【フレイル予防】肥満とフレイルのある高齢者は死亡リスクが高い やせすぎの人にもリスクが

 「フレイル」とは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それにより健康障害を起こしやすくなっている状態。

 高齢者はフレイルがなく、BMI(体格指数)が23~24の普通体重だと、死亡リスクはもっとも低くなることが、65歳以上の日本人高齢者1.9万人を調査した研究で明らかになった。

 フレイルになると、心身の機能や活力が低下し、転びやすい状態になる。3つの質問に対する回答により、1年以内の骨折のリスクが分かることも分かった。

食事でタンパク質を十分にとりフレイルを予防

 「フレイル」とは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それにより健康障害を起こしやすくなっている状態。

 運動機能や認知機能が衰えたまま年齢を重ねると、ストレスに対する回復力が低下し、高齢になって介護の必要な状態におちいるリスクが高まる。心身が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになる人も少なくない。

 フレイルを進行させないために、栄養状態に気をつけることが重要となる。食事でタンパク質を十分にとり、運動をすると、フレイルの進行をとめられ、健康な状態を取り戻せることが分かっている。

 タンパク質は、人間が生きていくうえで必要な栄養素で、筋肉や内臓など、体のあらゆる組織が、タンパク質でできており、また人間が活動するためのエネルギー源にもなっている。

 タンパク質を多く含む食品は、肉・魚介類・大豆・大豆製品・卵・乳製品など。日本の食事ガイドラインでも、食事でとるエネルギーの20%以下を、タンパク質からとることが推奨されている。

肥満とフレイルの両方のある高齢者は死亡リスクが高い

 高齢者はフレイルがなく、BMI(体格指数)が23~24の普通体重だと、死亡リスクはもっとも低くなることが、65歳以上の日本人高齢者1万912人を調査した研究で明らかになった。

 さらに、BMIが18.5未満の低体重(やせ)の高齢者は、普通体重の高齢者に比べて、フレイルがある場合とない場合のいずれもリスクは高いことも分かった。

 高齢者のフレイルの有無により、死亡リスクがもっとも低くなる最適なBMIは異なることが示された。

 研究は、早稲田大学スポーツ科学学術院、医薬基盤・健康・栄養研究所、びわこ成蹊スポーツ大学、京都先端科学大学などによるもの。研究成果は、「Clinical Nutrition」にオンライン掲載された。

 研究グループは、2011年から京都府亀岡市で行われている前向きコホート研究「京都亀岡スタディ」に参加した65歳以上の1万912人のデータを解析。

 その結果、普通体重(BMI 21.5~24.9)でフレイルのない高齢者に比べて、肥満とフレイルの両方のある高齢者は死亡率が高いことなどが分かった。

 これは、フレイルのある高齢者では、フレイル度を改善することを優先する必要があることを示している。

太りすぎとやせすぎの両方が長生きの妨げに

 「この研究で、健康的な普通体重の人よりもBMIが高い肥満者で死亡リスクが低いという"肥満のパラドックス"の要因のひとつとして、フレイルがある可能性を示しました」と、研究者は述べている。

 「日本人の食事摂取基準2020年版から、フレイルの発症および重症化予防の観点が考慮されており、フレイルの有無によって目標とするBMIが異なることを示した今回のデータは、よりきめ細かい食事・栄養指導や健康政策の立案に役立つエビデンスになります」。

 「フレイルがあるか否かに関わらず、すべての高齢者にとって、"やせすぎは長生きの妨げ"となることが分かりました。一方で、"太っている方が長生き"と判断することも危険です。日々元気に体を動かし、バランスの良い食事をしっかりとり、やせすぎず太りすぎない体型を維持することをお勧めします」としている。

フレイルによる転倒や骨折のリスクが3つの質問で分かる

 フレイルになると、心身の機能や活力が低下し、転びやすい状態になる。とくに高齢者は、つまずいたり、足をすべらせたときに、とっさの対応ができずに倒れ、大腿骨を骨折する場合が多い。骨折のなかでも、大腿骨の骨折は、寝たきりや要介護の原因になる。

 3つの質問に対する回答が、1年以内の骨折のリスクと関連していることが、東京大学の研究で明らかになった。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」に発表された。

 その3つの質問は次の通り。
▼ 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
▼ この1年間に転んだことがありますか?
▼ ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?

 3つの質問に対して「はい」と回答した数が多いほど、骨折の発生率が高いことが分かった。該当なしの場合の骨折発生率が3.9%であるのに対して、1項目該当では7.1%、2項目該当では10.2%、3項目該当では17.4%だった。

 研究グループは、フレイル健診を受け、データ欠落のない1万1,683人を対象に解析した。うち7.9%(927人)が新たに骨折を経験した。

 日本では、75歳以上の後期高齢者を対象に、フレイルの予防・重症化予防に着目した健診、いわゆる「フレイル健診」が、2020年に開始された。

 フレイルの状態になっているかチェックするため、15項目の質問で構成される「後期高齢者の質問票」が導入されている。

 「3つの質問はより簡便であり、新規の骨折の発生を予測するためのスクリーニング ツールになる可能性があります」と、研究者は述べている。

早稲田大学スポーツ科学学術院
医薬基盤・健康・栄養研究所
Frailty modifies the association of body mass index with mortality among older adults: Kyoto-Kameoka study (Clinical Nutrition 2024年2月) たんぱく質含有食品の提供および運動の複合的介入によるフレイル予防効果-介護保険サービス利用者を対象として- (日本健康医学会雑誌 2022年10月17日)
Association between subjective physical function and occurrence of new fractures in older adults: A retrospective cohort study (Geriatrics & Gerontology International 2024年2月17日)