朝食・昼食・夕食・間食を調査できる簡易ツールを開発 食事のタイミングや行動も分かる
2022年12月15日
東京大学は、朝食・昼食・夕食・間食の栄養の質を評価できる簡易食習慣評価ツール「MDHQ」を開発したと発表した。肥満やメタボなどにも関連する食事のタイミングや規則性などについても評価できるとしている。
日本人成人222人を対象に実施した試験で、MDHQが十分に正確であることを実証した。「MDHQは、有用な食事調査ツールとなるだけでなく、日常の食べ方にそった食事指導や栄養教育を行なうための土台となることが期待されます」と、研究グループでは述べている。
3食+間食を調査 保健指導や食事指導の土台に
東京大学は、日本人成人から収集した詳細な食事調査データと、食行動に関する既存の科学的知見をもとに、朝食・昼食・夕食・間食の栄養学的質を評価できる簡易食習慣評価ツール「MDHQ」を開発したと発表した。 「MDHQ」は、食習慣について尋ねる質問票で、「MDHQ」から推定されたそれぞれの食事の栄養学的質を、食事記録法から推定された食事の栄養学的質と比べた結果、推定した朝食・昼食・夕食の栄養学的質は十分に正確であることが示された。 研究は、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野の村上健太郎助教、篠崎奈々客員研究員、佐々木敏教授らによるもの。研究成果は、「British Journal of Nutrition」にオンライン掲載された。 「MDHQは、時間栄養学や行動栄養学に関する研究で、有用な食事調査ツールとなるだけでなく、日常の食べ方にそった食事指導や栄養教育を行なうための土台となることが期待されます」と、研究グループでは述べている。食事のタイミングや行動まで調査 簡便・安価に使用できる
不適切な食事習慣は、肥満・メタボ、2型糖尿病などの慢性疾患の発症や、早期死亡の主要な危険因子となる。食事の質の向上は、いまや世界的な優先事項となっている。 そのため、食事と疾病の関係を明らかにし、より望ましい食行動を支援するための効果的な方策を開発することが求められている。そのためには、習慣的な食事摂取状況の正確な測定が必須となる。 この分野の研究はこれまで、個々の栄養素や食品についての1日合計の摂取量といった、「何を食べるか」や「どのくらい食べるか」という点のみが注目されてきた。 しかし近年、食事のタイミングといった「どのように食べるか」という観点の研究も増えてきている。こうした視点からの科学的知見を蓄積していくことは、より効果的な食事ガイドラインや公衆衛生上のメッセージを策定したり、健康的な食事を促進するための効果的な介入戦略を開発するために重要となる。 しかし、この分野の研究は世界的にみてもあまり進展していない。主な理由のひとつは、「大規模な集団を対象に、簡便かつ安価に使用できる測定法がない」ことが挙げられる。日本人成人222人を対象に試験を実施
そこで研究グループは、日本人成人から収集した詳細な食事調査データと、食行動に関する既存の科学的知みをもとに、朝食・昼食・夕食・間食の栄養学的質を評価することを目的とした簡易食習慣評価ツール「MDHQ」(Meal-based Diet History Questionnaire)を開発した。 今回の研究では、日本人成人222人を対象に、「MDHQ」に回答してもらうとともに、もっとも正確と考えられる食事調査法である食事記録を4日間実施してもらった。 2021年8~10月に全国14都道府県で実施した調査で得られたデータをもとに行ったもので、参加者は30~76歳の日本人成人222人(男女111人ずつ)。 研究グループは、研究の内容を説明したうえで、まず、ウェブ版の「MDHQ」に回答してもらった。「MDHQ」は、もっと近い1ヵ月間の食習慣を尋ねる質問票で、回答には約15分を要する。 その後、4日間にわたり、食べたり飲んだりしたものを量も含めてすべて記録する食事調査法である食事記録も実施してもらった。さらに、紙版の 「MDHQ」を回答してもらった。
健康食インデックス(Healthy Eating Index)に含まれる因子
出典:東京大学、2022年
「MDHQ」の回答にもとづき、専用の計算アルゴリズムを用いて、それぞれの種食品群・栄養素の摂取量を計算した。同じように、食事記録のデータをもとにして、それぞれの食品群・栄養素の摂取量を計算した。
食事の栄養学的質の評価には、健康食インデックス(Healthy Eating Index)を用いた。これは、現時点での科学的知見を網羅的にまとめたうえで定められた「アメリカ人のための食事ガイドライン」(Dietary Guidelines for Americans)の遵守の程度を測る指標で、日本人での有用性も検証されている。
朝食・昼食・夕食・間食およびすべての食事(4つの食事の合計)について、ウェブ版の「MDHQ」から算出された健康食インデックスの中央値と、比較基準となる4日間食事記録から算出された健康食インデックスの中央値を比較した。
MDHQは十分に正確 有用な食事調査ツールに
その結果、女性での朝食、夕食および間食、男性での夕食および間食以外は、統計的な有意差はみられなかった。 また、4日間の食事記録から算出された健康食インデックスとウェブ版の「MDHQ」から算出された健康食インデックスとのあいだのスピアマンの相関係数を算出した結果、朝食・昼食・間食およびすべての食事で、良好な直線関係がみられた。4日間食事記録から算出された健康食インデックス(Healthy Eating Index)の中央値とウェブ版のMDHQから算出された健康食インデックスの中央値
100点満点でスコアがつけられ、点数が高いほど食事の栄養学的質が高いことを示す。女性での朝食、夕食および間食、男性での夕食および間食以外は、統計的な有意差はなかった。
100点満点でスコアがつけられ、点数が高いほど食事の栄養学的質が高いことを示す。女性での朝食、夕食および間食、男性での夕食および間食以外は、統計的な有意差はなかった。
出典:東京大学、2022年
「ウェブ版のMDHQから推定された朝食・昼食・夕食の栄養学的質は、十分に正確であることが明らかになりました。さらに、ウェブ版と紙版のMDHQの性能は、基本的には同程度であることも分かりました」と、研究グループでは述べている。
「MDHQは、ウェブ版、紙版ともに、基準法である4日間の食事記録に比べて、朝食・昼食・夕食の栄養学的質を十分に妥当に推定する性能があることが示唆されました」。
「本研究は、朝食・昼食・夕食・間食の栄養学的質を評価できる簡易食習慣評価ツールを開発した世界初の研究です。MDHQは、食事のタイミングや規則性が、糖尿病や肥満症などを含む慢性疾患の発症にどのように関係しているかといった、時間栄養学や行動栄養学に関する研究で有用な食事調査ツールとなるだけでなく、日常の食べ方にそった食事指導や栄養教育を行なうための土台となることが期待されます」としている。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野Relative validity of the online Meal-based Diet History Questionnaire for evaluating the overall diet quality and quality of each meal type in Japanese adults (British Journal of Nutrition 2022年11月3日)
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]
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~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率 - 最新の患者調査(厚生労働省)より、国民の健康状態について分析
- 「糖尿病が強く疑われる人」の割合は男性 19.7%、女性 10.8% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」より
- 肥満の人は男性 33.0%、女性 22.3%。やせの人は男性 3.9%、女性11.5%(20 歳代女性20.7%)。65 歳以上の低栄養の人は男性 12.4%、女性 20.7% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」より
- 通院者数の上位は、男性は高血圧症、糖尿病、歯の病気。女性は高血圧症、脂質異常症、目の病気 令和1年(2019)「国民生活基礎調査」より