がんリスクは糖尿病予備群の段階で上昇
がん予防のために糖尿病を予防

 糖尿病のコントロール指標になっているHbA1c値が高いほど、がんを発症する危険性が高いことが、日本人約3万人を対象とした大規模研究で明らかになった。がんリスクは糖尿病と診断されないがHbA1c値の高い「予備群」の段階で上昇するという。

 「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究では、46~80歳の男女約3万人を対象に2003~2005年まで追跡調査した。
HbA1c値が高いとがんの発症リスクが上昇
 研究グループは、1990と1993年に岩手、長野などの9保健所で、1998~2000年および2003~2005年に実施した糖尿病調査に協力した人のうち、HbA1cのデータがあり、初回の調査時までにがんに罹患していなかった2万9,629人(男性1万1,336人、女性1万8,293人)を対象に、HbA1cとがん罹患リスクとの関係を調べた。

 HbA1cは1~2ヵ月の血糖値を反映する検査値で、HbA1c(6.5%以上)は糖尿病の診断基準のひとつとし採用されており、血糖コントロールの指標にもなっている。

 過去の研究で、糖尿病患の人はHbA1c値が高いと、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、子宮内膜がんなどのがん罹患リスクが1.5~4倍高く、全がんも約1.2倍高いと報告されている。

 このように糖尿病はがんの危険因子と考えられているが、HbA1cとがんリスクとの関連は十分に解明されていない。そこで、研究グループでは、日本人を対象とした大規模研究の糖尿病調査のデータを用いて調査した。

 研究グループは、糖尿病調査で測定したHbA1cの値を用いて、「5.0%未満」「5.0~5.4%」「5.5~5.9%」「6.0~6.4%」「6.5%以上」「既知の糖尿病」の6つの群に分けて、その後の全がんリスク、臓器別リスクを分析した。追跡期間中に1,955人ががんを発症した。

 その結果、HbA1c値「5.0~5.4%」を基準とした場合、がんの発症リスクは「5.5~5.9%」で1.01倍、「6.0~6.4%」で1.28倍、「6.5%以上」で1.43倍、「既知の糖尿病」で1.23倍に上昇した。

高血糖が酸化ストレスを高め発がんにつながる
 がん種別に解析したところ、HbA1c値が高い群で大腸がん、特に結腸がんのリスクが上昇しており、肝がんを除外すると、HbA1c値が高いと全がんリスクは直線的に上昇することが判明した。

 糖尿病の人とHbA1c値が高い人では、がんの発症リスクが上昇することが明らかになった。「慢性的な高血糖が全がんリスクと関連することが裏付けられた。糖尿病と診断されないがHbA1c値の高い予備群の段階でがん発症リスクは上昇する。がん予防のためにも糖尿病を予防することが重要だ」と研究者は述べている。

 高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながると考えられている。また、がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため、慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性もある。

 なお、HbA1cが5%未満の人でもがんリスクは1.27倍に上昇した。肝硬変などでは、実際の血糖値に比べてHbA1cが低値を示すことが多く、肝硬変は肝がんになりやすい状態だ。その結果として、低HbA1群で、肝がんリスクが上昇していた可能性がある。

 研究の詳細は医学誌「International Journal of Cancer」オンライン版に発表された。

多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
High hemoglobin A1c levels within the non-diabetic range are associated with the risk of all cancers(International Journal of Cancer 2015年12月1日)