「低カロリー食」は肥満・メタボの人に有益 カロリー制限で筋肉も若返る タンパク質は必要

 タンパク質を十分にとりながら、カロリー制限を行うのは、筋肉を強くし、老化を抑えるのに有用という研究が発表された。

 食事のカロリー制限により、血糖値を下げるインスリンが働きやすくなり、寿命を延ばすのに有用としている。

 食事のカロリーを12%減らしただけでも効果がある。質の良いタンパク質も十分にとり、筋肉や骨を改善することも必要としている。

毎日の食事でカロリーを少し減らすことが健康増進に役立つ

 毎日の食事でカロリーを少し減らすことが、とくに肥満やメタボのある人の健康増進に役立つことが明らかになった。研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立老化研究所が発表したもの。

 食事のカロリー制限により、筋肉が若返り、体の生物学的経路を活性化でき、健康を高められる可能性があるという。

 「カロリー制限をしながら、体に必要なタンパク質や、ビタミンやミネラルなどの栄養素を過不足なくとることが、加齢にともない増える2型糖尿病や肥満などの疾患の進行を遅らせるのに有用であることが、多くの研究で示されています」と、同研究所の科学ディレクターであるルイージ フェルッチ氏は言う。

 フェルッチ氏は老年医学の専門家で、高齢者の身体や認知能力の低下を抑制する方法を開発する研究を行っている。

カロリー制限で体重が減っても筋力は低下しない

 研究グループは今回、食事のカロリー制限の長期的な効果を調べている「CALERIE研究」に参加した90人の成人を対象に、12ヵ月および24ヵ月追跡して調査した。

 その結果、食事でカロリー制限をした人は、1年目に体重が平均して9kg減少し、2年目もその体重を維持していた。

 減量により筋肉量も減少したが、筋力は低下しなかった。これは、筋肉の質量よりも、筋肉から生成される筋力が向上したことを示している。

 研究グループは、研究開始時と追跡調査の1年後と2年後に、参加者の大腿筋を生検して、カロリー制限により、筋肉にどのような変化が起きているかを分子的に詳しく調べた。

 遺伝情報を伝達する分子であるメッセンジャーRNA(mRNA)を調べた結果、食事のカロリー制限により、エネルギーの生成と代謝に関わる遺伝子が改善し、炎症を引き起こす遺伝子が低下し、炎症が抑制されることを明らかにした。

 「体の炎症と老化は密接に関連しています。多くの高齢者で炎症がみられますが、カロリー制限は炎症の促進を抑えるための、強力なアプローチとなることが示されました」と、フェルッチ氏は指摘する。

食事のカロリーを12%減らしただけで効果がある

 なお、参加者は当初は、1日の食事のカロリー摂取量の25%を減らすことが求められていたが、実際に達成できた最大値は12%の削減だった。

 ただし、食事のカロリーを12%減らしただけでも、老化を抑え、生物学的経路を活性化するのに十分な効果をえられたという。

 「食事で食べすぎている人も、カロリー摂取量を12%減らすのは、少し努力すれば達成できます。食事に小さな変化を加えることが、健康に大きな違いをもたらすことができる可能性があります」と、フェルッチ氏は指摘する。

カロリー制限をしながらタンパク質を十分にとることも大切

質の良いタンパク質をとり筋肉や骨を改善

 食事のカロリー制限により、悪玉コレステロールが減少し、インスリン感受性が改善し、血糖値を下げるインスリンが働きやすくなり、さらには寿命を延ばすのに有用であることが、米ウェイクフォレスト大学による別の研究でも確かめられている。

 ただし、ただカロリー制限をすれば良いというわけではなく、質の良いタンパク質も十分にとり、筋肉や骨を改善することも重要としている。

 「カロリー制限により体重を減らすと、筋肉や骨も失われるおそれがあることから、患者さんに減量を勧めるのをためらう医師もいます」と、同大学健康運動科学部のクリステン ビーバーズ氏は言う。

 「しかし、低カロリーの食事をしながら、質の良いタンパク質をとっていれば、年齢を重ねても必要な筋肉と骨を維持でき、生活の質を向上できることが示されました」としている。

低カロリーで栄養価の高い食事は健康的

 研究グループは、65歳以上の96人の高齢者を対象に、低脂肪の低カロリー食をとるグループと従来の食事を続けるグループに分け比較した。

 低カロリー食をとったグループには、体重1kgあたり1g以上の十分なタンパク質、必要なカルシウムやビタミンDなどを含む食事を6ヵ月とってもらった。

 その結果、低カロリー食のグループは、体重が平均して8kg以上減少し、減った分のほとんど(87%)が脂肪であり、筋肉量は維持されていた。従来の食事を続けたクループは、体重の1kg減少にとどまった。

 低カロリー食のグループは、体重が減少しても骨量も維持されており、骨の質と骨折リスクを評価するスコアも改善していた。

 「カロリー制限をすることで、腹部・腰・太股・お尻についていた脂肪も減少しました。これは、糖尿病や脳卒中などの心代謝性疾患を予防・管理するうえで重要です」と、ビーバーズ氏は指摘する。

 「カロリー制限により、死亡リスクと寿命を予測するための健康老化指数のスコアも0.75ポイント改善しました。低カロリーで、高タンパク質で栄養価の高い食事は、健康的であることが示されました」としている。

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Effects of a Hypocaloric, Nutritionally Complete, Higher Protein Meal Plan on Regional Body Fat and Cardiometabolic Biomarkers in Older Adults with Obesity (Annals of Nutrition and Metabolism 2019年2月12日)