野菜や果物、魚の摂取量が少なく、食塩が多いと、死亡リスクは3倍に上昇

 滋賀医科大学は、食事と脳卒中や心臓病といった循環器疾患による死亡リスクとの関連を分析したチャートをはじめて作成したと発表した。
 野菜や果物、魚介類の摂取量が推奨量より少なく、食塩が多い場合、死亡リスクは約3倍に高まるという。
食事の組み合わせで循環器疾患リスクを判定
 滋賀医科大学の研究グループが開発した、食事因子による循環器疾患死亡リスク評価チャートは、厚生労働省研究班の「NIPPON DATA」研究の成果をもとにしたもの。詳細は、日本循環器学会の学会誌「Circulation Journal」電子版に公開された。

 これまでの報告は、単一の食品群・栄養素を用いた検討がほとんどだが、日本人は通常、単一の食品群を摂取することはなく、複数の食品群を組み合わせて摂取している。また、「健康日本21」や「日本人の食事摂取基準」などでは、1日摂取量として野菜350g、果物200g、魚80g、食塩は男性8g未満、女性7g未満をそれぞれ推奨しているが、達成できている日本人は多くない。

 多くの疫学研究により、野菜、果物、魚および食塩摂取量と循環器疾患リスクとの関連が明らかになっているが、食事因子の組み合わせによる循環器疾患リスクとの関連からリスク評価チャートの図示を行った報告は今回がはじめてだ。

 「NIPPON DATA(ニッポンデータ)80」は、国民健康・栄養調査の参加者を対象とした長期追跡研究NIPPON DATA研究は現在、厚生労働行政推進調査事業費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)の指定研究として実施されている(研究代表者:三浦克之・滋賀医科大学教授)。
日本人9,115人を29年間追跡して調査
 研究グループは、1980年の国民・栄養調査に全国から参加した30~79歳の男女9,115人(男性4,002人、女性5,113人、平均年齢50.0歳)を29年間追跡したデータを用いて分析。野菜、果物、魚、食塩の1日摂取量を評価し、それぞれの推奨量に対する過不足により、複数のカテゴリーに分類し、追跡期間中の循環器疾患(脳卒中および心臓病)による死亡リスクとの関連を分析した。

 栄養調査の結果から、野菜、果物、魚、食塩の1日摂取量を評価し、それぞれ350g、200g、80g、8g(女性は7g)を基準としたカットオフ値を作成し、複数のカテゴリーに分類した。そして、食事因子カテゴリーによる循環器疾患死亡リスクについて分析を行った。さらに、食事因子の組み合わせによる循環器疾患死亡リスクを試算し、循環器疾患死亡リスク評価チャートとして図示した。

 その結果、29年間で1,070人が循環器疾患により死亡した。野菜、果物および魚摂取量が少ないほどまた、食塩摂取量が多いほど、循環器疾患死亡リスクは高いことが明らかになった。
食事因子による循環器疾患死亡リスク評価チャートを作成
 食事因子の組み合わせによる循環器疾患死亡リスク(ハザード比)を作成したところ、野菜175g未満、果物100g未満、魚40g未満と摂取量がもっとも少なく、食塩摂取量が基準以上の場合、参照カテゴリー(野菜350g以上、果物200g以上、魚80g以上と摂取量がもっとも多く、食塩摂取量が基準未満の場合)と比較して、循環器疾患死亡リスクは2.87倍に上昇した。

 なお、国民・栄養調査は秤量法(参加者が食品の重量を秤で量って記録する)という精度の高い方法で食事調査が行われたという。

 研究グループはリスク評価チャートについて、「野菜、果物、魚、食塩の望ましい量を摂取するために、個人が食事を見直し、食習慣の改善の動機付けにすることができる。栄養指導や保健指導の現場では、専門家が食事の改善を指導する際のツールとして活用できる」と述べている。

滋賀医科大学 アジア疫学研究センター
NIPPON DATA(ニッポンデータ) 80/90
Cardiovascular risk assessment chart by dietary factors in Japan: NIPPON DATA80(Circulation Journal 2019年4月19日)