糖尿病発症を予測できるリスクスコアを開発 職域での予防に活用

 国立国際医療研究センター疫学予防研究部の研究チームが、年齢や性、BMI(体格指数)、腹囲、高血圧、空腹時血糖、HbA1cなどの検査値をもとに、3年以内の2型糖尿病発症を予測する「糖尿病リスクスコア」を開発した。
職域で活用できる「糖尿病リスクスコア」
 この研究は、2012年に開始され12の企業の産業医と疫学専門家が共同で実施している多施設共同研究「職域多施設研究」(J-ECOHスタディ)の成果をもとにしている。

 国立国際医療研究センター疫学予防研究部の南里明子氏らの研究チームが、3万7,416人(男性3万2,040人、女性5,376人、99.7%は30~65歳)を対象に調査した。詳細は「PLOS ONE」オンライン版に発表された。

 2型糖尿病の発症リスクを予測する糖尿病リスクスコアは、これまで福岡県久山町での追跡研究「久山町研究」のデータをもとに考案されたリスクスコアなどが開発されている。

 今回の研究は、職域で実施されている健診で得られたデータをもとに、3年後の糖尿病発症を容易に予測できるのが特徴。糖尿病発症のリスクの高い人を同定し介入を行うことで、職域での糖尿病発症の予防に役立てることができる。

 対象となったのはベースラインの2008~2009年から3年間に少なくとも1回健診を受けた人で、ベースライン時に糖尿病と判定された人は除外した。糖尿病診断の定義は、空腹時血糖値(FPG)126mg/dL以上、または随時血糖値200mg/dL以上、HbA1c値6.5%以上、あるいは糖尿病治療薬を服用中とした。

 非侵襲性のリスク因子として以下の変数を用いた――
(1)性別、(2)年齢(30~39歳、40~49歳、50歳以上)、(3)BMI(kg/㎡)(21.0未満、21.0~24.9、25.0~28.9、29.0以上)、(4)腹部肥満(腹囲:男性90cm以上、女性80cm以上)の有無、(5)現在の喫煙歴の有無、(6)高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬の服用)の有無。

 上記に空腹時血糖およびHbA1cを加えて侵襲モデルも作成した――
(7)空腹時血糖値(FPG)(100mg/dL未満、100~109mg/dL、110~125mg/dL)、(8)HbA1c値(5.6%未満、5.6~5.9%、6.0~6.4%)。

FPGおよびHbA1cを加えると予測精度がさらに向上
 非侵襲モデルと、FPGのみを加えた侵襲モデル、HbA1cのみを加えた侵襲モデル 、両者を加えた侵襲モデルの4パターンで2型糖尿病発症の予測能を比較したところ、非侵襲モデルに比べて、FPGおよび/またはHbA1cを加えることで予測精度が向上することが判明した。

 ROC曲線下面積は、非侵襲モデルの0.717に対し、FPGとHbA1cの両者を加えると0.882に向上。HbA1cのみを加えた場合は0.827、FPGのみを加えた場合は0.843だった。

 「年齢や性、BMI、腹部肥満などを用いた非侵襲モデルの2型糖尿病リスクの予測能も高いが、FPGおよびHbA1cを加えることで予測精度はさらに向上する」と研究者は述べている。

国立国際医療研究センター 臨床研究センター 疫学予防研究部
Development of Risk Score for Predicting 3-Year Incidence of Type 2 Diabetes: Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study(PLOS ONE 2015年11月11日)