肥満症が新型コロナ感染症を重症化する!

松澤 佑次
日本肥満症予防協会 理事長

 世界で新型コロナウイルスパンデミックという今世紀始まって以来の医学的災害が起こっています。 日本がアメリカやイタリアのような悲劇的な状態にならないように全国民が力を合わせて、このウイルスの鎮圧に成功させなければなりません。

 新型コロナウイルス感染症の特徴は、感染したときに深刻な症状が出ないまま治ってしまう場合と、一気に呼吸器症状が重症化して死亡に至る場合に分かれることです。この重症化因子の解析が今進んでいます。

 これまで報道されているように、わが国では厚労省の新型コロナウイルス感染症診療の手引きでも示されているように、高齢に加えて、喫煙、糖尿病、高血圧、慢性呼吸器疾患などが重症化因子であることが知られています。 しかし最近欧米の最新の分析で肥満が重症化の大きな要因になっているという研究が次々に発表されています。フランスのパスツール研究室、英国ロンドン大学、米国マウントサイナイ病院などの感染専門医、救急医の分析によると、新型コロナイルス感染症患者の中で、重症化して人工呼吸器が必要になる率は肥満者で著しく高くなることが明らかになっています。 また人口呼吸器から離脱できた率も肥満者では、明らかに少ないことも明らかになっています。

 さらにこの疾患で重症になる率は男性が女性に比べて遥かに高く、同じ肥満を伴う場合でも、男性の肥満が高頻度で重症になることがフランス、アメリカの研究でも示されています。肥満が重症化の要因になる理由や、男性が女性よりハイリスクであり理由はまだわからないとされていますが、肥満によって発症する高血圧、糖尿病などが影響する可能性や、肥満による免疫機能の低下などが推察されています。しかし、同じ肥満でも男性のリスクが極めて高いことを考えると、 私たちは男性の肥満の特徴である内臓脂肪の関与を考えたいと思います。

 日本肥満症予防協会では、体重やBMIで判断される肥満ではなく、腹腔内の内臓脂肪が過剰蓄積した場合を肥満症としてその予防に重点を置いてきました。 腹腔内の内臓脂肪の過剰蓄積は横隔膜の動きを障害して、肥満低換気症候群や睡眠時無呼吸症候群に関与することが分かっており、新型コロナウイルス感染症の呼吸器症状を悪化させることが考えられます。それに加えて蓄積した内臓脂肪から炎症性のサイトカインの過剰分泌が、コロナウイルスで生じている肺炎症状の悪化を促進することも考えられるのです。

 現時点では、この新型コロナウイルスに感染しないための対策が最も大切ですが、感染しても軽症で回復するために日ごろから肥満症の予防、つまり内臓脂肪蓄積を防ぐ生活習慣を続けることをお願いします。

(2020年04月)