わずか5分間のウォーキングで肥満やメタボを解消 座ったままの時間を運動に置き換え 日常に「活動的なおやつ」を取り入れ

 1日のうちで座っている時間を減らして、わずか数分間のウォーキングなどの運動に置き換えるだけでも、健康増進の効果をえられることが分かった。

 なるべく座位時間を減らして、たとえ数分間でも良いので活発な運動に置き換えることで、体重やコレステロール、内臓脂肪の減少などの効果を期待できるとしている。

 ウォーキングなどの活発な運動を4~5分間行うだけでも、がんのリスクの減少を期待できることも分かった。

 少し空いた時間に歩いてみるなど、体を動かして、日常に「活動的なおやつ」を取り入れるのが効果的としている。

座ったままの時間を減らしてわずか5分間でも運動を

 1日のうちで座っている時間を減らして、わずか数分間のウォーキングなどの運動に置き換えるだけで、心臓の健康が目に見えて改善することが、英国のユニバーシティ カレッジ ロンドンなどの研究で明らかになった。

 研究グループは、5ヵ国の1万5,246人を対象とした6件の研究のデータを解析し、1日の運動行動と心臓の健康との関連について調べた。参加者に1日の身体活動量などを記録できるウェアラブル デバイスを7日間装着してもらった。

 その結果、中強度の活発な運動を行うと、心臓を健康にする高い効果をえられることが分かった。逆に、座ったまま過ごす時間が長いことは、心臓の健康に悪い影響をもたらす。

 座ったままの時間を減らして、立ったまま過ごす時間を増やしたり、十分な睡眠をとることも健康のために大切だ。運動には、睡眠を改善する効果も期待できる。

 「座ったまま過ごす時間を減らして、わずか5分間でも歩いてみるなど、強度を高めた運動をすることが、心臓の健康に大きな効果をもたらすことが分かりました」と、同大学スポーツ・運動・健康研究所のジョー ブロジェット氏は言う。

 「1日のうちで座ったまま過ごす時間が長い人は、立ち上がって、まずは歩いてみることをお勧めします。なれてきたら、少しずつ運動の時間や強度を高めることが大切です」。

 「早歩きや階段のぼりなど、心拍数を上げて呼吸を少し速めるような活発な運動を行うことをお勧めします」としている。

日常生活で少し工夫するだけで心臓病や脳卒中のリスクは低下

 「運動に、心臓血管を健康にする大きな効果があることが示されました。ほとんどの人は、日常生活で少しの工夫をするだけで、心臓病や脳卒中などを発症するリスクを低下できます」と、英国心臓財団(BHF)の共同医療ディレクターであるジェームス ライパー氏は言う。

 座位時間を減らして、たとえ数分間でも良いので活発な運動に置き換えることで、体重やコレステロール、腹囲周囲径などを改善でき、さらに多くの身体的なベネフィットを期待できるとしている。

 たとえば、体格指数(BMI)が26.5の54歳の太りすぎの女性の場合、30分のウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、BMIは0.64(2.4%)減少するという。

 座ったまま過ごす時間を毎日30分減らして、活発なウォーキングなどの中強度の運動に置き換えると、腹囲は2.5cm(2.7%)減少し、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cも低下する。

 研究は、同財団などの支援を受け行われたもの。現在、英国・オランダ・フィンランド・デンマーク・中国・シンガポール・オーストラリアなどで、腕時計型の活動量計を使い、24時間の運動・座位行動・睡眠などについて測定し、健康との関連を調べる国際共同研究「ProPASS」が実施されている。

楽しめる変化を起こし体を動かす機会を増やすことが大切

 「それまで運動をしていなかった人が活動的になるのは、必ずしも簡単なことではありません。運動を長期的に継続し、楽しめる変化を起こすためにサポートが必要です」と、ライパー氏は指摘している。

 少し空いた時間に歩いてみるなど、日常に「活動的なおやつ」を取り入れるのが効果的としている。

 たとえば、▼仕事中も電話に出るときは立ち上がるようにする、▼スマートフォンのアラームをセットして1時間ごとに歩くようにする、▼自宅や職場に行くときは、ひとつ前の駅や停留所で降りて歩いてみる、▼家や職場でスタンディング デスクを取り入れてみるなど、日常で体を動かす機会を増やすことを勧めている。

 心筋梗塞などの心血管疾患は、心臓や血管に生じる病気で、多くの国で死因の第1位になっており、日本でも死因の第2位になっている。

 世界では1997年以降、心血管疾患とともに生きる人の数は2倍になり、さらに増加すると予測されている。

4~5分のウォーキングはがん予防にも役立つ

 オーストラリアのシドニー大学による別の研究では、ウォーキングなどの活発な運動を4~5分間行うだけでも、がんのリスクも減少できることが示された。

 研究グループは、運動をする習慣のない2万2,398人の男女を7年近く追跡して調査した。活動量計を7日間身につけてもらい、24時間の身体活動などを記録した。

 その結果、日常生活で活発なウォーキングなど、呼吸が少し速くなるような運動を4~5分間行うことを習慣にしている人は、がんの発症リスクは全体で18%、最大で32%それぞれ減少することが示された。

 「中年者の多くは、運動を習慣として行っておらず、がんの発症リスクが高まっています。しかし、日常生活で少し空いた時間をみつけて、体を積極的に動かしている人は、がんのリスクが低いことが示されました」と、同大学で運動・身体活動について研究しているエマニュエル スタマタキス教授はいう。

▼家事で体を動かす、▼食料品店で買い物をして重い荷物を運ぶ、▼全力でウォーキングをする、▼子供たちと体を使って遊ぶなど、意識して強度が高めの運動や身体活動を日常生活に取り入れることを勧めている。

 「ふだんの生活に、活発なウォーキングなど少し激しい運動を1回に4~5分間取り入れて、その頻度を増やしていくことをお勧めします。何もしないで体を動かさないでいるのは危険なことです」とアドバイスしている。

Any activity is better for your heart than sitting (ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2023年11月10日)
Device-measured physical activity and cardiometabolic health: the Prospective Physical Activity, Sitting, and Sleep (ProPASS) consortium (European Heart Journal 2023年11月10日)
Short bursts of daily activity linked to reduced cancer risk (シドニー大学 2023年7月28日)
Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising Adults: The UK Biobank Accelerometry Study (JAMA Oncology 2023年7月27日)