肥満を改善する食事の4つのポイント タンパク質と食物繊維をしっかりとることが大切

 肥満やメタボなどのある人が、食事改善を成功させる秘訣は、▼カロリーを適正に制限する、▼体に悪い脂肪をとりすぎないようにする、▼タンパク質を十分にとる、▼食物繊維を十分にとるという4点だと、米イリノイ大学が発表した。

 「食事改善に取り組む人が、減量に成功して、健康的な体重を維持するために必要なのは、1人ひとりに合わせた柔軟性のある食事改善プログラムです」と、研究者は述べている。

 GLP-1受容体作動薬を肥満症の治療に利用できるようになり、人気が高まっているが、投与を中止すると、減らした体重の多くがリバウンドすることも報告されている。

 「体重を減らし、健康的な体重を維持するために、薬による治療をしている人も、食事による管理を続けることは必ず必要です」としている。

1人ひとりに合わせた柔軟性のある食事改善が必要

 米イリノイ大学が、2型糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満・脂肪性肝疾患などのある人のため開発した食事支援プログラム「iDip」の特徴となるのは、▼摂取カロリーを適正に制限する、▼体に悪い脂肪をとりすぎないようにする、▼タンパク質を十分にとる、▼食物繊維を十分にとるという4点。

 さらには、参加者が長期にわたって健康的な食事を続けられるように、個人に合わせてカスタマイズされた、柔軟性のある食事プログラムが必要としている。

 研究グループは、食事支援プログラムの参加者に対して、1人ひとりに合わせた安全で効果的な減量プランを作成し、集中的な食事支援を提供し、栄養バランスなどについての知識を高めてもらい、食事改善の成果を可視化するツールも提供した。

 その結果、25ヵ月間のプログラムに参加した参加者は、体重を平均して6.5kg減らした。

 ただし、41%がダイエットに成功し、1年後に体重を平均して12.9%を減らした一方で、残りの人は体重の2%強しか減らなかった。

カロリー制限しながらタンパク質と食物繊維は十分にとる

 「減量にもっとも成功した参加者に共通する点として、食事のカロリーを制限しながら、タンパク質と食物繊維を十分に摂取していたことが挙げられます」と、同大学栄養学部のマナブ ナカムラ教授は言う。

 「健康的な体重を維持し、持続するために必要な健康的な食事スタイルは、1人ひとり異なります。参加者に食事や運動などについて、適正な知識とスキルをもってもらうことも重要です」。

 「食事改善に取り組む人が、減量に成功して、健康的な体重を維持するために必要なのは、個別化に着目した柔軟性のある食事プログラムです」としている。

体重を減らしても筋肉は減らさないことが大切

 プログラムに参加し終了した30~64歳の参加者22人は、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、肥満、脂肪性肝疾患、睡眠時無呼吸症候群、メンタルヘルス不調など、さまざまな疾患を抱えていた。これまで減量に2回以上取り組み、いずれも成功しなかった。

 今回の食事支援プログラムに参加し、平均して6ヵ月間で脂肪量を7.1kg減らしたが、除脂肪体重を維持しており、筋肉量は減らなかった。

 体重を5%以上減らした人では、減った体重の78%は体脂肪の減少によるものだった。ウエスト周囲径も6ヵ月後に7cm、15ヵ月後には9cm減らした。

カロリー制限しながらタンパク質は十分にとる

 研究グループが、食事改善に取り組んだ人のタンパク質と食物繊維の摂取量を追跡して調査した結果、体重減少とのあいだに強い相関関係があることが分かった。

 タンパク質と食物繊維をしっかりとれていた参加者は、プログラムの開始後の3ヵ月は、健康的な食事を維持できており、その後も体重を減らし続けたのに対し、早い段階で食事で苦労していた参加者は、その後の数ヵ月も減量は上手くいかなかった。

 「カロリーを適正に制限しながら、脂肪を減らし、タンパク質と食物繊維は十分にとるという食事スタイルは、シンプルで取り組みやすく、長期間続けやすいと考えられます」と、ナカムラ教授は指摘する。

 また、「減量中にタンパク質の摂取量が足りていないと、筋肉や骨の減少という深刻な状態を引き起こすので、食事ではタンパク質を十分にとることが大切です」としている。

GLP-1受容体作動薬を使った肥満症の治療には注意が必要

 このプロジェクトは、米国農務省の国立食品農業研究所と国立衛生研究所の支援を得て行われたもの。

 「GLP-1受容体作動薬が肥満症の治療のために承認され、この薬を使った肥満症の治療の人気が高まっています」と、ナカムラ教授は言う。

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として開発された注射薬で、主に膵臓に作用してインスリンの分泌を促す作用がある。

 GLP-1は、インクレチンというホルモンのひとつで、食事摂取などが刺激となり、消化管から分泌される。GLP-1は、膵臓からのインスリン分泌を促すのに加えて、グルカゴンというホルモンも抑え、血糖値を上がりにくくする。

 さらには、胃や消化管の動きを遅くしゆっくりと消化させ、脳にも働きかけ食欲を抑える作用もある。

 「GLP-1受容体作動薬は、過剰な体重を減らす大きな効果があることが実証されているものの、投与を中止すると、減らした体重の多くがリバウンドすることも報告されています」と、ナカムラ教授は指摘する。

 「体重を減らし、健康的な体重を維持するために、薬による治療をしている人も、食事による管理を続けることは必ず必要です」としている。

Weight-loss success depends on eating more protein, fiber while limiting calories, study says (イリノイ大学アーバナ シャンペーン校 2024年8月19日)
Successful dietary changes correlate with weight-loss outcomes in a new dietary weight-loss program (Obesity Science & Practice 2024年5月27日)