世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に


 3月4日は「世界肥満デー」(World Obesity Day)だった。
 世界肥満連合(WOF)によると、世界的に肥満が急増し、1975年からほぼ3倍に増えた。
 体重を少し減らしただけでも、血圧や血糖、コレステロール、中性脂肪などの数値の改善を期待できる。
 肥満は新型コロナのリスクも高める。肥満や過体重を減らすための取組みが世界中で行われている。
世界の20億人が肥満か過体重
 3月4日は「世界肥満デー」(World Obesity Day)だった。

 肥満や過体重は世界中で急速に増えている。世界肥満連合(WOF)によると、世界的に肥満が急増し、1975年からほぼ3倍に増えた。

 2016年の時点で、BMI(体格指数)が25以上30未満の過体重の成人の数は世界で13億700万人、BMIが30以上の肥満の成人の数は6億7,100万人に上る。

 有効な対策をしないでいると、2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満になる可能性がある。うち3分の1はBMI(体格指数)が35以上で、医学的な介入が必要な高度な肥満だ。

 BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割り(体重を身長で2回割り)計算する。たとえば、身長170cmで体重75kgの人の場合、75÷1.7÷1.7=25.95で、BMIは26になる。日本ではBMIが25以上だと肥満と判定されるが、海外ではBMI30以上が肥満だ。

肥満や過体重はなぜ増えている?
 肥満や過体重の原因は、食べ過ぎや運動不足、睡眠不足や睡眠の質の低下、生活リズムの乱れ、過剰なストレスなど、不健康な生活スタイルが続くことだ。

 食事で摂取したカロリーが、消費するカロリーを上回ると、体重が増える。摂取カロリーと消費カロリーのアンバランスは、日本を含む世界中で問題になっている。

 世界で共通してみられる、肥満になりやすい生活スタイルは以下の通り――。
▼脂肪や糖質の多い、エネルギー密度の高い食品を摂り過ぎている。
▼運動不足が増えている。座ったまま過ごす時間の多い形態の仕事が増え、また乗用車など交通手段が発達し、都市化も進んでおり、体を動かす機会が減っている。

世界肥満デー2021 公式ビデオ(世界肥満連合)

肥満や過体重は予防・改善が可能
 肥満や過体重は、食事や運動などの生活スタイルを見直すことで、予防・改善が可能だ。

 肥満は2型糖尿病の重大な原因になる。ノースウェスタン大学医学部の研究によると、米国で新規に2型糖尿病症を発症する患者の半数は、肥満を解消することで糖尿病を予防できる可能がある。研究は医学誌「Journal of the American Heart Association」に発表された。

 「新規に発症した2型糖尿病のうち、3分の1から2分の1は肥満が原因と考えられます」と、同大学医学部医療センターの内科医であるナタリー キャメロン氏は言う。

 研究グループは、米国で実施されている「アテローム性動脈硬化症の多民族研究」(MESA)や、米国民健康栄養調査(NHANES)などの大規模調査のデータを解析した。

 「肥満に対策し減らすことは優先される課題です。低脂肪でカロリーを抑え、健康的で栄養価の高い食事をし、運動や身体活動を増やし、肥満を防ぐためのコミュニティ・プログラムを開発するなど、健康的な生活スタイルをサポートする公衆衛生上の取り組みにより、2型糖尿病の発症や進展を大幅に抑えられる可能性があります」と、キャメロン氏は言う。
体重を少し減らしただけでも効果がある
 肥満を予防・改善するために効果的なのは、食事療法と運動療法により、体重をコントロールすることだ。

 体重を減らしただけで、血圧や血糖、コレステロール、中性脂肪などの数値が改善することが多い。実際に数値が改善していれば、それが励みになり食事療法を続けやすくなる。

 肥満のある2型糖尿病の人を対象にした米国の試験では、食事と運動で体重を8.6%減少させると、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cが下がり、正常値にまで改善することが示された。

 ウォーキングなどの運動を続けることも重要だ。台湾で実施された44万人超を対象とした大規模研究では、1日にわずか15分の軽度な運動を実践するだけで、糖尿病や心血管疾患の発症が明らかに少なくなった。

 健康的に減量するために勧められるのが、まずは3~6ヵ月かけて現在の体重を3%減らす「3%ダイエット」だ。たとえば体重80kgの人では、体重の3%は約2.4kg。わずかな減量で達成可能な目標であり、その効果は大きい。
肥満は新型コロナのリスクも高める
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると、肥満のある人ではより重症化しやすいことが分かっている。肥満が流行している問題は、COVID-19のパンデミックにより、より深刻になっている。

 英国のキングス カレッジ ロンドンなどの調査によると、肥満のある人が新型コロナを発症すると、入院し集中治療室(ICU)が必要になり、重症化し死亡するリスクが高くなる。BMIが増加するにつれ、リスクは大幅に高まる。

 新型コロナの影響は今後数年間続くとみられており、肥満が健康にもたらす悪影響がより強く懸念されている。肥満のある人は、肥満を解消するために、いますぐ行動するべきだ。

 世界肥満連合(WOF)がまとめた「肥満アトラス2021年版:COVID-19と肥満」によると、BMIが35~40の人、肥満のない人に比べ、新型コロナによる死亡リスクが40%増加する。BMIが40を超える人では死亡リスクが90%増加する。集中治療室に入れられた新型コロナの重症患者の7.9%がBMIが40を超えていたという報告もある。

 オーストラリアのシドニー大学のティム ロブスタイン教授は、「日本や韓国など、成人の肥満レベルが低い国では、新型コロナによるコロナの死亡率が低いことが示されています」と指摘している。
肥満の人もワクチンの接種は優先される
 「肥満が新型コロナのリスクを高めることを知ることが大切です。糖尿病や心血管疾患などの患者と同様に、肥満者もワクチンの接種対象として優先されるべきです」と、英国のリバプール大学のジョン ワイルディング教授は言う。

 「体重を減らすのが難しく、それを維持するのはさらに難しいという人も多くいます。そうした人は自分だけの力で体重を減らすのは簡単ではありません。効果的に体重をコントロールできるよう、社会的に支援する仕組みも必要です」と、英国公衆衛生サービスの主任栄養士であるアリソン テッドストーン氏はいう。

 「現在までに示されたエビデンスによると、肥満や過体重であると新型コロナや、2型糖尿病や心臓病、脳卒中、がんなどの、生命を脅かす多くの病気のリスクが高まることは明らかです。体重を減らすことは健康に大きな利益をもたらし、COVID-19のリスクから保護することにもつながります」としている。

世界肥満デー(世界肥満連合)

Obesity and overweight(世界保健機構 2020年4月1日)
Motivational interviewing improves weight loss in women with type 2 diabetes(Diabetes Care 2007年3月)
The role of physical activity in chronic kidney disease in the presence of diabetes mellitus: a prospective cohort study(American Journal of Nephrology 2014年1月)
Reduce obesity to prevent half of new Type 2 diabetes cases in U.S.(ノースウェスタン大学 2021年2月19日)
Quantifying the Sex‐Race/Ethnicity‐Specific Burden of Obesity on Incident Diabetes Mellitus in the United States, 2001 to 2016: MESA and NHANES(Journal of the American Heart Association 2021年2月10日)