肥満・メタボの人の食事行動は不健康? 体重管理への意欲は高い 福島県の9ヵ所の保健所で調査

 福島県が県食行動実態把握調査の分析結果を公開した。肥満のある人では、「食べる速さがやや早い」という割合が4割を超え、「満腹になるまで食べる」という人も4割を超えた。

 肥満者では、食べる速度が「速い」という人も6割超で、ラーメンや麺類の汁を「全部飲む」という割合も4人に1人に上った。

 ジュースや清涼飲料水、缶コーヒーなど甘い飲み物を飲む頻度が週4~6回という人は、肥満のある人では1割を超えた。

 その一方で、肥満のある人は、体重コントロールのための行動に意欲を示していることも示唆された。

 「肥満のある人は、健康的な食習慣や減塩につながる意識・態度・行動が少なく、家庭外調理食品・料理の摂取頻度が高い傾向がみられる。生涯を通じた健康的な食習慣づくりのための取り組みが必要です」と、専門家は指摘している。

肥満の人の食事スタイルを分析 効果的な保健指導が必要

 福島県の肥満者の割合は、男性で33%、女性で23%を超えている。同県はこれを男性27%、女性で20%に改善する目標を掲げている。そこで県は、2022年度「食行動実態把握調査」の結果を分析した。

 調査は、県民の肥満や高塩分の摂取の要因となる食生活の実態を明らかにし、県健康増進計画や食育推進計画の推進、栄養・健康づくり対策を展開するうえでの基礎資料とするために実施したもの。

 調査は、県内の9ヵ所の保健所で、2,472人の20代から60代以上の県民を対象に実施された。適正体重の人が64.7%、肥満の人が29.4%だった。

 調査結果について、会津大学短期大学部食物栄養学科の鈴木秀子教授らは、次のように分析している。

  1. 肥満の判定別では、肥満(BMI 25以上)の人の方が、肥満でない(BMI 25未満)人よりも、健康的な食習慣や減塩につながる意識・態度・行動が少なく、家庭外調理食品・料理の摂取頻度が高い傾向がある。
  2. 野菜を食べる頻度別にみると、野菜を「毎日1回以上」食べる群の方が、「毎日は食べない」群より、健康的な食習慣や減塩につながる意識・態度・行動が多く、高塩分摂取に影響する食品のうち、家庭調理品は高頻度だが、家庭外調理の食品や料理を食べる頻度は少ない。
  3. 料理の実践度別では、料理を「している」群の方が、「していない」群よりも、健康的な食習慣や減塩につながる意識・態度・行動が多く、家庭外調理の食品や料理を食べる頻度が少ない。

肥満のある人の食事の特徴が浮き彫りに

 とくに働き盛り世代(60歳未満)の肥満のある人とない人の差の特徴について、次のように指摘している。

  • 肥満のある人は、肥満のない人に比べ、健康的な食習慣を回答した人が少ない。
  • 食べる速さが「とても早い」「やや早い」という回答は、肥満のある人で多い。
  • 満腹になるまで食べることが「いつも」「ほとんどいつも」という回答は、肥満のある人で多い。
  • 野菜を食べる頻度が「毎日2回以上」という回答は、肥満のある人で少ない。
  • 料理を「ときどきしている」「まれにしかしない」「ぜんぜんしない」という回答は、肥満のある人で多い。

 その一方で、肥満のある人は、体重コントロールのための行動に意欲を示していることも示唆された。

  • 肥満のある人は、肥満のない人よりも、「体重コントロールのための食事量調整をしている」という回答が多い。
  • 「体重コントロールのために食事を減らすことを少ししている」という回答も、肥満のある人では多い。

 さらに、肥満のある人は、減塩につながる行動・態度・意識を示した人が少ないことも浮き彫りになった。

  • ラーメンや麺類の汁を「ぜんぶ飲む」という人は、肥満のある人で多い。
  • 味がついている料理に、さらに醬油やソース、塩などをかけて食べる人は、肥満のある人で多い。
  • 濃い味付けのものを好んで「ほとんどいつも」「ときどき」食べる人は、肥満のある人で多い。
  • ふだんの食事で減塩を「していない」という人は、肥満のある人で多い。

食事指導を効果的に行うためのポイント

 「食産業の発展に加え、コロナ渦を契機に人々が中食などを利用しやすくなったこと、共働き世帯が増加していることなどを鑑みると、スーパーやコンビニの総菜や弁当、加工食品などを利用する頻度は今後ますます増加する推測されます。このことは、濃い味好みに影響することが解釈でき、減塩化が必要と考えられます」と、研究者は指摘している。

 そのうえで、次のことを提案している。

  • 健康的な食習慣の実践できることを目指す
    1. 幼少期から生涯を通じた健康的な食習慣づくりのための取り組み(食育)
    2. バランスのとれた食事(主食・主菜・副菜)の揃え方について、料理することを通した実践的な取り組み
    3. 野菜の手軽で健康的な食べ方に加え、「毎日継続して食べる」ことの重要性の普及
    4. 家庭で調理する食品・料理の減塩化のための取り組み
    5. 職場において健康的な食習慣を普及させる取り組み

  • 健康的な食習慣の実践を支える食の環境整備
    1. スーパーやコンビニの総菜や弁当等のヘルシー化(低エネルギー・減塩)の推進
    2. 健康に関心のない方が意識せずに健康な食事を入手できる取り組み

福島県県食行動実態把握調査の主な結果

 調査の主な結果は次の通り――。

  • 「食べる速さがやや早い」という人は、肥満のある人で多く(41.8%)、肥満のない人で少なかった(35.3%)。「普通」という人は、肥満のある人で少なく(30.5%)、肥満のない人で多かった(39.4%)。
  • 「満腹になるまで食べることがあるか」という問いに対して、「ほとんどいつも」と回答した割合は、肥満のある人で多く(33.4%)、肥満のない人で少なかった(23.1%)。
  • 揚げた料理を食べる頻度が週に4~6回という人も、肥満のある人では多く(20.4%)、肥満のない人では少なかった(15.3%)。
  • ジュースや清涼飲料水、缶コーヒーなど甘い飲み物を飲む頻度が週4~6回という人は、肥満のある人で多く(11.6%)、肥満のない人で少なかった(7.9%)。
  • 「ラーメンや麺類の汁をぜんぶ飲む」という人も、肥満のある人で多く(24.6%)、肥満のない人では少なかった(12.8%)。
  • 野菜を食べる頻度が「毎日2回以上」と回答した人は、肥満のある人で少なく(19.4%)、肥満のない人で多い(28.8%)。
  • 「体重コントロールのために食事を減らすことが少しある」という人は、肥満のある人ではおよそ半数に上り(49.2%)、肥満のない人では少なかった(40.3%)。

福島県食行動実態把握調査 (福島県健康づくり推進課)
健康ふくしま21 (福島県健康づくり推進課)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]