アルコールがメタボ・血圧・脳卒中を悪化 飲み過ぎないための5つの工夫

 お酒を飲み過ぎている人は、ウエスト周囲径が増え、血圧などの検査値も悪化し、脳卒中などのリスクが上昇することが明らかになった。
 お酒を飲み過ぎないようにするための工夫の仕方も公開されている。
アルコールは50歳以上の入院原因のトップ
 新型コロナウイルス感染症が拡大しており、これまでに経験したことのない見えないウイルスに不安を抱いている人が多い。リモートワークの増加や、外出の自粛により、ストレスを抱えている人も増えている。

 そんな時に気を付けたいのは、アルコールの飲み過ぎだ。

 英国で発表された新しい研究によると、59歳以上でお酒を飲む人の半数以上が大量飲酒をしており、内臓脂肪型肥満や脳卒中などのリスクが上昇している。

 ユニバーシティ カレッジ ロンドン疫学・ヘルスケア研究所のリンダング ファット博士氏は、「お酒の飲み過ぎが健康に悪いことは広く知られるようになっていますが、現在もとくに高齢者で過剰飲酒が多くみられます。50歳以上では、入院が必要となった原因のトップはアルコール関連なのです」と言う。

 同大学の研究チームは、英国の34~56歳の公務員を対象に行われている大規模な縦断的研究「ホワイトホールII研究」に参加した、59〜83歳(平均年齢69歳)の4,820人の男女を調査した。

 多忙な臨床や保健指導の場面で、より手軽に利用できるスクリーニングテストとして、3項目に答えるだけで危険な飲酒が分かる「AUDIT-C」という手法が注目されている。

 「AUDIT-C」を行い、男性は6点以上、女性は4点以上が危険な飲酒と判定され、保健指導により飲酒量を減らすことが望まれる。

 今回の研究では、飲酒者の半数以上(56%)が、過去に危険な飲酒をしており、21%が危険な飲酒を現在しており、5%が一貫してずっと危険な飲酒を続けていたことが分かった。
お酒の飲み過ぎにより高血圧や腎臓病が悪化
 危険な飲酒をずっと続けている人は、そうでない人に比べ、高血圧や腎臓病の検査値が悪かった。収縮期血圧は2.44mmHg高く、肝臓疾患のマーカーであるγ-GTは22.64IU/L高かった。

 さらに、危険な飲酒により、脳卒中のリスクが3倍高く、ウエスト周囲径も上昇した。

 ウエスト周囲径は、過去に危険な飲酒をしていた人では1.88cm増え、危険な飲酒を現在している人では2.44cm増え、ずっと危険な飲酒を続けている人では3.85cm増えた。

 同研究所のアニー ブリットン教授は、「脳卒中と肝疾患の有病率が着実に増加していますが、とくに高齢者で大量飲酒が依然として多くみられます。スクリーニングテストを行い早期介入することで、危険な飲酒を減らすことが必要です」と述べている。
適度な飲酒量はどれくらい?
 米国心臓学会(AHA)によると、アルコールにはストレス解消や、人間関係を円滑にするなどメリットがある一方で、過剰な飲酒は確実に体にダメージを与える。

 日本では、とくに病気がなくアルコールが飲める人でも、純アルコールに換算して、男性で1日20g、女性ではその半分が適度な量とされている。

 純アルコールに20gに相当する酒量は、ビール(アルコール度数5%)はロング缶1本(500mL)、日本酒1合(180mL)、ウィスキーはダブル1杯(60mL)、焼酎(25度)はグラス1/2杯(100mL)、ワインはグラス2杯(200mL)、チューハイ(7%)は缶1本(350mL)。

 なお、アルコールの吸収と分解には個人差がある。お酒に弱い人はこれよりも少ない量に抑えた方が良い。
飲酒は糖尿病の原因になる
 適度な飲酒は、血糖をコントロールするインスリンへの反応(感受性)を改善すると考えられているが、飲酒が長期間に及んだり多量飲酒になると、やがてインスリンの分泌量が低下していき、糖尿病のリスクが上昇する。

 アルコールを飲める人でも、肥満や2型糖尿病を予防・改善するために、飲み過ぎは控えるべきだ。また、お酒を飲むときは、食事の量(カロリー)や内容にも注意することが重要。
脂質異常症の原因にも
 飲酒は血液中の中性脂肪を増加させ、脂質異常症の原因になる。飲酒により、食事の量が増え、脂肪の多い食事を増えがちになる。過度の飲酒により中性脂肪が上昇すると、皮下や内臓に脂肪が蓄積しやすくなる。

