米を食べると肥満に対策できる 1日1杯のごはんが肥満度を低下
2019年05月29日
米を多く摂取する国では肥満リスクが低下することが、日本の研究チームが136ヵ国を対象とした国際調査で明らかにした。
1日あたり150g(茶碗1杯)以上の米を食べると、肥満度が低下するという。
1日あたり150g(茶碗1杯)以上の米を食べると、肥満度が低下するという。
1日50g増やしただけで肥満リスクが1%減
米の摂取量が多い国(平均150g/日)では肥満が少なく、米の摂取量が少ない国(平均14g/日)は肥満が多いことが、136ヵ国を対象とした国際調査で明らかになった。詳細は英国のグラスゴーで開催された欧州肥満学会(EASO)の年次学術集会で発表された。
総カロリー摂取費、教育、喫煙、1人当たりの国内総生産、医療費、生活スタイル、社会経済的な要因を調整した後でも、米の摂取量と肥満は関連があることが示された。
米の摂取量を、1人当たり50g/日とわずかに増やしただけで、肥満リスクを1%減らすことができるという。ごはん150gは茶碗1杯程度で、カロリーは約240kcal。だ。研究チームは、世界の18歳以上の大人の肥満の数を、6億5,000万人から6億4,350万人に減らすことができると推計している。
研究は、同志社女子大学の今井智子教授らによるもの。「米を主食として食べる国では肥満者の割合が低いことが示唆されている。そのため、米をベースにした日本食やアジアの食事スタイルは肥満を予防する助けになるだろう。世界的に肥満度が上がっているため、肥満対策のために、より多くの米を食べることが推奨される」と、今井教授は述べている。
米と肥満の関連 136ヵ国のデータを調査
EASOによると、世界の成人のうち、2億人以上の男性と3億人近くの女性は肥満だ。世界の20歳以上の成人のうち、35%以上が過体重で、11%が肥満だ。
過体重や肥満は、2型糖尿病の44%、虚血性心疾患の23%、がんの7~41%に影響している。過体重や肥満が原因で死亡する人の数は年間280万人以上に上り、世界の死亡リスクの第5位に位置づけられている。
日本でも食の欧米化が進んでいるが、米を中心とした食事スタイルが推奨されることは、欧米諸国にも当てはまるという。
これまでの研究で、食物繊維と全粒穀物を多く摂取している人では、あまり摂取していない人に比べ、肥満が少なくコレステロール値も低く、2型糖尿病などの非感染性疾患(NCD)などのリスクが低いことが知られている。しかし、米の摂取と肥満の関連はよく分かっていなかった。
そこで研究チームは、国連食糧農業機関(FAO)の人口が100万人以上の136ヵ国のデータを使用し、食事の米(白米、玄米、米粉を含むすべての米製品)の相対的なカロリー摂取量(g/日)とカロリー消費量(kcal/日)の関連を調べた。
全粒穀物は脂肪が少なく血糖上昇を抑えられる
肥満率、教育年数、65歳以上の人口、1人当たりの国内総生産(GDP)、医療費によってデータを解析し、米の摂取量によって2つのグループに分類した。
その結果、米を多く摂取している国の順位は、(1)バングラデシュ(473g/日)、(2)ラオス(443g/日)、(3)カンボジア(438g/日)、(4)ベトナム(398g/日)、(5)インドネシア(361g/日)となった。逆に少なかった国は、(89)イギリス(19g/日)、(87)米国(19g/日)、(81)スペイン(22g/日)、(77)カナダ(24g/日)、(67)オーストラリア(32g/日)などだった。
米を多く摂取している国では、総カロリー消費量、喫煙率、肥満率、65歳以上の人口、GDP、教育、医療費などが比較的低レベルであることが分かった。
米を多く食べると、体重増加からの保護効果を得られることが示された。全粒穀物に含まれる食物繊維、ビタミンやミネラルなどの栄養素、植物性化合物は、満腹感を高め、食べ過ぎを防ぐことにつながる。米も脂肪が少なく、食後の血糖上昇も比較的抑えられる。
「米の摂取量を適切にすることで、肥満を予防できる可能性があります。一方で、米を過剰摂取するとメタボリックシンドロームや2型糖尿病の発症リスクが上昇するという報告もあります。食べ過ぎには注意が必要です」と、今井教授は言う。
今回の研究では、米の摂取と肥満の関係は国レベルで解明されていないので、「さらなる調査が必要」と研究者は述べている。横断研究だけでは交絡因子の結果として、誤った関連性が導かれるおそれがあるが、米の摂取と肥満の関連は、生活スタイルや社会経済的な因子を調整した後でも示された。
研究者らは、米の摂取が個人でも肥満率の改善につながることを縦断研究で確かめることを目指している。
International study suggests that eating more rice could be protective against obesity(欧州肥満学会 2019年4月30日)Obesity Statistics(欧州肥満学会)
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