【新型コロナ】運動不足のオフィス労働者の身体活動量を増やす介入プログラムを開発
2023年01月26日

座っている時間が長く、運動不足におちいっているオフィス労働者が多い。コロナ禍で、働く人の運動不足の解消は、とくに重要な課題になっている。
筑波大学は、オフィス労働者の運動・身体活動を促進する包括的・多要素プログラムを作成し、その効果を検証した。
個人間・組織・地域・政策といった多層的な要因に働きかけることで、効果的に運動・身体活動量を増やせることを実証した。
「このプログラムは、低コストで実施可能であることから、今後、さまざまな職場での導入が期待されます」としている。
オフィス労働者は座位時間が長く運動不足
オフィス労働者は他の職種と比べて、身体活動量が少なく、座位時間の⻑い勤務形態が特徴で、これは2型糖尿病や筋骨格系疾患などのリスクを高める要因と考えられている。 このことは、労働生産性にも影響する可能性があることから、近年、職域での身体活動増進に取り組む企業は増えている。オフィス労働者の身体活動量を増やし、座位時間を減らすためのさまざまな対策が検討されている。 とくに新型コロナの感染拡大により、多くの人が歩数を減らしており、日本人の歩数は第一次パンデミック下で平均2,000歩/日相当の減少(それ以前と比べ30%の減少)を示したという報告もある。身体活動を促進する包括的・多要素プログラムを開発
筑波大学の研究グループはこれまで、オフィス労働者を対象に実施したインタビュー調査をもとに、日本の職場の環境や文化をふまえた、オフィス労働者の身体活動を促進する包括的・多要素プログラムを提案してきた。 調査では、オフィス労働者は座っている時間が長く、職場や自宅周辺の環境からの影響も受けていることが分かった。また、労働者の幅広いニーズに対応できるプログラムが必要であり、とくに職場環境の改善が必要であることなどが示された。 開発した包括的・多要素プログラムは、人間の行動は個人内の特性だけではなく、個人間・組織・地域・政策といった多層的な要因に影響されるという社会生態学モデルにもとづき開発したもの。 具体的には、オフィス労働者の身体活動量を高めるために、つぎの要素が重要になるとしている。研究グループは、これらを包括的に網羅した多要素プログラムを提案した
包括的・多要素の身体活動促進プログラム
▼ 個人レベル | 能力を刺激する情報提供や教育 |
---|---|
モチベーションを高めるチーム構築と機会を与える雰囲気づくり | |
▼ 物理環境レベル | 機会を与えるスタンディングデスクと、モチベーションを高めるポスターなど |
▼ 組織レベル | モチベーションを高めるインセンティブや、役員からのメッセージおよび機会を与える職場政策 |

出典:筑波大学、2022年
高強度身体活動(MVPA)を週あたり50分以上増加
研究は、筑波大学(研究代表者:中田由夫・筑波大学体育系准教授)とMS&ADインターリスク総研との共同研究契約にもとづき実施されたもの。研究グループは今回、このプログラムの実施可能性を検証した。 20歳以上のオフィス労働者76人を対象に、8週間の包括的・多要素の身体活動促進プログラムに参加してもらい、うち50人について身体活動量を分析した。 普通歩行は3.0メッツ程度。米国の運動・身体活動ガイドラインでは、中強度の身体活動は3.0~5.9メッツ、高強度の身体活動は6.0メッツ以上とされている。週に150分以上のMVPAを行うことが推奨されている。 試験の結果、介入前後で、1日あたりの中・高強度身体活動(MVPA)は7.3分(95%信頼区間 0.8~13.8分)、歩数は873歩(同 169~1,576歩)、それぞれ有意に増加した。 また、40人については、勤務日と休日、34人については出社勤務日とリモート勤務日に分けて追加分析を実施したところ、勤務日で、1日あたりのMVPAが10分(同 3.7~16.3分)、歩数が1,172歩(同 365~1,979歩)、それぞれ増加したことが確認された。 さらに、休日では歩数が1,310歩(同 63~2,557歩)、リモート勤務日ではMVPAが7.1分(同 0.4~13.7分)、歩数は826歩(同 46~1,606歩)、有意に増加したとしている。 「研究により、オフィス労働者の身体活動を促進するための包括的・多要素プログラムの実施可能性が認められました。このプログラムは、比較的低コストで実施可能であることから、今後、さまざまな職場での導入が期待されます」と、研究グループでは述べている。
介入前後での測定項目の変化

出典:筑波大学、2022年
新型コロナの流行で働く人の運動不足はさらに深刻
研究グループが単群実施可能性試験を実施した企業では、新型コロナの流行防止対策として、リモート勤務を積極的に導入していた。 研究対象者の平均的な勤務形態の内訳は、出社勤務2.4日/週、リモート勤務2.2日/週だった。 8週間の包括的・多要素プログラムとして、▼身体活動を促進するための個人戦略(講義、印刷物、目標設定、フィードバック)、▼社会文化的環境戦略(チーム構築、雰囲気づくり)、▼物理的環境戦略(ポスター )、▼組織的戦略(役員による推奨)を提供し、実施してもらった なお、研究は、緊急事態宣言の期間中(2021年1月8日~3月21日まで)に行われ、研究参加者に対する説明会、調査、介入プログラムは、すべてリモートで提供された。 主要評価項目は、活動量計により評価した中・高強度身体活動時間(MVPA)で、副次評価項目は、歩数、低強度身体活動時間(LPA)、中強度身体活動時間(MPA)、高強度身体活動 時間(VPA)、座位行動時間だった。 介入効果を評価するため、介入期間前後の身体活動量を分析するとともに、1週間の測定期間を勤務日と休日に分け、さらに勤務日を出社勤務日とリモート勤務日に分けて、追加分析を実施した。 なお研究の一部は、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)および筑波大学ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究(ARIHHP)センターの支援を受けた。 中田由夫研究室 筑波大学大学院人間総合科学学術院人間総合科学研究群スポーツ医学学位プログラム中田 由夫 公式ホームページ
Multi-Component Intervention to Promote Physical Activity in Japanese Office Workers: A Single-Arm Feasibility Study (International Journal of Environmental Research and Public Health 2022年12月15日)
MS&ADインターリスク総研
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- 野菜摂取量の平均値は、256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。野菜摂取量は有意に減少 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」結果より
- 糖尿病が強く疑われる人は、男性16.8%、女性8.9% 令和5年(2023) 「国民健康・栄養調査」の結果より
- 肥満の人は、男性31.5%、女性21.1%。やせの人は、男性4.4%、女性12.0%(20歳代女性20.2%) 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
- 特定健診(40~74歳)受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%(男性13.3%、女性3.2%)、予備群該当者は、12.3%(男性 9.7%、女性2.6%) 令和4年(2022)「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」の結果より
- メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、男性 4.3%、女性11.3%。予備群の人は、男性 4.3%、女性11.3% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」の結果より