ウォーキングと筋トレを組合わせると運動の効果は大幅に向上 筋力が低下した人の運動指導

 有酸素運動にレジスタンス運動を組合わせると、運動の効果を大幅に上げられることが、米アイオワ州立大学による新しい研究で明らかになった。

 「運動をする習慣をもたずに年齢を重ね、筋力が低下している人は、ウォーキングなどを行うのが困難である場合があります。そうした場合に、有酸素運動に、筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動を組合わせることが勧められます」と、研究者は指摘している。

有酸素運動に筋トレを組合わせると運動の効果は最大に

 有酸素運動にレジスタンス運動を組合わせると、運動の効果を大幅に上げられることが、米アイオワ州立大学による新しい研究で明らかになった。

 「とくに過体重や肥満のある人が、ウォーキングなどの有酸素運動に取り組むと、心血管疾患のリスクを軽減できます」と、同大学運動学のダックチョル リー教授は言う。

 「しかし、運動をする習慣をもたずに年齢を重ね、筋力が低下している人は、ウォーキングやランニングを行うのが困難である場合があります。運動習慣のない人が、いきなり1日に8,000歩から1万歩のウォーキングをするのは難しいです」。

 「そうした場合にお勧めできるのは、有酸素運動に、筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動を組合わせることです」としている。

 レジスタンス運動は、筋力トレーニング(筋トレ)やウェイトトレーニングとしても知られている。一般的に筋肉量は年齢とともに低下しいていくが、筋トレを行えば、年齢を重ねた人でも筋肉を増やすことができる。

運動が長続きしない理由で多いのは「時間がない、余裕がない」

 ウォーキングなどに飽きて、別の運動をやってみたいと思ったり、関節痛や腰痛などがあり、長距離歩くのが難しいという場合は、有酸素運動の半分を筋トレに置き換えることで、筋肉を増やせて、心血管を改善する同じくらいの効果をえられることが、研究で明らかになった。

▼ウェイトマシンを使った筋トレ、▼ダンベルやバーベルなどを使ったフリーウェイト、▼伸縮性のあるゴムなどを使ったエラスティックバンド運動、▼自分の体重を使って行う自重トレーニング(腕立て伏せやランジなど)など、筋トレのバリエーションは多い。

 「多くの人は、運動をした方が良いと理解していますが、長続きしない人も多いのです。運動をしない理由として多いのは、時間が限られおり余裕がないことです」と、リー教授は言う。

 「私たちが提案している、有酸素運動と筋トレの両方を組み合わせた運動スタイルは、多くの時間を要さないことが魅力になっています」としている。

1年間のランダム化比較試験を実施 406人が参加

 研究には、BMI(体格指数)が25~40で過体重や肥満があり、血圧が高めの、35歳~70歳の成人406人(女性53%)が参加した。研究グループは参加者を、1年間のランダム化比較試験に登録した。

 研究者らは参加者を、▼有酸素運動のみを行う群(101人)、▼筋力トレのみを行う群(102人)、▼有酸素運動と筋トレの両方を組み合わせて行う群(101人)、▼運動をしない群(102人、対照群)のいずれかにランダムに割り当てた。

 運動に取り組む群は、専門の指導者のもとで1時間の運動を週に3回、1年間続けた。全員が、管理栄養士の指導のもと、米国国立衛生研究所(NIH)が推進する「高血圧を予防するための食事アプローチ」に取り組み、米国国立がん研究所が開発したオンライン食事評価ツールを使い食事の記録もした。

 その結果、運動に取り組んだ群は、運動をしなかった群に比べ、全員の体脂肪率が大幅に減少した。1年間の試験を完了したのは381人(94%)だった。

 さらに、有酸素運動と筋トレの両方に1年間取り組んだ群は、最大酸素摂取量と筋力の両方が向上した。有酸素運動のみを行った群は最大酸素摂取量のみが、筋力トレのみを行った群は筋力のみが、それぞれ改善するのにとどまった。

 対照群と比較したCVDリスクスコアの平均差は、有酸素運動群で-0.15[95% CI:-0.27~-0.04、P=0.01]、組み合せ運動群で-0.16[95% CI:-0.27~-0.04、P=0.009]となり、筋トレ群では-0.02と有意差がなかった[95% CI:-0.14~0.09、P=0.69]。

 「体脂肪が1%減少するごとに、高血圧のリスクは3%、高コレステロールのリスクは4%、メタボリックシンドロームのリスクは8%、それぞれ減少します。これらは心血管疾患の危険因子です」と、リー教授は指摘している。

とくに過体重や肥満のある人で運動は効果がある

 今回の研究結果は、欧州心臓病学会(ESC)や世界保健機関(WHO)などが策定した「筋力運動と有酸素運動の両方を推奨する運動・身体活動ガイドライン」の確かさを裏付けるものとしている。

 ガイドラインでは、中強度の有酸素運動を週に150分、筋トレを週に2回行うことが奨励されている。

 リー教授らは、筋トレのセッションをどのくらいの時間・頻度行うと、健康増進の効果をもっともえられるかを探るために、240人の参加者を対象に、別のランダム化比較試験を計画しているという。

 「今回実施した試験は、有酸素運動と筋トレの効果を調べるものとして、これまでで最長かつ最大規模のものです。有酸素運動と筋トレの両方を行うことで、とくに過体重や肥満のある人で、健康上のベネフィットをえられやすいことが分かりました」と、リー教授は言う。

 「今回の試験は、参加者は運動療法の指導者や管理栄養士のサポートをえながら運動に取り組みましたが、多くの人は指導者のサポートなしに運動をしています。より安全・効果的に運動を行う方法の開発も求められています」としている。

New research finds half-cardio, half-strength training reduces cardiovascular disease risks (アイオワ州立大学 2024年1月17日)
Aerobic, resistance, or combined exercise training and cardiovascular risk profile in overweight or obese adults: the CardioRACE trial (European Heart Journal 2024年1月17日)