子供の脂肪肝や肝炎を簡便な検査で発見 肥満の子供のNASHを早期発見

 子供の脂肪肝や脂肪肝炎を簡便な検査でみつけられることが、大阪市立大学発達小児医学の研究グループの調査で明らかになった。脂肪肝や肝炎は中高年に多い疾患だが、子供の肥満も増えており、簡便な検査法が求められている。
子供の肥満が増えている 非アルコール性脂肪性肝炎のリスクが上昇
 日本でも子供の肥満が増えており、肥満が引き起こす脂肪肝、脂質異常症、糖尿病などを早期にみつけることが課題となっている。肥満による脂肪肝は、肝細胞への脂肪沈着のみが認められる「単純性脂肪肝」と、線維化や炎症性変化を伴う「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)の2種類に分けられ、NASHは肝硬変に進展する可能性が高い。

 NASHは成人だけでなく子供でもみられる疾患だ。脂肪肝のリスクの高い肥満小児の中からNASHをスクリーニングすることが重要であり、簡便な検査法が求められている。大阪市立大学発達小児医学の徳原大介講師らの研究グループは、「フィブロスキャン」という検査で子供の肝臓の障害を判定できることを確かめた。

 NASHやC型肝炎などで慢性肝障害が進むと肝臓の組織が変質し、線維化が起こり硬くなる。この硬さを測ることで、肝硬変の進行度を調べる検査がフィブロスキャンだ。

 フィブロスキャンは、物質を伝わる振動波が硬い物質の中では速く、軟らかい物質の中では遅く伝わることを利用している。検査を受ける人の脇腹に当てた装置から発生した弱い振動が肋骨の間を通って肝臓に伝わり、超音波を使って振動が肝臓を伝わる速度を測る。

 指先で脇腹をトンと軽くたたかれるような振動を感じたと思う間もなく測定は終了。検査の所要時間は数分で、肝臓の線維化の程度(肝硬度)と脂肪の蓄積の程度(肝脂肪蓄積度)を同時に測定できる。高度肥満で皮下脂肪が厚すぎる場合などを除き、ほとんどの人で測定可能だという。

 脂肪肝を評価する標準的な方法に、「腹部超音波検査」と「肝生検」があるが、腹部超音波検査は定量性・客観性に欠け肝臓の線維化の評価が難しく、肝生検は肝臓に針を刺すので痛みや出血のリスクを伴うという短所がある。研究グループは、フィブロスキャンであれば体を傷つけることなく、繰り返し検査することも可能で、健康診断に有効だとしている。

食事・運動指導で脂肪肝を改善
 成人では効果的な検査法であることが過去の研究で確かめられているが、肥満の子供で効果があるかは分かっていなかった。そこで研究グループは、1?18歳の子供214名を対象にフィブロスキャンを用いた測定を行い、肥満群、肥満を伴わない肝障害群、肥満と肝障害を伴う対照群に分けて測定結果を比較した。

 その結果、フィブロスキャンは94%の子供で実施可能であり、肥満の子供は対照群と比較して肝硬度と肝脂肪蓄積度が有意に高いことが明らかになった。また、一部の子供では肝生検も行い、フィブロスキャンの測定結果と比較したところ、両者の間に高い相関があることが分かった。

 研究グループは今後、肥満の子供に対してどのような食事・運動指導を行えば脂肪肝の改善に結びつくのかを、フィブロスキャンを用いて解明していくという。また、小中高等学校における学校検診にこの検査を導入することで脂肪肝の子供をスクリーニングすれば、早期に食事・運動指導を行えるようになるという。

 肝硬変・肝線維化のリスクが高いフォンタン手術を受けた子供や、先天性代謝性肝疾患、B・C型肝炎の子供でも効果的な検査になる可能性がある。

大阪市立大学医学部附属病院 小児科・新生児科