 痛風(高尿酸血症)の原因である尿酸値の上昇も、アルコールの摂取にともない上昇する。アルコール飲料に含まれるプリン体も尿酸値を上昇させる。
肝臓や膵臓も悪くなる
 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれており、障害がかなり進まないと自覚症状があらわれない。そのため、お酒をよく飲む人は、症状がなくともAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの血液検査を受けることが重要となる。

 また、アルコールを飲み過ぎると、肝臓だけでなく膵臓も悪くなる。純アルコールに換算して1日に100g以上の飲む人では、慢性膵炎のリスクが11倍以上に上昇するという報告がある。

 アルコールにより肝臓病や膵臓の病気になってしまうと、根本的な治療は断酒となる。治療を行って一時的に回復しても、アルコールを飲み始めると再発リスクが高くなる。
お酒を飲み過ぎないための5つの工夫
 米国のメイヨークリニックは、お酒を飲むときは、以下のことに気を付けることを勧めている。

● お酒を飲むと栄養が乱れやすい

 アルコールはカロリーがあるが、ビタミンやミネラル、タンパク質といった必要な栄養素を含んでいないので、「エンプティカロリー」と呼ばれている。

 したがって、飲酒時の栄養不足やアルコール性肝障害により、タンパク質、ビタミンB1・B6・B12、ビタミンEやミネラル(カルシウム・鉄・マグネシウム)などの栄養素の不足が起こる。お酒を飲む人は栄養にも配慮する必要がある。

● 空腹時に飲まない 食べるときは低カロリーの食品を

 空腹時は胃が空になっており、お酒を飲むとあっという間にアルコールが吸収され、悪酔いの原因になる。また、強いお酒は胃の粘膜に直接ダメージを与えてしまう。

 アルコールを飲むときは、食事の予定まで含めて考え、つまみも低カロリーなものにし、カロリーを必要以上に摂取しないようにする。

 脂っこいものは中性脂肪を増やす原因になる。塩分の強いものもなるべく避ける。タンパク質を多く含む肉や魚、ビタミンや食物繊維の豊富な野菜や果物などを、バランス良く食べるようにする。

● 休肝日をつくる 毎日の飲酒は危険

 適度な量のアルコールを飲んでいると、糖尿病や心臓病の発生率が低下するという報告もあるが、多くの研究では、毎日の過剰な飲酒は、高血圧、肥満、脳卒中などの深刻な心血管疾患のリスクを確実に上昇させることが示されている

 アルコールに対して耐性ができ、毎日飲んでいると飲む量が多くなってしまう。1日に飲む量が増えてきたと感じたら、飲酒をしない日をもうけて、アルコールの摂取量を減らす取組みが必要になる。

 まずは週に2日程度の休肝日を作り、体と心を休ませるようにしよう。

● リラックスできる方法を見つける

 ストレス解消のために、アルコールを飲む人も多い。確かに、ストレスや不安を解消するという点でアルコールは強力と言える。

 ただし、健康的な食事と、体を活発に動かすこと、十分な睡眠をとることは、飲酒よりもはるかに大きな健康上のベネフィットをもたらすことも明らかになっている。

 深呼吸、ヨガ、瞑想などのリラクゼーションできる方法を、まずは1日10分から試してみる。

● アルコールを無理にすすめない はっきりと断ることも大切

 お酒に対する強さ(アルコールの代謝能力)は人によって異なる。自分にとっての適度な飲酒ペースを知っておくことも必要。

 また、飲めない人や飲まない人には、無理にすすめない。飲めない人のためにノンアルコール飲料や清涼飲料を用意しておく気づかいも大切。

 お酒を控えている人は、飲めない理由を相手にはっきりと説明すると効果的。遠慮したり、言葉があいまいだと、相手のペースに引き込まれてしまう。

Heavy drinking into older age adds 4 cm to waistline(ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2020年4月10日)
A life‐time of hazardous drinking and harm to health among older adults: findings from the Whitehall II prospective cohort study(Addiction 2020年3月31日)
AUDIT-C(久里浜医療センター)
3項目の質問に回答するだけでリスクの高い飲酒をテストできる「AUDIT-C」の具体的な使い方を解説している。
保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)と減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き(厚生労働省)
Is drinking alcohol part of a healthy lifestyle?(米国心臓学会 2019年12月30日)
Alcohol use: Weighing risks and benefits(メイヨークリニック 2019年10月26日)