「ヨガ」で運動不足を解消 高齢者のフレイル予防にも効果 メンタル面も改善

 古代インドから発祥したヨガは、現代では身体的エクササイズの要素も取り入れられ、世界的に愛好者が多い。

 ストレッチ運動の要素が多く、ゆったりした呼吸に合わせて行うヨガは、身体的エクササイズの要素も含まれており、リラックスやストレス解消の効果も期待できる。

 ヨガは、基本ポーズをおぼえれば初心者でも無理なくでき、自宅や職場でも気軽に取り組める。コロナ禍でテレワークやリモートワークが増えた時期に、ヨガをはじめたという人も多い。

ヨガは自宅で取り組めストレス解消にも効果的

 新型コロナの拡大により、不安やストレスなどのメンタルヘルス不調に悩まされる人が増えた。そうした人のストレス解消に、ヨガは効果的という研究を米イリノイ大学が発表した。

 研究グループは、フルタイムで働いており、運動不足で、ストレスの症状を経験している成人向けに、ヨガを取り入れた8週間の運動プログラムを開発した。プログラムはオンラインで自宅でも取り組めるよう設計されている。

 平均年齢が41歳の86人の参加者(女性が81%)に、ヨガの初心者向けの基本ポーズである「太陽礼拝」などを含むプログラムに、週3回、8週間取り組んでもらったところ、ストレスと不安のレベルが全体に改善し、短期作業記憶も向上していた。

 「ウォーキングなどの有酸素運動が、体だけでなく脳にも有益であることはよく知られていますが、ヨガなどの多平面的な動きのある身体活動を加えるのは、より効果的である可能性があります」と、同大学運動科学・地域保健学部のショーン マレン氏は言う。

 「コロナ禍でメンタルヘルス不調に悩まされる人が増えており、ヨガのような、安全性を損なうことなく取り組めて、ストレスと不安の軽減を期待できる身体活動は、ポストコロナ時代の回復力を高めるのに有用と期待されます」としている。

ゆったりとした深い呼吸をしながら行うヨガは体と脳により多くの酸素をもたらす。米ハーバード大学医学大学院が公開しているビデオ。

ヨガは高齢者のフレイル予防にも役立つ

 ヨガが向いているのは、若い人だけではない。米国内科学会(ACP)が発表した新しい研究によると、ヨガは高齢者の「フレイル」の予防にも役立つ可能性がある。

 ヨガは、基本的なポーズに加え、呼吸や瞑想などの要素も含むのが特徴で、高齢者のバランス能力や可動性、メンタルヘルスを改善するのに有用であることは、過去の研究でも報告されている。

 一方、フレイルは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それにより健康障害を起こしやすくなっている状態。80歳以上の高齢者の半数がフレイルに罹患しているという報告もあり、その予防と改善は重要な課題になっている。

 運動不足の高齢者にヨガに取り組んでもらうと、歩行速度と下肢の筋力や持久力が改善するとしている。ヨガは、高齢者のバランスと可動性を向上するのに効果的で、すでにヨガを取り入れた高齢者向けのプログラムも開発されている。

 研究は、ブリガム アンド ウィメンズ病院とハーバード大学医学大学院によるもの。研究グループは、65歳以上の高齢者2,384人を対象とした、33件のランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューを行った。

 その結果、ヨガに取り組むことは、歩行速度や立ち上がりの能力など、日常生活をおくるうえで必須の身体能力の向上と、フレイルの軽減、健康寿命の延伸に関連していることが示された。

 「歩行やバランスをとるのが難しくなったり、認知障害や、糖尿病などの特定の慢性疾患があるなど、フレイルの原因となる要因は多くあります」と、同病院と同大学で老年医学を研究しているジュリア ローウェンタール氏は述べている。

 「フレイルを予防するために、高齢者向けにカスタマイズした、自宅でも安全に取り組めるヨガのプログラムは効果的である可能性があります。ヨガが健康的な老化とフレイルの予防に有用とした研究は増えています」としている。

