日本の喫煙対策は「最低レベル」 たばこを断つために必要な知識
2017年02月17日
全国生活習慣病予防月間 2017 市民公開講演会
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、たばこ対策が課題になっている。日本の「喫煙対策」をリードしている村松弘康・中央内科クリニック院長が、禁煙の重要さについて講演した。日本の喫煙対策は現状では、世界で「最低レベル」だという。
日本の喫煙対策は「最低レベル」
たばこの害は科学的に疑う余地がない
受動喫煙が原因で年間1万5,000人が死亡
たばことの因果関係が確実とされている病気は、主なものでも脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患、歯周病、さまざまな部位のがんなどがある。妊婦の喫煙と乳幼児突然死との関連も深い。
特に肺がんについては深刻で、喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんで死亡するリスクが男性で4.5倍、女性で2.3倍に高まる。また、男性の場合、喉頭がんで死亡するリスクは喫煙しない人に比べて32.5倍に上昇する。
たばこを吸うことで、血液をドロドロにする血中成分の増加や、善玉のHDLコレステロールの減少により動脈硬化が促進される。喫煙は血管内プラークの形成も促す。男性では喫煙により虚血性心疾患のリスクは約3倍に高まり、喫煙本数が増えるほどリスクが増加する。
喫煙はCOPD(肺気腫、慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器系の疾患も引き起こす。COPDが進行すると、ひどい息切れによって生活が不自由になり、酸素療法が必要になる。
さらに、受動喫煙と病気の因果関係についても近年の研究で明らかになっている。国立がん研究センターが、受動喫煙だけでも肺がんのリスクが増えることが確実になったと発表した。日本では受動喫煙が原因で年間1万5,000人が死亡しているという。
何度も失敗した禁煙を今度こそ成功させる
これらの健康障害を予防するために求められているのは「禁煙」だ。しかし、禁煙しようと思っても、自分ひとりではなかなかやめられない、という人も多い。
現在は喫煙をやめられない人は医療機関で禁煙治療を受けることができる。たばこをやめると、まず血圧値や呼気中の一酸化炭素濃度などが回復しはじめる。数ヵ月後には心臓や肺機能も改善する。禁煙10年後には肺がんによる死亡率が喫煙者のおよそ半分になり、15年後には冠動脈疾患のリスクが、たばこを吸わなかった人のレベルまで近づく。
「ニコチン依存症」は、血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう疾患だ。たばこを吸うと、ニコチンが急速に肺から吸収され数秒で脳内に達し、脳内で働く神経伝達物質の代わりに刺激を与え、快感を与える。これを繰り返すうちに、ニコチンがないとイライラや落ち着かないなどのニコチン切れ症状(禁断症状)があらわれるようになる。
「たばこをやめられないのは"意志"が弱いからではなくて、ニコチン依存症のためです。自力で禁煙するより、禁煙補助薬などを使った治療を受ける方が成功率が3~4倍も高いとされています。ぜひ禁煙外来などを受診してほしい」と、村松氏は言う。
電子たばこにも害がある 完全な禁煙が望ましい
たばこ対策において急浮上しているもうひとつの問題は、「アイコス」「プルームテック」などの、いわゆる加熱式の電子たばこが世界に先駆けて日本で発売され、急速に市場を拡大させていることだ。たばこ会社などは「有害物質が大幅に削減され、においもほとんどない。健康障害も少ない」として販促活動を行っているが、これには誤解がある。
加熱式たばこの多くはニコチン摂取量が不明で、吸い続けると「ニコチン依存症」がさらに進行してしまうおそれがある。また、加熱式たばこの多くはたばこ葉を用いており、主流煙中に発がん物質が検出されており、受動喫煙による健康被害も懸念される。
「電子たばこは決して安全と言えるものではなく、少なくとも公共の場所で例外として使用できるものではありません。望ましいのは完全な禁煙です」と、村松氏は指摘している。
全国生活習慣病予防月間2017(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会)一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
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