若い頃に肥満だった女性は心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇 野菜を食べるとリスクは減少

 肥満のある50歳未満の人が、肥満を解消しないで10年間生活していると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなることが、大規模な調査で明らかになった。

 若い頃に過体重や肥満だった女性は、55歳までに脳卒中のリスクが高くなるという調査結果も発表された。

 肥満や過体重を改善するために、野菜を食べることが重要であることが、日本人を対象とした大規模な調査で明らかになっている。

 野菜をよく食べている女性は、心血管疾患のリスクが減少した。

若いうちから肥満や過体重に対策することが必要

 肥満のある50歳未満の人が、肥満を解消しないで10年間生活していると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなることが、大規模な調査で明らかになった。詳細は、6月に開催された米国内分泌学会学術集会(ENDO 2024)で発表された。

 「すべての年齢の人は、過体重や肥満があると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇することが知られています」と、ブリガム アンド ウィメンズ病院およびハーバード大学で内分泌代謝や糖尿病の研究をしているアレクサンダー ターチンは言う。

 「今回の研究で、とくに肥満のある65歳未満の男性と50歳未満の女性では、10年間に心筋梗塞や脳卒中のリスクが25~60%上昇することが示されました」。

 「肥満や過体重に、若いうちから対策する必要があります。早ければ早いほど健康改善の効果を期待できます」としている。

 研究グループは、看護師健康調査(NHS)と医療従事者追跡調査(HPFS)のデータを使用し、包括的な解析を行った。

 10年間(1990~1999年)にBMI(体格指数)が25以上であることが1回以上確認された男性 2万7,239人、女性 10万9,259人を対象に、2020年まで約20年間追跡して調査した。対象者の調査開始時の平均年齢は48.6歳、BMIの平均は27.2だった。

 このうち、6,862人が動脈硬化性の心血管疾患を、3,587人が2型糖尿病を発症し、1万2,048件の心血管イベントが発生したことが明らかになった。

若い頃に肥満だった女性は年齢を重ねると脳卒中のリスクが上昇

 肥満や過体重のもたらす健康への影響は、とくに男性で深刻で、女性では男性に比べて影響が少ないと思われがちだが、10代や若い頃に過体重や肥満だった女性は、やはり55歳までに脳卒中のリスクが高くなるという、気になる別の調査結果を米国心臓学会(AHA)が発表した。

 AHAによると、虚血性脳卒中はもっとも多くみられるタイプの脳卒中で、脳に血液を供給する血管が閉塞して、脳に十分な血液と酸素が供給されなくなることで起こる。

 フィンランドで実施された研究で、14歳の時点で太りすぎだった女性は、31歳までに体重を減らしても、年齢を重ねると血栓性の脳卒中のリスクが高くなることが示された。男性ではこうした傾向はみられなかった。

 14歳の時点で肥満だった女性は、血栓性の脳卒中あるいは軽度の脳卒中を発症する可能性が87%高く、31歳の時点で肥満だった女性は、脳卒中を発症する可能性が167%高いことが分かった。

 研究グループは、大規模調査である北フィンランド出生コホートに参加した1万491人を対象に調査した。うち5,185人が女性だった。調査は1966年に開始され、対象者は現在は50代になっている。

 参加者の20人に1人が血栓による脳卒中、あるいは一過性脳虚血発作(TIA、ミニ脳卒中とも呼ばれる)を発症した。

 「過体重や肥満は、たとえ一時的なものであったとしても、長期的に健康に大きな影響を与える可能性があります」と、オウル大学人口健康研究ユニットのウルスラ ミッコラ氏は言う。

 「過体重や肥満のある人に保健指導を実施して、食事や運動などの健康的な生活スタイルを身につけてもらう必要があります」。

 「とくに若い人は、肥満に対して偏見をもちやすい傾向がみられます。誤解や偏見を抱くことなく、生活改善に取り組んでもらうのが大切です」と、ミッコラ氏は付け加えている。

肥満や過体重を改善するために何が必要?

野菜をよく食べている女性は心血管疾患のリスクが減少

 それでは、肥満や過体重を改善するために、何が必要となるのだろう? 野菜をよく食べている人は、体重が減りやすいことが、日本人を対象とした調査で明らかになっている。

 とくにホウレンソウ・小松菜・ニンジン・トマトなどの緑黄色野菜や、タマネギなどのネギ類野菜は、効果が高かった。

 野菜・果物には食物繊維・カロテノイド・ポリフェノールなどが豊富に含まれる。野菜を多く食べることで、空腹感の減少、エネルギー摂取量の減少、脂質やエネルギー代謝の調整などにつながり、体重を管理しやすくなると考えられている。

 さらに、野菜をよく食べている人は、全死亡のリスクが低く、とくに女性では、心筋梗塞などの心血管疾患による死亡のリスクが大幅に減少することも示された。

 これは、国立がん研究センターなどの研究グループが、40~69歳の成人男女9万4,658人を、約20年間追跡して調査し明らかにしたもの。

 女性では、果物をよく食べているグループでは、あまり食べていないグループに比べ、心血管疾患による死亡のリスクが10%減少し、心血管疾患による死亡のリスクは13%減少した。

 「日本の食事バランスガイドでは、1日に350g以上の野菜と200g程度の果物を、それぞれ摂取することが推奨されています。健康日本21(第2次)でも、1日に350g以上の野菜摂取が目標とされています。今回の研究では、野菜は1日に300g以上、果物は140g以上摂取することが望ましいことが示されました」と、研究者は述べている。

果物をよく食べている女性は死亡リスクが減少
女性の野菜摂取と全死亡・原因別死亡の関連

出典:国立がん研究センター、2024年

Risk for heart attack and stroke increases in people with obesity for a decade or more (米国内分泌学会 2024年6月1日)
Women with excess weight as a teen or young adult may have higher stroke risk by age 55 (米国心臓学会 2024年6月6日)
Overweight in Adolescence and Young Adulthood in Association With Adult Cerebrovascular Disease: The NFBC1966 Study (Stroke 2024年6月6日)
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
Associations Between Changes in Fruit and Vegetable Consumption and Weight Change in Japanese Adults(European Journal of Nutrition 2020年4月6日)