肉類を食べている高齢者はフレイルのリスクが低い 最大歩行速度が速い フレイル予防では栄養が重要

 東京都健康長寿医療センターは、食肉を十分に食べている高齢者は、最大歩行速度が速く、フレイルのリスクが低いことを明らかにした。

 同センターが実施しているコホートおよび介入研究である「お達者研究」に参加した地域在住高齢者512人を対象に、食肉の摂取量とさまざまなフレイル関連指標との関わりを横断的に検討。

 肉類摂取量の多いグループで、最大歩行速度がもっとも速く、肉類摂取量が多いほど、最大歩行速度が速いことが分かった。

フレイル対策の食事はタンパク質を不足させないことが重要

 フレイルとは、加齢にともなってさまざまな機能の低下が進み、それによって健康障害を起こしやすくなっている状態。

 運動機能や認知機能が衰えると、介護の必要な状態に陥るリスクも高まる。心身が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになることも少なくない。

 フレイル対策の食事としては、タンパク質を不足させないことが重要だが、タンパク質の主要な摂取源のひとつである肉類は、年齢階級が上がるとともに摂取量が減少しやすい。

 肉類はアミノ酸スコアが高く、肉類に含まれるイミダゾールジペプチドは膝伸展力・片足開眼立ちの向上に関連することが報告され、十分な肉類摂取はフレイル予防に効果的とみられる。

 しかし、これまで地域在住の高齢者での肉類摂取とフレイル関連指標についての検討は行われていなかった。

肉類は年齢が上がるとともに摂取量が減少

 そこで東京都健康長寿医療センター研究所などの研究グループは、同センターが実施しているコホートおよび介入研究である「お達者研究」に参加した地域在住高齢者512人を対象に、食肉の摂取量とさまざまなフレイル関連指標との関わりを横断的に検討した。

 研究グループはフレイルを、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、適切な治療や予防を行うことで要介護状態への進行を抑制できる病態と定義。

 健診で、聞き取りによる基本情報の調査、食事調査、血清アルブミン値の測定、歩行速度、握力、身体組成の測定を実施。肉の摂取量(エネルギーベース)により3グループに分け、フレイルに関連する指標との検討を行った。

 その結果、肉類摂取量の多いグループで最大歩行速度がもっとも速くなった。さらに詳細な分析を行ったところ、性、年齢などを調整しても肉類摂取量の多い方で最大歩行速度が速いことが認められた。

 最大歩行速度は、できるだけ速く歩いた時の速度で、65歳以上の高齢者では加齢により低下する。

 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チームの本川佳子氏らが、日本ハムとの共同で実施したもの。研究成果は、「日本サルコペニア・フレイル学会誌」にオンライン掲載された。

高齢になると肉類の摂取量が減少しやすい 食事指導が必要

 同センター研究所はこれまで、前期高齢者の最大歩行速度の低下は、日常生活動作の低下を予測することを報告している。

 同センター研究所が2022年に発表した研究では、日本人高齢者の身体組成(骨格筋量・脂肪量)と身体機能(握力・歩行能力)が要介護化・余命に及ぼす独立した影響を、量・反応分析によって検討。

 その結果、次の2点が明らかになっている――。

  1. 要介護化(要支援・要介護状態の新規発生)には、男女一貫して、身体組成(骨格筋量・脂肪量)よりも、身体機能(握力・歩行能力)が強く影響する。
  2. 余命には、男性では骨格筋量・女性では脂肪量が、それぞれ身体機能とは独立して影響する。

 本川氏は今回の研究について、「高齢期のフレイル予防の栄養ケアとして肉類が有効である可能性を示すことができました。年を重ねると肉類摂取量が減少しやすくなりますが、そうならないよう食支援を行っていくことが、重要であると考えます。今後は肉類の種類別の比較や、肉類摂取に影響する要因(口腔機能など)を含め、縦断研究や介入研究を行っていきたいと考えています」と述べている。

東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
お達者研究 (東京都健康長寿医療センター)
地域在住高齢者の肉類摂取量とフレイル関連因子に関する横断的検討 (日本サルコペニア・フレイル学会誌、ウェブサイトで会員向け公開済み)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]