カラフルな「果物」を食べると肥満やメタボのリスクが減少 認知機能の低下も抑制

 

 

 ブルーベリー、オレンジ、ブドウ、リンゴなどカラフルな果物を食べていると、肥満やメタボのリスクが低下するという研究が発表された。
 果物を毎日食べていると、認知機能が低下するリスクが20%減少するという研究も報告されている。
 果物を食べるときは、できれば皮や芯まで含めて果物全体を食べるのが良いという。また、フルーツジュースは、100%果汁のものであっても、飲み過ぎは勧められない。
果物を食べると糖尿病リスクが低下
 果物を食べると糖尿病リスクが低下することが、多くの研究で明らかになっている。果物や緑黄色野菜には、ビタミンA(βカロテン)やビタミンC、カリウムなどのミネラル、フラボノイドなどが多く含まれる。これらには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する効果があると考えられている。

 果物には果糖や食物繊維が含まれており、血糖を比較的上げにくいことが知られており、糖尿病の食事療法でも勧められている。とくにブルーベリー、ブドウ、リンゴを食べると、糖尿病の発症リスクが低下するという報告がある。

 ただし、果糖を摂り過ぎると、血中の中性脂肪や体重の増加をまねくおそれがあるので、果物の食べ過ぎにも注意が必要だ。

 海外の研究では、果物を1日100g以内食べていると、血糖、中性脂肪の値が改善し、体重も増加しないことが示されている。

 果物を食べるときは、できれば皮や芯まで含めて果物全体を食べるのが良いという研究も発表された。また、フルーツジュースは植物繊維などを摂れず、ビタミンなども低下しているので、100%果汁のものであっても飲み過ぎは勧められないという。

 もちろん、果物をどれだけ食べると良いかについては個人差があるが、糖質が多過ぎる甘い果物は避けるなど、工夫をしながら食べれば、果物による健康効果を期待できそうだ。
カラフルな果物を毎日食べると認知機能の低下を防げる
 厚生労働省・農林水産省が作成した「食事バランスガイド」では、1日に野菜を350g、果物を200g摂取することが目標とされている。しかし、日本人は実際にはこれより少ない量しか食べていない。

 とくに最近の果物は甘いものが多い。果物には「太りそう」なイメージもあるため、敬遠している人もいるかもしれない。

 しかし、果物には野菜とはまた別の健康効果があることが、最近の研究で分かってきた。果物には大切な栄養素が豊富に含まれている。

 ブルーベリー、オレンジ、ブドウ、リンゴなどのフラボノイドを多く含むカラフルな果物を、毎日0.5サービング以上食べていると、認知機能が低下するリスクが20%低下するという研究を、米ハーバード大学が発表した。中くらいのリンゴ1個を食べると、だいたい1サービングになるという。

 フラボノイドは、野菜や果物に含まれる天然の化合物で、強力な抗酸化作用がある。抗酸化作用が少ない食品ばかりを食べていると、加齢とともに認知機能が低下するリスクが高くなるとみられている。

 研究チームは、開始時に平均年齢が48歳だった女性4万9,493人と、平均年齢が51歳だった男性2万7,842人を対象に調査した。20年以上の追跡期間に、健康診断をするとともに、どのような食品を食べているかについてもアンケート調査を行った。

 フラボノイドの摂取量がもっとも多いグループは1日に約600mgを摂っており、もっとも少ないグループは約150mgを摂っていた。フラボノイドは、たとえばブルーベリーには100gあたり約180mg含まれており、リンゴには約113mg含まれているという。

 解析した結果、フラボノイドをもっとも多く摂取していたグループは、もっとも少なかったグループに比べて、認知機能が低下するリスクが20%低いことが明らかになった。

 「フラボノイド、とくにフラボンとアントシアニンが豊富に含まれるカラフルな野菜や果物を食べると、脳の健康を促すのに効果的である可能性があります。最近になって果物を食べはじめたという人でも、こうした保護効果がみられました」と、ハーバード大学公衆衛生大学院のウォルター ウィレット教授は述べている。
果物を含む食事は糖尿病リスクを下げる
 1日に2サービングの果物を食べている人は、あまり果物を食べない人に比べ、2型糖尿病を発症するリスクが低いことが、オーストラリアのエディスコーワン大学の研究で明らかになった。

 果物の摂取量とインスリン感受性とのあいだに関連がみられ、これは、果物を十分に食べている人は、インスリン分泌を節約できることを示しているという。

 ただし、効果がみられたのは、皮や芯まで含めて果物全体を食べていた人で、フルーツジュースには同じ効果はみられなかった。「果物全体を食べる健康的な食事スタイルは、糖尿病リスクを下げるための優れた戦略になる可能性があります」と、同大学医療健康科学部の二コラ ボンドンノ氏は述べている。

 研究チームは、メルボルンのベイカー心臓・糖尿病研究所などが実施している「オーストラリア糖尿病・肥満・生活習慣研究」に参加した7,675人のデータを解析した。

 その結果、果物全体を食べていた人は、5年後に糖尿病を発症するリスクが36%低いことが明らかになった。

 また、果物を食べている人は、血糖値を下げるインスリンの分泌が少ない傾向があることが、果物の摂取量とインスリン感受性マーカーとの関連で示された。
肥満やメタボの人にも果物は勧められる 食べ過ぎには注意
 インスリンは、血糖をエネルギー源として利用する際に必要なホルモン。インスリン感受性が高く、インスリンの効きが良くなっている状態では、血糖値が上がりにくく、少ないインスリンで血糖をコントロールできる。反対にインスリン感受性が低いと、血糖値を下げるために多くのインスリンが分泌されてしまう。

 「血液中のインスリンレベルが高い"高インスリン血症"は、血管にダメージを与える可能性があります。高インスリン血症は、糖尿病だけでなく、高血圧、肥満、心臓病などにも関連しています」と、ボンドンノ氏は言う。

 今回の研究では、フルーツジュースは、インスリン感受性の改善や肥満リスクの低下との関連がみられないことも分かった。これについては、「フルーツジュースは、100%果汁のものであっても、植物繊維やビタミンなどが低下しており、果物そのものよりも糖質が多く含まれることが多いからだろう」と説明している。

Fructose consumption and consequences for glycation, plasma triacylglycerol, and body weight: meta-analyses and meta-regression models of intervention studies(American Journal of Clinical Nutrition 2008年11月1日)
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Long-term Dietary Flavonoid Intake and Subjective Cognitive Decline in US Men and Women(Neurology 2021年7月28日)
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