日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」

 肥満症の撲滅を目指して、関連する23学会が領域を超えて協働する――10月に神戸で開催された第39回日本肥満学会で、「神戸宣言2018」が発表された。日本肥満学会や日本糖尿病学会など、多くの学会が連携して、肥満症対を策領域横断的に推し進める。
23学会が連携して肥満症の撲滅に挑む
 「肥満症」とは肥満に起因・関連する健康障害を有するか、健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積しており、減量治療を必要とする状態。肥満は疾患ではないが、肥満症は疾患であり、医学的な介入が必要となる。

 日本肥満学会はこれまで「肥満症治療ガイドライン 2006」を策定。肥満という身体状況の判定と、医学的観点から減量治療を必要とする肥満症を疾患として診断することとを明確に区別している。

 基本的な考え方は、肥満の程度に関わらず、体重を減らすことによって医学上のメリットのある人を適切に選び出し、医学的に適切な治療・管理を行えるようになるということだ。

 一方で、肥満がもたらす健康障害は多岐にわたることから、その予防・治療にはさまざまな専門家の協力が必要となる。そこで日本医学会連合の呼びかけの下、肥満症に関連する23学会による「領域横断的な肥満症対策の推進に向けたワーキンググループ」が結成され、肥満症の撲滅を目指し、領域を超えて協働することが合意された。

 ワーキンググループに属する23学会は次の通り――日本肥満学会、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本肝臓学会、日本腎臓学会、日本外科学会、日本整形外科学会、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本病態栄養学会、日本体力医学会、日本癌学会、日本疫学会、日本老年医学会、日本脳卒中学会、日本肥満症治療学会、日本臨床栄養学会、日本痛風・核酸代謝学会、日本総合病院精神医学会。
肥満症は11の疾患に関連 がんや認知症にも影響
 第39回日本肥満学会で行われた合同特別プログラムで、ワーキンググループ・グループ長の春日雅人氏(朝日生命成人病研究所所長)により、その決意が「神戸宣言2018」として発表された。

 肥満症には、「糖尿病・耐糖能異常」「腎臓病」「高血圧」「心筋梗塞、狭心症」「脳梗塞」「脂質異常症」「脂肪肝」など11の疾患が関連する。それ以外にもがんや脳血管性認知症、筋肉量減少など多くの病気との関連が指摘されている。

 「ワーキンググループを結成することで、肥満症に関して領域横断的に対応できるようになった。約1年間にわたり3回の会合を行い、それぞれの専門の立場から肥満症の予防・治療に関する意見を集めてきた。わが国の英知を結集し、領域横断的に対応することが必要」と、春日氏は強調する。

 フレイルやサルコペニアなど筋肉量減少に配慮が必要な高齢者の肥満症、薬物療法や外科治療が選択肢となる高度肥満症、家庭や学校と改善に取り組む小児肥満症、肥満症治療薬の開発など、肥満症の治療・予防の方法は幅広い。ワーキンググループは来年4月をめどに、まとめを出す方針だ。
「神戸宣言2006」は成功 今後の発展に期待
 ワーキンググループの今後の活動について、日本肥満学会理事長の門脇孝氏(東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授)は「各学会が診療ガイドラインの中で肥満症の問題を掘り下げ、治療や予防に生かしていく。有効な対策のために社会を含めた多面的な協力・連携が重要」と豊富を語る。

 第27回日本肥満学会(会長:春日雅人)では、「神戸宣言2006」を発表。肥満やメタボリックシンドロームの対策として、食生活の改善と運動の増加を図り、まずは3kgの減量、3cmのウエスト周囲径の短縮を実現する「サンサン運動」を提案した。

 この12年間でメタボリックシンドロームは広く社会に認知されるようになり、特定健診・特定保健指導も成果を得られている。「神戸宣言2006では一定の成功を収められた。神戸宣言2018でも同様に、肥満症対策の啓発、周知が進み、国民の健康増進に役立てられると期待している」と、春日氏は言う。

日本肥満学会