心・脳血管疾患に注意 3人に1人が「発症前に知っていたら」と後悔

 糖尿病患者の多くが「心・脳血管疾患」が糖尿病の合併症であることを認知していないことが、ノボ ノルディスクファーマの調査で明らかになった。発症後に4人に3人の患者が「もし知っていたら、対策を行いたかった」と回答した。
糖尿病は「サイレント・キラー」
 9月29日は世界心臓連合(WHF)が定める「世界ハートの日」だった。心筋梗塞や脳卒中などの心・脳血管疾患を予防するために、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などを治療する必要性について世界に呼びかけられた。

 ノボ ノルディスクファーマは「世界ハートの日」にちなみ、2型糖尿病患者と近親者を対象に、2型糖尿病と心・脳血管疾患リスクとの関係性などについての意識調査を行った。対象となったのは、過去に心・脳血管疾患を発症した経験のある60歳代以上の2型糖尿病患者男女104人、および2型糖尿病で心・脳血管疾患を発症した経験のある患者が近親者にいる30~50歳代の男女106人。

 2型糖尿病は進行する疾患で、早期の段階には明確な自覚症状は乏しい。しかし、症状に気付く頃には、糖尿病の合併症である細小血管障害をすでに発症していることが多く、「サイレント・キラー」とも呼ばれる。
「心・脳血管疾患」は糖尿病の合併症
 心筋梗塞などの「心疾患」に、脳卒中・脳出血などの「脳血管疾患」を合わせた「心・脳血管疾患」は、がんに次いで日本人の死因の第2位となっている。これらの疾患は突然死をまねいたり、深刻な後遺症が残ったりする場合もあり、個人的にも社会的にも負担が大きい。

 また、高齢化に伴い脳卒中と循環器病による死亡数が増加し、75歳以上の後期高齢者ではこれらの疾患による死亡数が、がんによる死亡数を上回っている。

 糖尿病がある人では、糖尿病でない人に比べ、心・脳血管疾患の発症リスクが高くなる。日本で実施されているコホート研究「JPHC研究」よると、糖尿病のある人が心・脳血管疾患により死亡するリスクは、糖尿病でない人の1.8倍から2.5倍に上昇する。

 これらの疾患は、血糖値や血圧値を適正にコントロールし、脂質異常症の治療をしていれば、防げたはずのものだ。血糖コントロールの重要さがあらためて示されている。
糖尿病の合併症に気を配るべきだったと後悔
 調査では、心・脳血管疾患を発症した2型糖尿病患者の多くが、発症前には糖尿病の合併症について認識していなかったことが明らかになった。糖尿病合併症のうち糖尿病患者が認知していなかった疾患は、多い順に「狭心症」(43%)、「白内障」(41%)、「心筋梗塞」(39%)、「虚血性心不全」(32%)、「脳梗塞」(31%)だった。

 また、いわゆる三大合併症である「糖尿病性網膜症」「腎症」「神経障害」を糖尿病の合併症だと知らなかった割合は、それぞれ18%、24%、27%だった。

 心・脳血管疾患を発症した時の気持ちを聞いたところ、「2型糖尿病の合併症にもっと気を配るべきだったと後悔した」(33%)や、「経済的な負担を心配した」(31%)という回答が多かった。

 また、糖尿病や心血管疾患について現在、不安に思っていることを尋ねたところ、「糖尿病の進行」(62%)、「心血管疾患の再発」(60%)、「心血管疾患による後遺症による日常生活の不便」(39%)、「経済的負担」(37%)が上位に挙げられた。
患者の4人に3人が「何らかの対策を行いたかった」と実感
 2型糖尿病が心・脳血管疾患の死亡リスクを約2倍高めることを認識していなかった患者に、もし知っていたら、心・脳血管疾患の発症前に何をしておきたかったかを聞いた質問では、「食生活の改善」「日々の運動」「禁煙」「早めに専門医の治療を受ける」「2型糖尿病の合併症について調べる・学ぶ」など、76%の患者が「何らかの対策を行いたかった」と回答した。

 心・脳血管疾患の危険性について知っている患者に、発症・再発予防のために行っていることを尋ねたところ、行っている対策は「心血管疾患リスクを高めないための薬を服用」(80%)がもっとも多く、次に「食生活に注意している」(75%)、「禁煙している」(51%)が続いた。また、患者の65%は、「突然死・発作リスクを低減する治療法・治療薬」を使いたいと回答した。

 「今回の調査によって、2型糖尿病患者やご家族が発症してしまうかもしれない糖尿病の合併症についての認識が十分でないことが分かりました。また、心・脳血管疾患を発症した方々が、再発や後遺症、また経済的な負担の可能性について不安を抱いていることも示されました」と、ノボ ノルディスクファーマのオーレ ムルスコウ ベック氏は述べている。

ノボ ノルディスクファーマ
Diagnosed diabetes and premature death among middle-aged Japanese: results from a large-scale population-based cohort study in Japan (JPHC study)(BMJ Open 2015年5月)