地震時も血圧コントロールが重要 「災害高血圧」に対策 高血圧学会
2016年04月22日
日本高血圧学会は熊本地震への対応として、日本心臓病学会、日本循環器学会との3学会合同で作成した「2014年版 災害時循環器疾患の予防と管理に関するガイドライン」を公式サイトで改めて提示し、注意を呼びかけている。循環器疾患を予防するために、災害発生時の血圧コントロールが重要であることを強調し、循環器疾患を簡便に評価するスコアなども提示している。
不眠やストレスによって血圧値が上昇する「災害高血圧」
大きな災害が発生すると、直後には「たこつぼ型心筋症」「急性心筋梗塞」「脳卒中」「突然死」、数日後以降には「深部静脈血栓症」や「肺塞栓症」などの「エコノミークラス症候群」が起こりやすくなり、ときには命に関わる。恐怖を思い出すことによる「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患や、「抑うつ状態」も、循環器膝下のリスクを増加させる。
こうした深刻な循環器疾患は「血圧の上昇」と「血栓ができやすくなること」が引き金となって発生する。これらに対策することが、災害時にこそ求められる。
災害の大きなストレスやさまざまな環境変化により、「眠れない」「生活のリズムやパターンが崩れる」「日常と異なる食生活」などが続くと、血圧に変動に乱れが出て上昇しやすくなる。
また、住み慣れた家を離れざるをえず、避難所などで生活をおくる場合、日頃行っている仕事や家事などの動作を行えず、体を動かすのが難しくなりがちだ。こうした身体活動の低下に加え、寒さ、脱水、感染症などによって血栓ができやすくなる。
日本心臓病学会によると、不眠や脱水、精神的ストレスによって血圧値が上昇する「災害高血圧」は、被災直後から起こり、発災後2~4週間で収縮期血圧(最高血圧)が平均5~25mmHg上昇する。震災前には130mmHg程度と良好な血圧コントロール状態にあった高血圧患者が、震災後には200mmHg以上になる場合もあるという。
災害時こそ適切な血圧コントロールが望まれる
高血圧治療や脳卒中の発症予防などのための降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬などの薬を飲んでいた患者が服用を止めるのは危険だ。在外時に常備薬を持ち出せなかったり、ふだん飲んでいた薬が分からなくなった場合は医療機関が適切に対応することが望ましい。
災害発生時の循環器疾患のリスクを評価するには、「DCAP(Disaster CArdiovascular Prevention )7リスクスコア」を用いる。各項目を1点とし、4点以上ならハイリスク群と判定する。
本来の血圧の変化、神経の働きなどを保つ体内時計リズム(サーガディアンリズム)を取り戻すために、日中はなるべく体を動かすことが必要だ。横になったままや座ったままの状態をできるだけ避けて、積極的に活動するよう心がけるアドバイスすることが大切。ウォーキングによって脚の筋肉を動かすと、下半身で滞りやすい血液の流れが改善し血栓ができにくくなる。 ・ 夜間は少しでも睡眠の質と量を高めよう
災害時こそ睡眠は重要だ。睡眠中には血圧を上昇させる「交感神経」の働きが低下し「副交感神経」が働く。このため、夜間には6時間以上の良質な睡眠を確保することが重要となる。日中には体を動かすことに加え、避難所では夜間消灯、プライバシーの確保を心がけることが、睡眠の質と量の向上につながる。 ・ 塩分の摂取を減らそう
災害時には「食塩感受性」が高くなり、同じ量の食塩を摂取しても、体内に食塩が蓄積し血圧が上昇しやすくなる。国立健康・栄養研究所は、肉、魚、野菜、果物などが不足しないようにできる限り留意するよう注意を呼びかけている。 ・ 水分をしっかりとろう
血栓を予防するためにも、夜間尿が増えても水分をしっかりとる必要がある。食事にも水分が含まれているので、食事の量が減ると、水分量も不足して脱水が起こりやすくなる。食事時には、コップ1杯の水を忘れずにとろう。むくみの原因は塩分の摂り過ぎであることが多い。 日本高血圧学会
災害時循環器疾患予防に関するガイドライン
災害時の健康・栄養について(国立健康・栄養研究所)
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