がんや糖尿病などの慢性疾患で年間1600万人が死亡 WHO報告書

 2型糖尿病やがんなど不健康な生活スタイルが原因で起こる疾患により、毎年1,600万人が死亡していることが、世界保健機関(WHO)の報告書で明らかになった。
毎年1,600万人がNCDが原因で早死
 WHOは心血管疾患、糖尿病、肺疾患、特定のがんなどの疾患を「非伝染性疾患」(NCD)として位置付けており、世界規模の対策が必要だと訴えている。

 WHOがまとめた「慢性疾患の予防と管理」報告書は、喫煙や大量の飲酒、脂肪分や塩分、糖分の過剰な摂取などの不健康な生活スタイルが、全世界で死亡原因の上位を占めるさまざまな疾病のまん延を引き起こしていると指摘している。

 それによると、全世界で年間に3,800万人がNCDにより死亡している。うちの1,600万人は、70歳未満だった。また、全世界では毎年1,600万人が、NCDが原因で早死にしており、うち82%は低・中所得国に集中している。

 「NCDは80~90歳代の高齢者だけでなく、30~40歳代の若い世代でも増えています」と、『慢性疾患の予防と管理』報告書をまとめたシャンティ メンディス氏は言う。

 NCDがもたらす経済的な損失は全世界で820兆円(7兆ドル)に上り、有効な対策を施さないと次世代に持ち込まれることになると警告している。

 WHOは、2011~2025年にNCDによる早死を減らすために、9項目の対策を世界規模で拡げることを求めている。

NCDに対策するためにWHOが掲げる9項目の目標
▽NCDによる早期の死亡数を25%減少
▽アルコールの過剰摂取を10%減少
▽運動不足を10%減少
▽塩分の過剰摂取を30%減少
▽15歳以上の喫煙者を30%減少
▽高血圧の発症を25%減少
▽2型糖尿病と肥満の予防
▽心臓病と脳卒中を防ぐために必要な薬物療法を受けられるようにする
▽80%の人が必要な医療サービスを受けられるようにする

健康増進を促す政策が次世代の未来を救う
 トルコは国民の喫煙率を下げるために、たばこ製品のパッケージの65%にたばこの害を訴える警告ラベルを表示することを2012年に義務化した。また、たばこ税を販売価格の80%まで引き上げ、たばこの広告やキャンペーンなどへの資金提供を全面的に禁止した。その結果、喫煙率は13.4%まで低下した。

 また、ハンガリーは糖分や塩分、カフェインなど、健康に影響する栄養成分を規制する法律を施行し、1年後に食品メーカーの40%が課税対象となる成分を減らした食品を販売するようになった。国民はより健康的な食品を選ぶようになり、糖分や塩分の多い食品の売上げだがは27%減少した。

 現在、70ヵ国がNCD対策に取り組んでおり、69ヵ国がたばこ規制を策定し、66ヵ国がアルコール抑制を政策として実行しているが、「まだ十分ではない」としている。

 「NCDの多くは予防が可能だ。健康増進を促す政策を行えば、次世代の未来を救うことができる」と、WHOのマーガレット チャン事務局長は言う。人々を健康な生活に導くための政策に、年間に約13兆円(112億ドル)、1人当たり1~3ドルを費やす必要があるという。

Noncommunicable diseases prematurely take 16 million lives annually, WHO urges more action(世界保健機関 2015年1月19日)