脳卒中は暑い夏に増える 対策すれば脳卒中の90%を予防できる
2016年08月10日
7~8月の夏に脳卒中を発症する人が増える。10項目の対策をすると、脳卒中の90%を予防できることが最新の研究で明らかになった。
脳卒中は夏に多い 脱水による水分不足が原因
日本脳卒中協会は5月の「脳卒中週間」に合わせて、「脳卒中セミナー」を各地で開催している。脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう疾患だ。
脳卒中は「脳血管障害」とも呼ばれ、血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」に分けられる。このうち「脳梗塞」は、日本人で発症率が高い。
「脳卒中は冬に多い」と思われがちだが、脳梗塞に限ると、むしろ7~8月の夏に発生数が多くなっており注意が必要だ。
夏に脳梗塞が起こりやすい理由として挙げられるのが、脱水による体内の水分不足だ。夏には汗を多くかくため、それに見合った量の水分を補給していないと、体が脱水症状に陥り、血液が「ドロドロ状態」となる。その結果、血管が詰まりやすくなる。
また、寒さで血圧が上がりやすい冬とは逆に、夏は体の熱を放出しようと血管が拡張しやすくなる。この場合、生理機能が低下している人や、降圧剤などを服用している人は、血管拡張のために血流が遅くなり、血栓ができやすい状態になる。
夏の脳梗塞を防ぐために こまめな水分補給が必要
糖尿病の人は脳梗塞のリスクが2~4倍に上昇
脳梗塞が起きたらすぐに治療を行うことが重要
脳卒中を減少させるためには予防が第一で、糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病の管理も重要となる。
万が一、脳卒中を発症した場合でも、急性期治療は進歩しており、少しでも早く治療を受ければ救命や後遺症の低減を得られる。
米国脳卒中協会では、より簡潔に、3つの症状を取り上げた「FAST(ファスト)」という標語を試すことを勧めている。このうちひとつでも該当すれば脳卒中を疑い、すぐに救急車を呼ぶよう呼びかけている。
脳卒中を予防するための10ヵ条
脳卒中90%は予防できる
生活スタイルの改善が必要
カナダのマクマスター大学公衆衛生研究所のマーティン オドンネル氏は、脳卒中の危険因子について研究している。「脳卒中の90%は10項目の危険因子が原因となっている。これらを適切に管理すれば予防できる可能性が高い」という調査結果を発表した。
世界32ヵ国の脳卒中患者を含む約2万7,000人を対象に調査を実施。結果は医学誌「ランセット」オンライン版に発表された。
その10項目の危険因子とは、▽高血圧(脳卒中リスクを約48%軽減)、▽運動不足(同36%)、▽脂質(脂質異常症)(同27%)、▽不健康な食事(同23%)、▽肥満(同19%)、▽喫煙(同12%)、▽心疾患(同9%)、▽糖尿病(同4%)、▽飲酒(同6%)、▽ストレス(同6%)。
オドンネル氏らは、調査データをもとに、脳卒中を引き起こす原因として知られる危険因子ごとに、脳卒中患者数をどの程度増やしたかを示す「人口寄与危険度割合」を算出した。
これら10個の危険因子を改善した場合、全ての地域、年齢、男女でのリスク低下は90.7%に上ることが明らかになった。これらの危険因子は全て、コントロールが可能だ。
調査の対象は、北南米や欧州、中東、アフリカ、アジア地域の国々とオーストラリアの2万6,919人。このうち1万3,447人が脳卒中患者だった。アジア地域では中国、インド、パキスタン、フィリピン、タイ、マレーシアが対象となっている。
地域によって危険因子をもっている人の割合や、個々の危険因子と脳卒中発症との関係の強さに違いがあり、たとえば、高血圧は北米、オーストラリア、西欧では約39%の脳卒中を引き起こすが、東南アジアでの寄与率は約60%だった。
脳卒中の予防と患者・家族の支援を目指して(日本脳卒中協会)生活スタイルの改善が必要
脳卒中治療ガイドラインン(日本脳卒中学会)
Global study shows stroke largely preventable(マクマスター大学 2016年7月15日)
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