肥満やメタボに対策し「フレイル」を予防 心身の活力低下を防ぐ3つの条件とは

 肥満やメタボに対策することで、フレイルを予防できる可能性がある。
 「適正体重を維持する、運動をする、たばこを吸わない――こうした生活スタイルを維持することで、フレイルのリスクを劇的に減らすことができます。逆に、運動不足で喫煙をしている人はフレイルのリスクが高いことを自覚するべきです」と、研究者は述べている。
フレイルをいかに防ぐかが課題
 肥満を解消し、運動を習慣として行い座位時間を減らし、禁煙の成功率を向上する介入により、フレイルのリスクを減少できる可能性があるという研究を英国のデ モントフォート大学が発表した。

 フレイルは、加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、いくつかの慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身が脆弱になった状態。多くの高齢者は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられている。

 しかし、適切な介入・支援により、生活機能は向上できると考えられている。フレイルをいかに防ぐかという研究が世界中で行われている。
運動不足で喫煙している高齢者はフレイルの可能性が高い
 研究チームは、「英国加齢縦断研究(ELSA)」に参加した50歳以上の男女を対象に、健康状態、障害の程度、認知機能、聴力、視力、うつ症状、日常動作などから56項目からなるフレイルインデックスを作成し、8,780人を12年間追跡した調査データから、フレイルの発症について線形回帰モデルを用いて解析した。

 その結果、65歳以上の高齢者の約10%がフレイルであることが分かった。さらに、加齢はフレイルのもっとも大きい危険因子だが、肥満と喫煙習慣がそれを増強することも明らかになった。

 67歳の時点で、座りきりの生活をしており運動不足が日常化しており、喫煙習慣のある人は、79歳を過ぎるとフレイルになる可能性が59%に達する。反対に、運動をする習慣をもち、喫煙しない人は、フレイルの可能性を22%に抑えられることも示された。
肥満はフレイルの大きな危険因子
 英国のユニヴァーシティ カレッジ ロンドンが6,000人の中年成人を対象とした調査でも、肥満はフレイルの大きな危険因子であることが示されてている。フレイルになるリスクは、標準体重の人では2.7%だが、肥満の人では7.9%に上昇する。

 また、運動不足もフレイルの危険因子だ。座ったままの時間の長い生活をしている人のフレイルになるリスクは6.2%。活発に体を動かしている人のリスクが2.5~3.5%であるのに対し大幅に高い。

 さらに、喫煙習慣のある人のフレイルのリスクは5.4%で、喫煙しない人の3.5%より高い。

 そのほか、加齢にともない起こりやすい慢性炎症もフレイルの危険因子だ。炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)の値が高かったり、体の炎症反応を示すC反応性タンパク(CRP)の値が高いと、フレイルになる可能性は高まる。
生活改善でフレイルのリスクを劇的に減少
 ウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、肥満を予防できる。運動や身体活動は骨量と筋肉機能を改善し、転倒の危険性を低下させる。高齢者の転倒は介護や寝たきりの原因になる。また、健康的な食事を摂り、必要な栄養素を十分に摂取していれば、変形性関節症などの関節炎のリスクが低下する。

 また、喫煙は動脈硬化を促進し、心臓病や脳卒中、肺がんなど、さまざまな致命的な病気の原因になり、「死の連鎖」を引き起こす。

 「肥満のある人は体重を減らし、もっと体を活発に動かすようにし、たばこを吸うのを止め、生活スタイルを改善すれば、フレイルのリスクを劇的に減らすことができます。しかし、運動不足で、喫煙習慣のある人は、フレイルのリスクは2倍に上昇します」と、デ・モントフォート大学健康・ヘルスサイエンス学部のニルス ニーダーシュトラッサー氏は述べている。

Study suggests interventions against frailty(PLOS 2019年10月30日)
Determinants of frailty development and progression using a multidimensional frailty index: Evidence from the English Longitudinal Study of Ageing(PLOS ONE 2019年10月30日)
Uncovering clues to a healthy retirement - and it's not all lifestyle(ニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2018年6月28日)
Midlife contributors to socioeconomic differences in frailty during later life: a prospective cohort study(Lancet Public Health 2018年7月1日)