イリノイ大学が開発した、オンラインで自宅でも取り組めるヨガプログラム

ふだんの運動にヨガを追加すると心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下

 習慣として行っているウォーキングなどの運動に、ヨガを追加すると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクがより減少したという別の研究を、カナダのラヴァル大学が発表している。

 研究グループは、高血圧やメタボリックシンドロームと診断された60人の患者に、3ヵ月の運動トレーニングプログラムに参加してもらった。

 参加者を2つのグループに分け、ヨガに取り組むグループには、ウォーキングなどの有酸素運動を、1日30分間、週5回行ってもらい、さらにヨガを15分間行ってもらった。

 その結果、ヨガに取り組んだグループは、収縮期(最高)血圧の平均が、研究の開始時には130mmHgだったのが、ヨガを続けた結果、119mmHgに下がった。安静時心拍数も低下した。

 検査値の改善効果は、ヨガを行わなかったグループに比べ、行ったグループではより高かった。ヨガに取り組んだグループは、10年間の心血管疾患のリスクを予測するスコアも、より改善していた。

 「高血圧や糖尿病、肥満などがあり、心血管疾患のリスクが高く、運動をしたことのない人が、新たに運動や身体活動を開始するときには、より安全に行うようにするため、注意が必要となることがあります」と、同大学心肺研究所のポール ポワリエ氏は言う。

 「ヨガは、初心者向けに考案されたものもあり、比較的安全に、楽しく取り組める身体活動と言えます」としている。

ラヴァル大学が公開している、自宅でできるヨガやピラティス。身の回りにある日用品を利用する。

糖尿病の人がヨガに取り組むと血糖値に好ましい変化が

 ヨガやウォーキング、瞑想などの、ストレス緩和やリラックスに役立つ「マインドフルネス」を実践することが、2型糖尿病の治療や管理にも役立つという研究を、南カリフォルニア大学も発表している。

 ウォーキングなどの適度な運動に、ゆったりとした呼吸を取り入れたヨガやストレッチを組合せると、糖尿病の人の血糖管理に好ましい影響があらわれるという。

 研究グループは、ヨガ、気功、マインドフルネスにもとづくストレッチなど、ストレス軽減につながる行動が、血糖値にどう影響するかを調べた。1993年~2022年に発表された、世界中で実施されたランダム化比較試験を含む28件の研究を解析した。

 その結果、そうしたリラックスしながら行う運動の実施は、過去1~2ヵ月の血糖が反映されるHbA1cの平均0.84%の低下と関連しており、もっとも多く研究されていたヨガについては、HbA1cの約1%の低下と関連していることが示された。

 ゆっくりと呼吸し、自分の呼吸に注意を向けるトレーニングにより、マインドフルネスを高められる。深い呼吸をしながら行うヨガやストレッチ、ウォーキング、瞑想などを組み合わせたプログラムも開発されている。

糖尿病の人のためのヨガ
Yoga With Adriene
ヨガは変化を生み出すし、ストレスをやわらげ、体の変化を促すと解説。

"Resilience in dark times": At-home yoga reduces anxiety, improves short-term memory (イリノイ大学 2023年5月4日)
Feasibility and impact of a remote moderate-intensity yoga intervention on stress and executive functioning in working adults: a randomized controlled trial (Journal of Behavioral Medicine 2023年2月8日)
Yoga may help to prevent frailty in older adults (米国内科学会 2023年3月13日)
Practicing Yoga May Prevent Frailty in Aging Adults (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2023年3月13日)
Strong evidence that yoga protects against frailty (ハーバード大学 2023年3月14日)
Effect of Yoga on Frailty in Older Adults: A Systematic Review (Annals of Internal Medicine 2023年4月)
Adding yoga to regular exercise improves cardiovascular health and wellbeing (Elsevier 2022年12月8日)
Impact of Yoga on Global Cardiovascular Risk as an Add-On to a Regular Exercise Regimen in Patients With Hypertension (Canadian Journal of Cardiology 2022年12月7日)
Mind-body practices lower blood sugar levels in people with type 2 diabetes (南カリフォルニア大学 2022年9月28日)
Mind- and Body-Based Interventions Improve Glycemic Control in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-Analysis (Journal of Integrative and Complementary Medicine 2023年2月8日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]