高リスク糖尿病の二次予防はLDL-C70未満 動脈硬化性疾患予防GL改訂

 日本動脈硬化学会の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』が改訂された。脂質異常症の診断基準項目に、新たにNon-HDLコレステロール血症が追加されたほか、二次予防のLDLコレステロール管理目標として従来の100mg/dLよりさらに厳格な70mg/dL未満を考慮すべき病態が示された。糖尿病にCKDあるいはメタボリックシンドロームなどを併発している場合もこれに該当する。

 日本動脈硬化学会は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』を5年ごとに改訂していて、6月30日にその「2017年版」を発行するとともに、都内でプレスセミナーを開催し改訂した箇所やその背景を解説した。2012年版からの主な改訂点は以下のとおり。

診断基準に「境界域高Non-HDLコレステロール血症」「高Non-HDLコレステロール血症」


動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版

 脂質異常症の診断基準にNon-HDLコレステロール(Non-HDL-C)の高値状態が追加された。Non-HDL-C(総コレステロール-HDLコレステロールの値)が150~169mg/dLの場合は「境界域高Non-HDL-C血症」、170mg/dL以上の場合は「高Non-HDL-C血症」と診断され、高LDL-C血症や低HDL-C血症などと同様に、リスク評価対象になる。

 境界域の脂質異常症としては2012年版で既に「境界域高LDL-C血症」(LDL-C120~139mg/dL)が定義づけられており、今回これに境界域高Non-HDL-C血症が追加された。これら境界域の異常の場合、他のリスクファクターを勘案し介入の必要性を考慮することになる。

 なお、高LDL-C、低HDL-C血症、高TG血症の診断基準値は変更ない。

リスク評価に吹田スコアを採用。Webアプリも公開

 スクリーニングで脂質異常症と診断した後、患者個々のリスクを評価して管理目標を設定するという流れは従来どおり。糖尿病(耐糖能異常は含まない)、CKD、非心原性脳梗塞、PADがあれば「高リスク」に該当し、一次予防としては最も厳格な管理目標を目指すことになる。冠動脈疾患の既往があれば二次予防のためさらに厳格な管理目標を目指す。

 上記に該当しない場合のリスク評価のツールとして、2012年版では「NIPPON DATA80」に基づく10年以内の冠動脈疾患死の確率を用いていたが、今回これを「吹田スコア」に基づく10年以内の冠動脈疾患発症率に変更した。

 吹田スコアは、年齢、性、喫煙、血圧、HDL-C、LDL-C、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴の各スコアを合計するもので、10年以内の冠動脈疾患発症率が2%未満であれば「低リスク」、2~9%未満は「中リスク」、9%以上は「高リスク」と判定する。吹田スコアを簡便に計算できるWebアプリも公開している。

冠動脈疾患発症予測アプリWeb版

http://www.j-athero.org/publications/gl2017_app.html

 なお、吹田スコアによらずリスク因子の数をカウントして評価する簡易版も作成されている。それによる場合、喫煙、高血圧、低HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴をうち該当するものの数と、性、年齢によりリスクを評価する。

 吹田スコアを用いた場合と簡易版を用いた場合とで、リスク評価の結果はほぼ同じカテゴリーになるという。

高リスク病態の二次予防ではLDL-C70mg/dL未満、Non-HDL-C100mg/dL未満も考慮

 冠動脈疾患二次予防のLDL-C管理目標として、従来の100mg/dL未満に加え、括弧書きながら「70mg/dL未満」という値も加えられた。同時に、これと同じカテゴリー(対象)には「Non-HDL-C100mg/dL未満」という管理目標も掲げられた。

 LDL-C70mg/dL未満、Non-HDL-C100mg/dL未満を考慮する病態として、家族性高コレステロール血症と急性冠症候群のほか、「糖尿病で他の高リスク病態を合併する時」が挙げられている。糖尿病で考慮すべき高リスク病態とは、喫煙、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)、末梢動脈疾患(PAD)、非心原性脳梗塞、主要危険因子の重複。

 なお、一次予防の各カテゴリーの管理目標値は変更ない。

CQ・SRを導入

 ガイドライン全体は今回からMinds(Medical Information Network Distribution Service)の手法に基づきクリニカルクエスチョン(CQ)形式を取り入れ、システマチックレビュー(SR)によってステートメントを掲げる仕組みになった。

 このほか、家族性高コレステロール血症に関する記述が拡充された。