「歯周病」が肥満・メタボ・糖尿病を悪化 「うがい薬」で口のなかの悪玉菌を減らせる

 歯周病はメタボ・肥満や2型糖尿病などの、さまざまな全身疾患を悪化させる原因になる。歯周病を適切に治療しないでいると、代謝異常が引き起こされ、サルコペニアにつながる可能性もある。

 殺菌・消毒効果のあるうがい薬でうがいをする習慣があると、口のなかの悪玉菌が減り、血糖管理を改善でき、糖尿病のリスクが低下する可能性があることが明らかになっている。

 とくに殺菌消毒剤を含むうがい薬を利用すると、歯周病の原因菌が増えるのを防ぐ効果を期待できるという。この成分を含むうがい薬や洗口液は、薬局などで購入できる。

「歯周病」は肥満・メタボ・サルコペニアを悪化させる

 歯周病はメタボ・肥満や2型糖尿病などの、さまざまな全身疾患を悪化させる原因になることが、東京医科歯科大学などの研究で明らかになっている。

 研究グループは、歯周病菌に感染すると、腸内フローラ(腸内細菌叢)の健康に悪影響があらわれ、全身性のインスリン抵抗性と骨格筋の代謝障害が引き起こされることを明らかにした。

 歯周病は、プラーク(歯垢)にひそむ歯周病菌が、歯茎や歯を支える骨に炎症をおこす病気。炎症が進行すると、歯を支えている歯槽骨や歯根膜などが壊され、さらに重症化すると、歯が抜け落ちてしまう。歯周病は歯を失う原因の第1位になっている。

 口のなかのケアが不十分な場合や、糖分をとりすぎたときに、プラークは増えていく。プラークによって歯茎に炎症が起こり、腫れた状態になると、歯肉炎になる。

歯周病があると血糖値を下げるインスリンの作用が悪くなる

 歯周病がメタボ・肥満や糖尿病などの病態を悪化させる機序のひとつとして、「インスリン抵抗性」を引き起こすことが挙げられる。

 肥満や2型糖尿病の人の多くで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効果的に作用しなくなるインスリン抵抗性がみられる。インスリンは、血液中の糖を細胞が取り込むときに使われ、細胞内に取り込まれた糖はエネルギー源となるが、インスリン抵抗性のためにこの流れが滞ると高血糖になりやすくなる。

 また骨格筋は、骨格を動かす筋肉で、一般に筋肉と呼ばれているものはこれを指す。体重の約40%を占めており、運動や姿勢保持だけでなく、全身の糖代謝調節でも重要な役割をになっている。

 歯周病を適切に治療しないでいると、骨格筋の代謝異常が引き起こされ、メタボの危険因子になる可能性や、サルコペニアへとつながる可能性があるという。サルコペニアは、骨格筋量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態で、動作の俊敏性が失われ転倒しやすくなるなど、要介護の原因になる。

 「研究により、歯周病のさらなる危険性が注意喚起され、健康寿命の延伸へとつながることが期待されます」と、研究グループでは述べている。

1日2回のうがいが肥満や糖尿病のリスクを低下 口のなかの悪玉菌を減らせる

 殺菌・消毒効果のあるうがい薬でうがいをする習慣があると、口のなかの悪玉菌が減り、血糖管理を改善でき、糖尿病のリスクが低下する可能性があることが、大阪大学の別の研究で明らかになっている。

 歯周病は、歯にまつわる病気だけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼす。歯周病によって生じる炎症物質は、血糖値も高くしてしまうため、糖尿病のある人は血糖の管理が難しくなる。また、この炎症物質は脂肪をためこみやすい体内環境にするため、肥満にもなりやすいとされている。

 研究グループは、38歳~84歳の173人の糖尿病患者を対象に、1年間にわたり毎月または隔月で唾液と血液のサンプルを採取し、口腔内の細菌種について調べ、1~2ヵ月の血糖値の平均があらわされるHbA1cなどとの関連を調査した。

 その結果、殺菌・消毒効果のあるうがい薬で、1日に2回以上のうがいを6ヵ月間続けると、とくに比較的若い人では、口のなかの悪玉菌が減り、血糖管理も改善することが示された。

 ただし、水道水でうがいをした6ヵ月間の期間は、悪玉菌や血糖管理に影響はあらわれなかった。

殺菌効果のあるうがい薬は歯周病菌が増えるのを防ぐ

 とくにグルコン酸クロルヘキシジンを含むうがい薬は殺菌力があり、歯周病の原因菌が増えるのを防ぐ効果を期待できるという。この成分を含むうがい薬や洗口液は、薬局などで購入できる。

 口のなかの健康状態が良くないと、2型糖尿病やアルツハイマー病などの深刻な病気のリスクが上昇することは、これまでも報告されている。

 「クロルヘキシジン配合のマウスウォッシュを用いたうがいは、家庭で行うことのできる口腔ケアのなかでも簡便であり、日々の習慣にとりいれやすいものです」と、研究者は述べている。

 「ご自分の糖尿病が気になる人は、歯科医院でのプロフェッショナルケアに加えて、クロルヘキシジン配合のマウスウォッシュを用いたうがいを積極的に日常の口腔ケアへ取り入れることで、歯周病の改善だけでなく、歯周病によって引き起こされる血糖値の上昇の改善にもつながることが期待されます」としている。

How poor oral hygiene may result in metabolic syndrome (東京医科歯科大学 2020年12月8日)
Porphyromonas gingivalis impairs glucose uptake in skeletal muscle associated with altering gut microbiota (THE FASEB Journal 2020年11月16日)
Gargling away the bad bacteria in type 2 diabetes (大阪大学 2024年2月14日)
Effects of mouthwash on periodontal pathogens and glycemic control in patients with type 2 diabetes mellitus (Scientific Reports 2024年2月2日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]