特定保健指導の効果 腹囲や血糖値の改善は5年間続く 医療費も減少

 特定保健指導を受けた人は5年間、血糖や血圧、中性脂肪などの検査値の改善効果が続くことが、「電子レセプト情報・特定健診等情報データベース」(NDB)の解析で判明した。

 厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」のワーキンググループは、「特定保健指導」による検査値への影響と医療費の適正化効果について経年的な分析を実施し、2015年度の分析結果を公表した。国が保有するサーバに特定健診などのレセプト情報を集約した「電子レセプト情報・特定健診等情報データベース」(NDB)を活用して全国的な調査で経年的な効果を検証した。
特定保健指導後の5年間に検査値の改善効果が継続
 今回の調査は、2008年度から2013年度のデータを使用して、(1)検査値への影響及び医療費適正化効果の経年分析について、(2)保健指導レベルの推移、(3)2年連続で保健指導を行うことの効果について分析したもの。

 特定保健指導の対象となった40歳から74歳の加入者のうち、2008年度に特定保健指導のメニューを6ヵ月後まで受けた人を「参加者」、2008年度から2013年度まで一度も特定保健指導を受けていない人を「不参加者」として、特定健診の検査値の推移を比較。364保険者の20万~22万人分のデータを活用して分析した。

 その結果、「積極的支援」を受けた参加者は、不参加者と比較すると、おおむね全ての検査値において、特定保健指導後の5年間に検査値の改善効果が継続していることが確認された。特定保健指導は糖尿病、高血圧の予防の観点からも有効である可能性が示唆された。

 「積極的支援」を受けた参加者は、2008年度と比べて2013年度では、腹囲は男性で1.47cm、女性で2.16cm、それぞれ減少した。同じく体重は男性で1.25kg、女性では1.63kg、それぞれ減少した。
 血糖値の平均値を示すHbA1c値は、2009年度と比べて2013年度では、男性で0.11%、女性で0.08%それぞれ増加したが、大きな変動は抑えられた。血圧値(収縮期血圧)は男性で0.63mmHg、女性で2.80mmHg、それぞれ減少した。中性脂肪値は男性で36.23mg/dL、女性で31.79mg/dL、それぞれ減少した。
 2008年度から25年度の間に3年連続して特定健診を受診し、2年連続して積極的支援の対象となった人を対象に、1回目、2回目ともに積極的支援を終了した人(A群)と、1回目に積極的支援を終了したが2回目には特定保健指導を受けていない人(B群)を対象に解析したところ、A群では体重・腹囲など多くの検査項目が改善したが、B群では1回目の保健指導で改善効果があったにもかかわらず、2回目に保健指導を受けなかったことで悪化傾向がみられた。
特定保健指導の参加者は医療費が減少
 また調査では、メタボリックシンドロームの人が併発しやすい高血圧症と脂質異常症、糖尿病に関連する入院外医療費などの推移も、参加者と不参加者とで比較した。参加者の方が医療費が低く抑えられることが明らかになった。

 特定保健指導(積極的支援)の参加者と不参加者の1人当たり入院外保険診療費を比べたところ、参加者では2009年度は男性で5,830円、女性で7,870円少なかった。2013年度は男性で5,720円、女性で1,680円少なかった。
 2009年度から2013年度にかけて同様の傾向がみられ、男女とも全ての年齢階級で参加者の保険診療費が有意に少なく、参加者の方が保険診療費が高いという階級はひとつもなかった。

第19回保険者による健診・保健指導等に関する検討会(2016年4月13日)