる。酸化LDLは超悪玉コレステロールともいうべきもので、血管壁を傷つけ、コレステロールの蓄積を促し、血管にプラークができやすくなり、動脈硬化を促進する。トマトを食べることで、酸化LDLを減らせるという研究も発表されている。
ニュージーランドのオタゴ大学の研究によると、2型糖尿病の人がトマトジュースを毎日500mL飲むと、血中のリコピンのレベルが3倍に上昇し、酸化LDLのレベルが低下した。また、イスラエルのベングリオン ネゲブ大学の研究では、高血圧の人がトマトを食べると血圧が低下した。
■ 慢性炎症を抑える
2型糖尿病や肥満などの代謝性疾患や、動脈硬化や心臓病などの循環器疾患に共通する病態が「慢性炎症」。炎症があると、心臓病や脳卒中、心房細動などのリスクが上昇する。年齢を重ねるにつれ炎症は少しずつ進行するが、とくに内臓脂肪がたまると慢性炎症が起こりやすくなる。
トマトを食べることで炎症を抑えられ、とくに肥満や過体重の人で改善効果が高いという研究が発表されている。イランのテヘラン大学の研究では、肥満や過体重の女性がトマトジュースを毎日330mL飲むことで、血中の炎症マーカーが低下することが示された。
また、アイルランドのクイーンズ大学の研究によると、トマトのリコピンを摂取することで、善玉のHDLコレステロールの働きを高めるのに必要な酵素が増えていた。
■ 脳卒中や心不全のリスクが低下
トマトに含まれるリコピンは、脳卒中のリスクも低減する。フィンランドの46~65歳の男性を12年追跡した研究で、トマトからのリコピンの摂取量が多い男性では、少ない男性に比べ、脳卒中のリスクが最大で55%低下した。
トマトに含まれるリコピンが、心不全患者の生存率を向上させるという報告も発表されている。米国のケンタッキー大学が心不全患者を対象に行った研究で、トマトのリコピン摂取量が多いほど生存率が向上することが明らかになった。
■ がんのリスクが低下
リコピンを多く含むトマトには、前立腺がんや乳がんなど、がんのリスクを軽減するという研究も発表されている。リコピンががん細胞の成長を遅らせたり、がん細胞死を誘発している可能性が指摘されている。
トマトをオリーブオイルで調理すると健康効果が高まる
ソースにすると多く食べられる
オリーブオイルには一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が豊富に含まれ、コレステロール値を下げる効果がある。オリーブオイルとトマトのリコピンを同時に摂取すると、相乗的に効果を発揮しコレステロール値が下がりやすくなり、リコピンの体への吸収も高まると考えられている。
「地中海式ダイエット」は、野菜や魚をたくさんとり、オリーブオイルをふんだんに使うのが特徴だ。「地中海式ダイエット」が伝統になっている地域で心筋梗塞などの心血管疾患を発症する人が少ないのは、トマトとオリーブオイルを十分に摂取しているからだ。
健康増進の効果を得られるトマトの摂取量は1日に250~500g(2~3個)だ。「トマトは火を通してソースにすると多く摂取できます。トマトを毎日摂ることを習慣とすることをお勧めします」と、研究者は述べている。
Dietary flavonoids intake and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective cohort studies(Clinical Nutrition 2013年3月26日)Dietary Flavonoid and Lignan Intake and Mortality in Prospective Cohort Studies: Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis(American Journal of Epidemiology 2017年6月15日)
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Tomato juice consumption reduces systemic inflammation in overweight and obese females(British Journal of Nutrition 2013年6月)
Lycopene intervention reduces inflammation and improves HDL functionality in moderately overweight middle-aged individuals(Journal of Nutritional Biochemistry 2013年1月)
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Serum lycopene decreases the risk of stroke in men: A population-based follow-up study(Neurology 2012年10月)
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Processed and raw tomato consumption and risk of prostate cancer: a systematic review and dose-response meta-analysis(Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2018年1月9日)
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